2008年07月24日

秋田魁、夕刊を廃止の記事

 今週は都内への出張もあり更新が遅れてしまいましたが、秋田魁新報社が10月から夕刊を廃止し「廃止分を値下げか」という記事を、文化通信(7月21日付)が報じました。

文化通信 7.21付.jpg

 この7月から山形新聞が購読料を改定(3,007円から3,300円へ)しましたが、隣県の秋田魁新報が夕刊を廃止して「値下げ」に動き出すという両極端のビジネスモデルに対して、多くの新聞経営者は注目していることでしょう。

 もともと秋田魁新報は1996年4月から毎週土曜日の夕刊を休刊(もちろん日、祝日も休刊)したものの、3,007円の購読料は据え置いてきた経緯があります。その当時は同年に「さきがけスポーツ」(サンケイスポーツと提携、2003年10月末で休刊)を創刊し、各セクション(人員)のスクラップアンドビルドによって土曜夕刊の休刊も取り組まれたと聞いています。読者には「販売店の労務改善のため」と説明されたようですが…。

 とはいえ、販売、広告の料収入が伸び悩み、原油高騰を背景に用紙代、輸送代などの経費負担が増えるなか、「夕刊をやめて値下げ」の決断は相当なものだったに違いありません。
 文化通信の取材に対して同社の佐藤暢男社長がコメントを出しています。(以下引用)

現在、ブロックごとの販売店に説明し、相互信頼を損なわないよう理解を求めている。秋田県は高齢者世帯が多いだけに、灯油の値上げには困っている県民が多く、テレビは必要だが新聞代は灯油代に充てたいという声を聞く。向寒の備えは深刻だ。当社は完全セット販売だから朝刊だけというわけにはいかなかったが、県紙としての責任新聞として、多くの県民に読んでもらわなければ困る。夕刊廃止は苦渋の選択だ。夕刊専門の配達従業員がいるので、彼らの就職口の心配もある。そのため販売店との話し合いも時間がかかっているが、今月中にはなんとか理解してもらうつもりだ。

 販売店との調整(相互信頼)が済んでいない段階のようですが、このように報じられてしまえば周りが必要以上に反応するのは必至。販売店への説明は混乱するかもしれませんが、“ここだけの話”は意外と筒抜けになっているものです。

 夕刊を廃止すると編集、制作部門は夜勤のみのローテーションとなり現状と同人数というわけにはいかないでしょう。さらに販売店は配達スタッフの約半数の仕事がなくなることになります。販売店を活用した流通ビジネスを考えると夕刊ではなく、朝刊を廃止して夕刊紙にすることは考えなかったのかなぁ。深夜労働もなくなるし…。新聞が読まれる時間は「帰宅後」という方が増えていることを考えると、速報性よりも解説重視の紙面に転換して夕方まで配るというシステムも検討の余地があると思うのですが…

 これまで全国紙の動向に習って護送船団方式をとってきた新聞産業界。“我慢比べ”はすでに限界値を超え、独自の経営判断をせざるを得ない状況になってきたことの現れですが、本来これがあたり前の姿なのだと思います。
 価格設定に見合う商品(サービス)であれば読者は納得するはずです。これまで必要なかった経営者の能力、判断が問われてくる時代へいよいよ突入してきたわけです。

posted by 今だけ委員長 at 23:14 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時事ニュース
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