▽ヤマト運輸、メール便廃止へ 利用者のリスク回避できず(朝日新聞1月22日付)
http://www.asahi.com/articles/ASH1Q5HNCH1QULFA019.html
▽クロネコメール便の廃止について(ヤマト運輸プレスリリース)
http://www.yamato-hd.co.jp/news/h26/h26_73_01news.html
お客さまがクロネコメール便で信書に該当する文書を送り、罰せられてしまうことがないよう、荷受けを厳格化し、注意喚起をはかるとともに、2013年12月に、総務省 情報通信審議会 郵政政策部会において、内容物ではなく、誰もが見た目で判断できる「『外形基準』の導入による信書規制の改革」を提案し、信書を送ってしまっても、送ったお客さまではなく受け付けた運送事業者のみが罪に問われる基準にすべきであると訴えてきました。しかしながら、結局、当社の主張は受け入れられず、依然お客さまのリスクをふせぐことができない状態となっております。
以上の経緯を踏まえ、法違反の認識がないお客さまが容疑者になるリスクをこれ以上放置することは、当社の企業姿勢と社会的責任に反するものであり、このままの状況では、お客さまにとっての『安全で安心なサービスの利用環境』と『利便性』を当社の努力だけで持続的に両立することは困難であると判断し、クロネコメール便のサービスを廃止する決断に至りました。(ヤマト運輸プレスリリースより)
今回発表されたヤマト運輸の「クロネコメール便廃止の決断」については、総務省の諮問機関「情報通信審議会」が昨年12月4日に中間答申した「郵政事業のユニバーサルサービス確保と郵便・信書便市場の活性化方策の在り方」の内容(総務省の方針)が、ヤマト運輸側の思ったとおりには進まなかった(これ以上総務省が一般新書事業の基準を緩和することはありえないと悟った)ことが「決断」に至ったと見るべきですが、私はヤマト運輸の将来的な人員確保の難しさやコスト的な価値判断ももうひとつの理由ではないかと感じています。
一般信書便事業は2003年に民間企業にも開放されましたが、「全国に約10万本のポストを置く」など基準が厳しく、これまで1社も参入していません。民営化になったとは言え実態としては日本郵便の独占状態が続いています。ヤマト運輸と総務省の「因縁の対決」(規制緩和を求める=ルールの定義)を注目してきましたが、もともと国が進めてきた郵便事業のインフラ機能(ユニバーサルサービス)には民間企業が太刀打ちできるわけがないのです。
私が所属する販売店でもメール便事業を大手運送会社の下請けとして業務委託を受けていますが、「どう見ても信書だろう」というものがフツーに流通しているのが実態です。ヤマト運輸も依頼された顧客のリスクまで考えなくともイイのではないか―とも思うのですが、配達スタッフ確保の難しさやコスト的なメリットも「決断」に含まれているのかもしれません。ネット上では「日本郵便の独占は許せない」とか「ヤマトの方がサービス(価格)がよい」という意見が大半を占めているようですが、流通の現場では一般信書の配達料金ではコスト的に合いません。ビジネス街のように一つのビルで何百通と届けられる市場であれば利益もでると思いますが、住宅地などでは確実に赤字になるでしょう。メール便の単配ではやっていけないのです(私のところは夕刊配達時のついでに配っています)。全国どこでも52円で3日以内に届けるサービスは国策だからやってこれたわけだし、民営化されたとはいえ拠点・設備・インフラ機能はそのまま受け継いだ日本郵便にはかなわない。「生活者の利益」をよーく考えたいものです。
ネット販売などの流通が活発になり民間企業が薄利多売の料金競争を仕掛けてメール便市場は拡大してきたわけですが、そのしわ寄せは末端労働者への低賃金化を招き、「配る人がいない」というスパイラルに陥るだけだと思います。
▽信書を送る方法と梱包方法!ヤマト運輸、佐川急便、日本郵便の宅配便
http://torisedo.com/18692.html
▽一般信書便の参入規制維持 総務省、特定信書便は一部緩和(日本経済新聞2014年3月12日付)
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS1203J_S4A310C1EE8000/