ご臨終メディア−質問しないマスコミと一人で考えない日本人−
著者 森 達也・森巣 博(集英社新書)680円
ドキュメンタリー作家の森氏とオーストラリア在住で作家の森巣氏の対談形式で、今のマスコミ(放送、新聞)に働くものの「軸」がずれていることを分かりやすく、そしてオモシロくまとめられている。大手メディア関係者の賃金は高すぎて一般人の視線を忘れてると指摘し、2ちゃんねるで議論を戦わせている方々の視点の方が断然真相を追究していることが多いと説く。
質問しないメディア、見せないメディア、懲罰機関化するメディアときて、善意の行方はどこに向かう…。今のメディア自身も善意を体現しようとして、そこに正義という言葉を入れ替えて、麻痺している状態…。社会全体の善意による暴走の構造は拍車がかかるばかりと指摘する。
そしてメディアは卑しい仕事だと結び、マスコミ人は自分がくだらない、虫けらみたいな人間だというところから出発をしたほうが良い。正義であったり、公共の福祉であったり、知る権利、表現の自由とかを持ち出すから錯覚に陥ってしまう。もう一度原点に返って、メディアのほとんどの仕事が人の不幸をあげつらうことであり、聞かれたくないようなことまで取材をしなくちゃならない。その結果、常に誰かを傷つけることで成立している。ただし、そのことに対する後ろめたさは無くすべきではない―。
再販制度や特殊指定も新聞社に与えられた特権。その特権が与えられたことと引き換えに「ジャーナリズム機能」が委ねられたのだろうと考えさせられた。『軸』は…大切だ。
久しぶりに一気に読めた本でした。
このたびは私のブログにコメントとTBをいただき、ありがとうございました。
実は私も新聞業界の一端で碌を食むものでございます。
最近の新聞業界は、死んだも同然ですね。まさに森達也氏・森巣博氏が言うとおり「ご臨終メディア」ですね。本当に末期症状で、嫌になります。
今後もお邪魔します。何卒よろしくお願いします。
伊達マリオ