情報革命バブルの崩壊
著者 山本一郎(文春新書)720円
年末から正月にかけてまとめ読みをした書籍の紹介が滞っているので、簡略ながらアップしておきます。
おととしの週刊ダイヤモンドが組んだ特集「新聞没落」や元毎日新聞の河内孝氏の「新聞社 破綻したビジネスモデル」以降、雑誌やネット界隈ではマスコミ批判(苦言として)はひとつの大ブームでした。元新聞社員とかネットジャーナリストという冠をひっさげて、新聞のジャーナリズム性やビジネスモデルに関する批評をされる方の多くが、ネット社会の浸透によって厳し状況(日本の新聞社も結構キツイですが)にさらされている米国の新聞社を例になぞる視座も結構多かったように思いましたが…
そんななか、昨年11月に発刊されたこの書籍は、ネットの「無料文化」を支えてきた“ネットは儲かる”といった神話や期待は泡のように崩れ去ったと主張し、ネット広告の媒体価値とは所詮バブルに過ぎないと切り込んでいます。なかでも第1章の「本当に、新聞はネットに読者を奪われたのか?」では、新聞は読まれなくとも新聞記事は(ネットで)読まれているという分析に加えて
、読者の顔を知らない新聞社のマーケティング不足を指摘。さらに「新聞の強さ」をどう発揮しているべきかなど持論を展開されています。この章の最後には「無料モデルは終わる」と締めくくり、情報通信産業もバブルだったと結論づけています。新聞業界もだいぶ踊らされたのかもしれません。
「新聞関係者は構造不況業種であることを認めたがらない」という著者。確かに構造的な問題を抱えながら、販売、広告の二大収入の減少傾向を前にたじろいでいる(全体として)ように見えなくもありません。ですが、構造不況と簡単に片付けるのではなく、時代の変化に対応できなかった新聞人自身の人災であるようにも思えてなりません。
産業を支えるための商行為は必然ですが、儲け話だけで新聞人はなびいちゃいけないのだと思います。