
ジャーナリズム入門
著者 日本ジャーナリスト連盟(銀杏書房)160円
1948年発行。当時のジャーナリスト連盟に加入する12名の著書をまとめた構成になっている。
序章のジャーナリズムへの志向について、美作太郎氏(日本評論者編集局長)が寄稿し「ジャーナリズムに心を寄せる人々が、言論出版の自由という合言葉に共鳴し、民主主義の原則をこの世界で生かそうとすることは当然なことです。しかし、この場合の「自由」と「民主主義」とが、すべての当事者に勝手に無拘束にしゃべらせることを意味するのだとしたら、それは危険な形式的な理解というものでしょう。現に巣鴨にいる戦犯者たちは言論出版の自由を有つていませんが、これは日本の民主主義の現実の建て前から見て当然なことなのです」と延べ、「公正な中立という美しい口実に酔いながら自ら民主主義者を気取ることが出来ます」と提起し、「歴史と社会とに闘する、しっかりとした世界観の體得が、新しいジャーナリストのための不可欠な条件である」とまとめている。
新聞編、出版・放送・ニュース映画編、各国の新聞編、労働組合の章にまとめられ、若き輩に先輩としての助言が詳しく綴られている。
新聞をつくる目的では、「今日のわが国の時代に新聞が広く社会現象を断片的に報道するということは全然意味がない。第一に社会現象を細大もさらず新聞に載せうるものでないからそこには自ら取捨選択がある。今日何をして何を探るかが問題である一般的にいえば国民を民主的に啓蒙し国民生活を民主的再建の方向に導き国民大衆を一日も早く民主革命感性の方向に紙面は整理されねばならぬ(中略)深刻な問題は今日の国民の死活を制する問題であるのに興味本位の生活と離れたニュースの方に果たして国民は興味を感ずるであろうか。もし興味本位のニュースしか読者の関心がないとしたらそれは新聞が国民にとって切実な問題を提供していないからではなかろうか。ここに大衆の関心に追従し読者の眼を掩う新聞と大衆の関心を高め自らの生活と国の運命の打開とのために国民大衆の感情を沸き立たせその眼を開かしめる新聞の違いがある。今日の日本が未曾有の危機に立っているとしたらこういう立場の新聞もよろしいああいう立場の新聞もあってもいいという悠長なことは断じて許されない」と続く。