新聞販売の現場で最も大切なことは、読者との約束を履行すること。なかでも「配達時間を守る」ことは最重要の課題です。
東日本大震災から1年が経過したいま、降版時間も通常ダイヤに戻り、できるだけ最新のニュースを紙面へ収納して読者の手元へ届けようと、新聞社、印刷会社、輸送会社、販売店の四位一体でふんばっています。
読者と直接かかわっている販売店の立場からすると、店着時間の遅れは大きなリスクを伴います。以前にも書きましたが、店着時間が30分遅れると配達作業が約60分後ろへずれ込みます。悪天候による流通部門(新聞輸送)の遅れについては、物理的に仕方がない要因(読者もある程度許してくれる)でもありますが、ほかの理由で店着が遅れてしまうケース(選挙、スポーツの結果掲載など含む)に対しては、早めの連絡体制は必須です。
「輪転機故障のため店着が○○分遅れます」。そんなファクスが届いた場合は、当たりようのない憤りをかみしめながらも、新聞産業の最終アンカー役として代配要員を配置するなどの対策を即時に講じるものです。
紙ベースの新聞産業は言わずもがな、取材から新聞配達までのことを指します。お互いのミス等があればそれぞれが補い合って、読者に対して最善の策を講じることが組織力なのだと思います。いわゆる危機管理の徹底です。店着が大幅に遅れるという連絡が入れば複数の従業員を緊急に呼び出し、配達完了時間をできるだけ早める努力をするのも販売店の使命だと思っています。
しかし、連絡もなしに店着時間が遅れると、現場では大パニックを起こしてしまいます。人間が携わる作業ですからミスが発生するは仕方ないのですが、そのようなミスが生じた場合の危機管理体制が整っていない場合は、既存の体制で対応でき得る作業量をオーバーしているのではないかと検証する必要があると思います。経営効率を過度に重視して「やれます」とか、「経費を圧縮するためにはこの程度なら大丈夫でしょう」と豪語する現場を知らない方たちの意見ではなく、実際に混乱する販売店の現場の意見や、新聞を待ってくれている読者の声に耳を傾けるべきだと思います。
新聞産業も合理化による人員削減の流れはますます進むと思われます。ギリギリの人数でそれぞれの職場で業務に携わる方々が、問題意識を共有し、危機管理に必要な体制作りをしっかり考えたいものです。内向きではなく、読者を向いた発想で…。