赤めだか
著者 立川談春(扶桑社)1,400円
私は通勤時にipodで音楽ではなく「落語」を聴いている。
もともと立川談志の現代落語が好きでCDを購入していたが、最近ハマっているのが談志の弟子 立川談春。
彼の半生を綴った自伝がこの「赤めだか」。赤めだかとは談志の自宅で飼っている金魚のことだが、いくら餌をやっても大きくならない金魚に自分をダブらせて「しょせんメダカのように大きくなれない」という挫折感を引用したもの。
談春が談志に弟子入りしたのは17歳。高校を中退し、親からも半ば勘当状態で談志の前座となるが、彼の生活を支えたのは新聞配達だった。住み込みで毎朝夕186部の配達をこなす。朝は3時に起床し折込チラシの組み込みと配達を終えて販売所へ戻るのが8時。販売店が用意してくれる朝食をとって2時間の仮眠。そして談志の家に12時には入る。午後3時まで雑務をこなしそれから夕刊配達。夕食をがっついてまた談志の家に戻る。「今日はもういい」といわれるのが夜中の12時か1時で、それから寮に戻って2時間寝るという生活が続く。談春は1カ月で8キロやせたと語っている。
朝日、日経、日刊スポ、デイリースポーツ、日刊工業新聞と東京タイムスなど数種類の新聞を配っていたが、慣れてきた頃は適当に新聞を配るようになったと振り返る談春。ここでの落ちは、デイリーの読者に株式新聞を届けてしまった逸話で「昨日は久しぶりに阪神が勝ったんだぞ。掛布のホームランで逆転勝ちしたんでスポーツ紙を楽しみにしてたのに、何で日刊株式新聞なんてのが入ってんだ」とお客さん。それに対し談春は「お客さん、これから阪神は上昇一途です。優勝しますと株の方もぐんと上がります。買うなら今、と配達員が気を遣わせたものと」と返す。当然「バカヤロー。すぐにデイリー持ってこい」となる。「僕が配達するようになってから、3カ月で186部から140少々に部数が減った」とは笑えない話だが…
著者は私と同世代。この本を読み終えて立川談春がまた好きになった。