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目的は1面記事の読み比べではなく「新聞案内人」というコラムを読むこと。16人の著名な案内人が新聞の論調を題材に時世を論じたり、新聞への注文を寄せたりと、案内人の視点(特に林香里の目の付けどころは素晴らしい)は業界人ではなくとも“なるほど”と新聞(メディア)のあり様を考えさせてくれます。メディアリテラシーを高めることにも役立つのではないかと思っています。
けさはコラムニストの歌田明弘さんが、「君たちのためじゃないよ」〜ウェブ歴15年の創作活動を書かれていました。
内容は昨年12月18日付の朝日新聞に掲載された坂本龍一さんのインタビュー記事を題材にしたもので、ネット社会の浸透によって媒体・流通の変化が求められた音楽業界(新聞にも当てはまるところも多い)の経済的価値と社会的価値、その明暗を指摘する構成となっています。紙面のすべてがネット上に流されているわけではないので、このようなコラムで興味ある記事を紹介していただくとありがたいものです(新聞もロングテール型になりうるコンテンツも多いものです)。
坂本さんは「レコードからCD、ネット配信へと媒体が進化し、複製と流通コストが下がったことで、1曲あたりの販売単価は下がった。簡単にコピーやダウンロードをできるようになり、違法な複製も日常化した。音楽の経済的な価値は限りなくゼロに近づいてしまった。これは予想していなかった」と音楽に対するネットの影響を説いていますが、それは「経済的価値」が低下しただけで「社会的価値」はそう大きく変わっていないことを指摘。さらに坂本さんは、以前は多額の投資ができる企業や人しか音楽の複製や頒布ができなかったことが、ネットは一種の民主化を起こしたわけであって、「それはよいことだと思っています」と言い切ります。
また、自身のブログについては 「ネットでは圧倒的多数に視聴され話題にされないといけない。ブログでいえば、とにかく受けないといけない。やがてアクセス数をかせぐことが目的になってしまう。でもぼくはブログを書いているうち『君たちのためにやっているわけじゃないよ』という気持ちになり、ブログを閉じちゃった」そうです。
歌田さんは「数」が目的化している状況にうんざりし、自分が求めているのは数ではないことに坂本さんは気がついた―と読み解きます。
「信頼」を武器に社会的価値を提供する新聞は、ネット社会の到来で経済的価値においては厳しくなっているものの、「数」を稼ぐために“何でもあり”になってしまってはそもそもの価値を手放すことになりかねません。
これまで販売現場で行われてきた「数」(部数)の競争原理が効果的だった時代を経て、今その明暗を考えるとオマケで新聞を売りつける悪徳拡張に嫌気がさして「読者離れ」につながった。新聞の活用術などを読者に提供してこなかったツケが回っていると思っています。
私がブログを続けている理由の一つは、新聞人へこれまでの教訓を生かしてもらいたいからなのですが…
>数(だけ)を追わず、価値を創造しなければ、新聞は滅びる。
ホントその通りだと思います。「無料でも要らない」と言われる方がどの程度いらっしゃるのか理解していませんが、新聞に価値を見いだせない(対価を払おうと思わない)方が増えていることも現場で読者の方と触れ合っていると、最近は強く感じます。
新聞は「オマケ」を付けていれば部数は維持できるという新聞社(すべてとは言いませんがほとんどそうです)の販売政策そのものが崩壊してきたのであって、いわば新聞(記事コンテンツをパッケージにまとめる)という商品そのものよりも、新聞という商品の流通過程を手術することが先決だと思っています。