グーグルに勝つ広告モデル―マスメディアは必要か―
著者 岡本一郎(光文社新書)720円
マスメディア4媒体の低迷がいわれて久しいのですが、インターネット技術によってそれぞれの価値観や生活様式の多様化は目覚ましいものがあります。
著者はマーケティングの観点から、これまでのアテンション(大衆の関心)へ訴求する20世紀型マスメディアから、21世紀はインタレスト(能動的な興味・関心)型のビジネスモデルへと変化することを指摘。ともにネットを利用した検索サービスのヤフーとグーグルをそれに当てはめると、ヤフーは情報の流通経路にネットを使っているだけで、依拠しているのはアテンション・エコノミー。人が集まるトップページにバナー広告を張って収入を上げる20世紀型メディア(新聞をはじめとしたマスメディアもこれに属す)で、グーグルは一番人が集まるトップページに何の広告も出さず、アテンションの一歩先のインタレストに絞っているため、広告主にとって「購買までのステップが短い」効率的な広告効果が期待できる21世紀型メディアと定義しています。
また、さまざまなメディアに回せる潜在量は一日平均5時間との分析結果をもとに、これからはその日に生成されたコンテンツと過去のストックされたコンテンツとが競合し、日々の生活におけるマスメディアのシェアは減少するとを宿命的な流れだと指摘します。
そのほか、マス4媒体の(テレビ、新聞、ラジオ、雑誌)現状と可能性について著者の見解が記されています。新聞についてはあまり目新しいものを見つけだすことはできませんでしたが、宅配網(インフラ)を生かしたビジネスの可能性を示されています。あと、ラジオに関する考察は目を見張るものでした。
ともあれ、マスメディアを取り巻く環境の変化を指摘するこの手の書籍が近年数多く発刊されていますが、これまでは建設的な提言を読み取れるものは少なく、一種の「マスコミいじめ」のようなものばかり…マスコミ関係者の高慢ぶりや高い賃金へのアジテーションを発することで「真のジャーナリスト」になった気でいる著者も見受けられます。そのような中で、本書はマスメディアとマーケティングの未来を本質的なメカニズムを考察する一冊だと思います。