「特別警報」が発せられそうな勢いの台風26号はあす未明に関東・南東北圏に上陸する可能性が高くなってきました。
▽台風26号 東北の沿岸、特別警報も 仙台管区気象台(河北新報ニュース 10/15付)
http://www.kahoku.co.jp/news/2013/10/20131015t73039.htm
あすの朝刊作業は不測の事態に備えて当番社員の配置を増員。また、緊急時には社内のマニュアルに沿って業務運営をするよう指示をしました。
備えあれば憂いなし・・・と言いたいところですが、雨濡れに注意しながら風で飛びやすい「紙」を届けるのが私たちの仕事。「年配のKさんは強風で自転車での配達ができるかな」とか、「奨学生のO君は・・・」なんとなく心配で眠りにつけそうにありません。
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日本新聞協会・販売委員会が毎年公募している「新聞配達に関するエッセーコンテスト」(今年で20回目)の入選作品集が届きました。
同協会のホームページや新聞紙面ではその入選作品が紹介されていますが、冊子を手にとって読んでみると新聞配達に携わる者としてはジンとくるものがあります。また、最優秀賞三部門のうち、二部門で宮城県在住の方が受賞したことも感慨深いものとなりました。その最優秀賞に選ばれた二作品を引用します。
・大学生・社会人部門
『新聞は私の生きている証』 伊勢伸彬さん(66歳)仙台市宮城野区
一人暮らしの母のもとに帰り、介護生活を始めたある日のこと。
「読みもしない新聞、もう断るぞ」と言うと、認知症の母がキッとした目で、「そんなこと言わないでけさい、私の生きている証しなんだから」と私をにらんだ。
そして要介護4の母がなおも続けた。「新聞取り忘れた時、心配して何回も来てけだんだよ。孤独死してもすぐ見つけてけられっから、安心して暮らしてんだから」
一人暮らしがボケ防止だと強がっていた母、心の中は不安と寂しさでいっぱいだったのだろう。
母が逝って丸三年。その家で私が一人暮らしをしている。ザクザクと小砂利を踏む足音が近づき、バサッと音がして遠ざかる。私は布団の中で手足を伸ばし、健康に朝を迎えたことを意識する。
そして、新聞配達さんありがとう、私にも、母と同じように安心を届けてくださいと、手を合わせる。
・中学生・高校生部門最優秀賞
『一日が始まる合図』 日野はるかさん(16歳)宮城県気仙沼市
震災数週間後の静かな町。
早く目が覚めてしまった私は布団の中で考えごとをしていました。学校に行きたい。友達に会いたい。早く元の生活に戻りたい。そんなことを考えていると、いつの間にか泣いていました。
その時、なんだか聞き覚えのある音が近づいてきました。新聞配達のバイクの音です。
この音が聞こえると、母は起きて家族のお弁当や朝ごはんを作り始めます。そこから私の家の一日が始まるのです。バイクの音は、母が準備を始める合図でした。この音があるからこそ一日が始まり、家族の日常を取り戻せることに、その日初めて気付きました。バイクの音が聞こえることも幸せな日常だったのです。
あれから二年もの年月がたちましたが、バイクの音は休むことなく毎朝聞こえてきます。そして今日もまた、バイクの音を合図に家族の日常が始まるのです。
▽新聞配達に関するエッセーコンテスト入選作一覧(日本新聞協会HPより)
http://www.pressnet.or.jp/about/recruitment/essay/works.html#daigakuhighest