新聞と戦争
著者 朝日新聞「新聞と戦争」取材班(朝日新聞出版)2,300円
きっかけは、一通の投書だった―との書き出しではじまるこの本をやっと読み終えた。
朝日新聞夕刊(週5回)に2007年4月から1年間連載された「新聞と戦争」をまとめたもの。新聞に連載されていただけあって、1話ごとの文章量が程好くよく読みやすい。
24章からなる分厚いページは、「なぜ新聞は戦争を止められず、逆に戦争協力の深みにはまっていったのか。過去の負の歴史に真っ正面から向き合いきちんと検証してほしい」との命を受けた朝日新聞社の記者(プロジェクトB)18名が執筆。
13章には「販売の前線」として、関東大震災から終戦直後の販売事情が報告されている。当時、新潟県長岡地区にあった「速報社」という販売店の話では、「新聞どころか紙そのもの足りず、2部、3部と買い求めようとする人に“新聞はちり紙ではない”と1部しか売らなかった」という話が紹介されている。今を考えると販売従業員の心意気というかプライドもずいぶんと変わったものだ。私はこれまで「新聞少年」は各戸配達にかかる経費を安価に抑えるために活用されたと思っていたが、大人が戦地へ召集されて頼る労働力は少年しかいなかったという事実も理解できた。
敗戦後も新聞は販売店従業員の手によって休むことなく配り続けられた。
一通の投書は「私は小さな頃、祖父が口癖のように言っていたのを思い出します。朝日の論調が変わったら気をつけろ、と」という内容で、この投書が新聞社が触れたがらない「戦争」というテーマに1年にも渡る長期連載に結び付いたのだろう。
8月15日を前にじっくり読んでいただきたい本だ。
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