2015年02月26日

陸奥新報 システム障害で大幅な配達遅れ/中国製システムの復旧遅れる

 青森県弘前市を中心に日刊紙を発行している陸奥新報社が、紙面制作トラブルのため、本日(26日)付朝刊の配達が大幅に遅れているようです。大幅にといっても正午過ぎても配達されていない地域もあり、津軽の知人へ連絡したところ「配達遅れのお詫びの文書とチラシだけが届いた」とのこと。

▽陸奥新報のお知らせ
26日付本紙は、制作システムトラブルで編集作業に大幅な遅れが生じました。このため遅配となりましたことをおわびします。
http://www.mutusinpou.co.jp/news/2015/02/35288.html

 青森の新聞社で働く友人がこの一報を知らせてくれました。氏によると「陸奥新報のシステムは中国資本のベンダー(方正株式会社)を使用している。日本法人はあるものの、こういったトラブル時に対応が遅れることが一番怖いと言われていた。陸奥新報は発送、配達も朝日や東奥日報の販売店に委託しているところが多いため、すべての読者の手に渡るまで、相当時間がかかる見通しだ」とのこと。
▽方正株式会社
http://www.founder.co.jp/solution_01_typesetting_info.html

 よく「輪転機のトラブルにより販売店への店着時間が遅れる」という話は耳にしますが、システム障害で販売店が機能する時間帯(配達員の多くは副業であるため、7時くらいを過ぎると大半のアルバイトが日中の仕事へ向かってしまい宅配体制が機能しなくなる)を大幅に超えてしまうというのはとても珍しいことです(いや、とても残念であり、気の毒な話です)。
 店主さんはじめ専業従業員の方が精一杯、配達していることと思いますが、雪深い弘前市内そして青森全域への新聞配達は容易ではありません。あすの朝刊と一緒に配達するところも出てくると思われます(夕刊と一緒というわけにも行かないので)。

 定期購読者の減少に伴う販売収入や広告収入の落ち込みなどで、厳しい経営を余儀なくされている新聞社。株式会社電通がこのほど発表した「2014年日本の広告費」によると、「マス四媒体」といわれるテレビ、ラジオ、雑誌の広告収入が総じて前年比プラスになったものの、新聞だけが98.2%の前年割れ。急上昇中のインターネット広告(1兆519億円・前年比112.1%)にも大きく水を分けられています。
 (これは想像ですが)できるだけ安価なシステムを導入した結果がシステム障害という事態を招いたのかもしれません。新聞社は不測の事態においてもソフト面(新聞社員力)については事態に対応できる能力と修練された技術力があるものですが、ハード面(システムや輪転機など)は専門業者に委ねるしかないのも現実です。「他山の石」として自分たちの足元を見つめ直したいと思います。

▽「2014年 日本の広告費」は6兆1,522億円、前年比102.9%(電通)
http://www.dentsu.co.jp/news/release/2015/0224-003977.html

【追記】(2016.2.26 19:15)
▽陸奥新報が朝刊遅配 システム障害で(東奥日報2/26付夕刊より)
 陸奥新報社(本社・弘前市)の新聞編集制作システムに障害が発生し、同社発行の26日付朝刊「陸奥新報」が津軽地方で約6時間、遅配になった。
 同社の成田幸男編集局長によると、システムに障害が起きたのは25日午後10時ごろ。応急処置をし26日午前9時すぎ、印刷を再開した。同局長は「原因を調べながら完全復旧を目指す」と話している。

 今回の一報を知らせてくれた友人から貴重な資料も送っていただいたので引用します。ちなみに、青森市内には、午後3時に陸奥新報が届いたそうです。
※ベンダー(方正株式会社)の沿革によると、陸奥新報のシステムは2006年11月に稼働。2010年2月には日刊スポーツの「東阪統合システム」が稼働し、この年の新聞協会賞(技術部門)を受賞している。
http://www.founder.co.jp/about_us.html#c
※当時の「新聞研究」を見ると、受賞理由に「海外ベンダーに開発作業を委託することで、開発・保守コストの大幅な削減を図った」とある。今回の陸奥新報のトラブルを直接結び付けるわけにはいかないが、「できるだけ設備投資を抑えたい」とも受け取れる。以下は新聞協会HPより。
http://web.archive.org/web/20101127190847/http://pressnet.or.jp/about/commendation/kyoukai/works.html
posted by 今だけ委員長 at 15:46 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時事ニュース

2015年02月13日

中国新聞が4月末で夕刊を休刊/ブロック紙勢も「夕刊廃止」の堰を切った

 昨夜に届いたニュースを見ながら「やはり…」という思いに駆られました。
中国新聞が4月で夕刊休刊 朝刊とセットの新媒体創刊(2/13付・中国新聞)
 中国新聞社(広島市)は12日、夕刊を4月末で休刊し、朝刊と同時に配達する日刊の新媒体「中国新聞SELECT(セレクト)」を5月1日、創刊すると発表した。同社夕刊は1924年から発行しているが、部数減により91年に及ぶ歴史に幕を下ろすことにした。
 SELECTは、経済や海外のニュースを中心に、幅広いジャンルから読み応えのある記事を盛り込む。外部投稿や写真特集、文化、芸能のほか脳トレやクロスワードなど遊びの要素も加える。
 朝刊と同じサイズの16ページで、全ページカラー。月曜日を除く週6日発行する。朝刊と同時に配達することを条件に、販売エリアは限定しない。
中国新聞社:4月末で夕刊を休刊に(2/12付・毎日新聞)
中国新聞社(広島市)は12日、夕刊を4月末で休刊し、朝刊と同時に配達する日刊の新媒体「中国新聞SELECT(セレクト)」を5月1日、創刊すると発表した。同社夕刊は1924年から発行しているが、部数減により91年に及ぶ歴史に幕を下ろすことにした。
 SELECTは、経済や海外のニュースを中心に、幅広いジャンルから読み応えのある記事を盛り込む。外部投稿や写真特集、文化、芸能のほか脳トレやクロスワードなど遊びの要素も加える。
 朝刊と同じサイズの16ページで、全ページカラー。月曜を除く週6日発行する。朝刊と同時に配達することを条件に、販売エリアは限定しない。(共同)

 新聞社は県内を発行エリアとする地方紙と近隣県にまたがる広域エリアで発行するブロック紙、そして全国紙に分類されますが、いよいよブロック紙勢も「夕刊休刊」の堰(せき)を切ったと捉えています。(※産経新聞東京本社は全国紙ですが2002年3月で夕刊廃止)

 今だけ委員長は、この流れはさらに加速すると予感しています。
 新聞社および販売店の経営問題のみを考えると夕刊発行(配達経費含む)にかかるコストは総じて赤字です。完全セット販売も顧客のニーズによって崩れており、朝刊単配の読者がセット読者数を上回っている地区が増加、記事の連動性も編集段階で相当難しくなっていると聞きます(夕刊で一報した記事を翌日朝刊へ掲載する際、夕刊を購読していない読者へ記事重複しないように掲載の仕方を工夫するなど)。
 また、新聞社において速報性という概念がいまのネット時代に照らし合わせて、どう作用しているのか。号外の発行も電子号外(WEBで発信)へシフトしている状況を考えると、情報の速報性については「紙」だけに固執しない流れになっているわけで、これまで(中国新聞社は91年間)続いてきた朝・夕刊という新聞のセット発行は多メディア時代(情報摂取の機会の多様化)とともにその意味を成さなくなってきたと感じています。
 しかし、販売現場にいると夕刊が配達されるのを待っている読者もいる(その多くが高齢者ですが)。そして、新聞配達で生計を立てている労働者のことを考えると何とも言えないジレンマを抱きながら、私を含め多くの新聞関係者は「自分たちの足元」を見ていることだと思います。

 けさはやくに、旧知の中国新聞販売店の方へ話しをうかがいました。その所長さんも夕刊配達スタッフへの説明やメディアとしての価値について、複雑な気持ちでいるようでした。夕刊休刊の社告は本日付だったのですが、業界紙などに情報が漏れて当初3月発表の予定を前倒しして13日発表となったこと(共同通信などは前日12日に配信)。販売店側へ夕刊休止の通達・説明会が行われたのは先月28日だったそうです。夕刊を扱っている販売店の多くが採算割れしていたことなどから「歓迎」する向きもあるとのことですが、この所長さんは「やはりスタッフのことやメディアとしての価値を考えれば、どうなんだろう?と言う気持ちです」と語ってくれました。

 中国新聞社では夕刊に変わる新たな媒体「中国新聞SELECT(セレクト)」(週6回発行・単売なし)を発行するとのこと。夕刊休止による収入減を補う施策として期待されますが、中国新聞の読者が2パターン(SELECTとのセット読者と朝刊単読者)となるので、配達はとても複雑になるのではないかと感じます。

【追記】
※中国新聞 発行部数(2013年4月15日現在)
 朝刊 639,084部   夕刊 34,967部

posted by 今だけ委員長 at 07:15 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時事ニュース

2015年02月10日

阪神淡路大震災から20年 復興の歩みで感じた新聞社の力強い矜持

shisaibookp.jpg
阪神・淡路大震災20年 報道記録(神戸新聞総合出版センター)1,800円

 神戸新聞社の友から、阪神・淡路大震災20年の報道記録と1995年1月17日の震災直後に発行された神戸新聞夕刊(復刻版)を贈っていただきました。あらためて震災の凄まじさと、地域社会のなかで新聞社が果たしてきた力強い矜持のようなものを感じながら読ませていただきました。

阪神淡路大震災記録集・復刻版.jpg 20年前の大震災を境に、神戸新聞社の方々もとても大変な思いをされたことと思います。そして、震災が発生した5時46分は新聞配達の最中で、配達中に犠牲になった方もいらっしゃいます。公益社団法人・日本新聞販売協会へ問い合わせたところ、当時の同協会近畿本部編集・発行の「日販協近畿報」(平成7年2月号)を提供していただきました。紙面を見ると亡くなられた新聞販売労働者は20人。負傷者32人。全焼した店舗が1店。全壊が74店、半壊が142店。資料では配達中に亡くなられた方だけの数字ではありませんが、多くの犠牲者が出てしまったことは悔やまれてなりません。
日販協支部別被害状況_02.jpg
 被災した生活者のために新聞社員は情報を集め、紙面をつくり、販売労働者は新聞を配り続けた。

 東日本大震災の時も宅配網を支えた配達スタッフの気持ちを「責任感」の表れと思っているのですが、給料を払っている側は(給料という権利を得ているのだから)「義務感」であろうと考えている方も少なくありません。視点のあて方の違いだと思いますが、機械化できない新聞配達は労働集約型産業なので、ある種の責任感(休んだ方もいらっしゃったので)が根っこにある方々によって支えられていると考えたいものです。

 まだまだ復興もままならないのに不謹慎かもしれませんが、東日本大震災から20年後(あと16年)って被災三県をはじめ、この国がどのような状況になっているのかと考えます。そして新聞産業も・・・。
 こんなことを思い浮かべながら、あすは47回目の月命日。もうすぐ東日本大震災から4年が経とうとしています。
posted by 今だけ委員長 at 01:08 | Comment(0) | TrackBack(0) | 書籍紹介
ツイート