2012年01月28日

まだまだ伝えていないことがある/@Fukushima私たちの望むものは


@Fukushima 私たちの望むものは.jpg
@Fukushima 私たちの望むものは
著者 高田昌幸ほか6人(産学社)1,700円

 東日本大震災は大津波という自然災害をもたらし、岩手、宮城、福島の沿岸部で生活していた方の命と生活を奪いました。先人たちの言い伝えを遵守して高台に居住する世帯はその難を逃れましたが、約50年しかない原子力発電の歴史では、津波の被害を受けてメルトダウンするとは想定外のことだったのかもしれません。
 でも、事故は起きてしまいました。津波の被害はなく家屋も残っているというのにわが家へ帰れない…。放射能という目に見えない魔物は人体にどう影響するのか・・・。


 本書は福島第一原発の事故に際し、怒り、戸惑い、悩み、諦め、そして希望を抱きながら過ごしている34人へ取材し(取材者は高田さんを含む7人)、「福島の声」をまとめたものです。
 「農林・観光の現場から」、「子どもと母親」、「首長たち」、「警笛は鳴らしたが」、「伝える悩み」、「動けぬ人々」、「再出発、しかし」、「信じるもの」の8部構成で、それぞれの章とも新聞記者的なストーリーを先に決めて、物語のように構成された文書ではない地元の人たちの本音がまとめられています。個人的には「伝える悩み」の章で福島民報社の記者・柳沼光さん(32歳)の「バランス」がスッと入ってきました。「地元の声を丹念に拾って、丹念に書いていくしかないんです。書かなければ、世の中に対してはゼロです。書かなければ、その声は埋もれていきます。だから書きます」と結ばれた記事は、必見です。


 先日、福島県浪江町から避難してきた方が集う「仙台でなみえを語ろう交流会」へ参加してきました。浪江町は津波被害により178名の町民が犠牲となり、6名が行方不明のまま。町の人口21,168人のうち7,040人が福島県外へ避難しています。
 私は所属するボランティアプロジェクト(ふんばろう東日本支援プロジェクト)として冬物家電支援の受付をさせていただいたのですが、申し込んでいただいた方々から話をうかがいながら思ったことは、「なかなか自分に置き換えて考えることができない状況にあるな」ということです。各メディアでは「除染が進み…」とか「早く帰りたい住民の声」などと書かれてありますが、住民の方は「戻れる状況にあるのか、正確な情報がほしいし、それを国がしっかり担保してもらわないと…」と語っていました。
 交流会の最後に、さっと手を挙げた女性は「住民同士の交流会よりも国会議員などに住民の意見を直接訴える機会を設けてもらいたいし、マスコミにもっと現実を取り上げてもらいたい」と声を荒げました。避難者の気持ちはちゃんと理解されていないのか―と痛いくらいに胸に響く言葉でした。


 よく米軍基地問題のことを「沖縄のこと」と他人事のようにいう人がいますが、沖縄県は日本国であって、沖縄で起きているのではなく日本で起きている問題なのです。福島第一原発事故のことも他人事ではありません。避難者に寄り添いながら現実を伝え、そして風化させることのないようにマスメディアにはしっかり報じてもらいたいと思います。

posted by 今だけ委員長 at 23:28 | Comment(0) | TrackBack(0) | 書籍紹介

2012年01月25日

「メディアと私。―おもに、震災の後」 ほぼ日の対談は必見!

 「ほぼ日刊イトイ新聞」をお気に入りへ加えてチェックしているのですが、今回の対談もグッとくるものがありました。
 1月23日付から9回にわたって連載される佐々木俊尚さんと糸井重里さんとの対談「メディアと私。―おもに、震災の後。」 これはメディア関係者(ネット推進派の佐々木さんを毛嫌いする新聞関係者もご一読を)にもぜひ読んでもらいたいと思います。
 

http://www.1101.com/sasaki_toshinao/2012-01-23.html


 私はボランティア活動を通じて、昨年4月頃から石巻や南三陸など宮城県内の沿岸部へ毎週のように通っています。その際、いく先々で「あぁ…あんだも河北(系)の人なの。最近の新聞オモシロいね」とか、「被災者に寄り添った記事が多くてうれしい」、「なんか身近な新聞っていう感じがする」という言葉を被災された方々から直接うかがうことがありました。それもかなり多くの方々から…。
 しかし、3カ月、半年と時が過ぎると署名記事もめっきり減ってしまいました。新聞社でいうところの「本来の紙面」に戻っているように感じてなりません。確かに今後もずっと震災関連の記事ばかりを載せていくわけにもいかないということはわかっているのですが、せめて「地ダネは著名記事」くらいは、3・11大震災を経ての教訓(当事者に寄り添うという姿勢で)として根付かせてもらいたかったと思うのです。

 「ほぼ日刊イトイ新聞」での今後の展開を楽しみにしているのですが、佐々木さんがいう「当事者主義」とは、読者からすると「記者の顔が見える」ことでもあり、記者もいろいろなことを背負って「新聞に記事を書く」ということが、これからの時代の紙新聞に一番必要なことのように感じます。「発行部数を維持することがジャーナリズムの影響力を守ること」という視点ではなく、新聞人が「当事者主義」をいま以上に持ち、貫けば読者はおのずと応援してくれるに違いありません。
 「何を伝えたくて新聞を作り届けるのか」。東日本大震災から10カ月を経て仕事では「増紙」という業務命令にまい進しつつ、新聞販売労働者が、ふと新聞の役割をフツーの人間として考えるのです。
posted by 今だけ委員長 at 01:22 | Comment(0) | TrackBack(0) | きょうの喜怒哀楽

2012年01月17日

手元に置いておきたいチラシを目指して  ワンコイン応援メッセージ第9弾は南三陸町編!

 昨年5月から取り組んできたワンコイン応援メッセージプロジェクトは、東日本大震災で津波被害に見舞われた新聞販売店の支援と地域読者への情報発信を目的に、毎月発行を続けています。これまで8回(8エリア)の発行を継続できたのも、趣旨に賛同いただいた方々の支えがあってこそです。あらためて感謝申し上げます。
  ワンコイン応援メッセージ第9弾 南三陸町編(1面).jpg  ワンコイン応援メッセージ第9弾 南三陸町編(2面).jpg
 2012年最初のワンコイン応援メッセージは、震災後に販売店が自廃し、新聞社の直営で立て直しが図られてきた南三陸町・志津川地区。やっと配達体制が整い、昨年末から折込チラシの受注がはじまったばかりのエリアへ1月20日に折り込まれる予定です。


 2面には震災後から、地域の方々の避難所として、またボランティア団体の拠点として施設を提供してきた南三陸ホテル観洋さんに使っていただきました。観洋さんが地域住民のために提供している「観洋ぐるりんバス」(無料送迎バス付きでホテルの施設を利用してもらおうという企画)の時刻表などを掲載しました。
「折込チラシは地域住民の情報源」という媒体価値を理解されて、配布エリアの方々が「手元に置いておきたい」と思う素材を提供してくれました。本当に感謝です。
※参考資料:被災地ツアー「冬が来る前に、被災地での生活支援や物資支援をふんばろう!」編(ふらっとブログ・ふんばろう東日本支援プロジェクト宮城支部より)
http://flat.kahoku.co.jp/u/volunteer25/fwgpsTynQ6Buakv7S835/


 引き続き、ワンコイン応援メッセージプロジェクトに取り組んでまいります。ワンコイン(500円)で被災地に住む方へ応援メッセージを贈ってみませんか?皆さまのご支援をよろしくお願いします。
 ワンコイン応援メッセージプロジェクトへの問い合わせは、
koseki.k@gmail.com まで!

2012年01月13日

電子新聞の新聞公正競争規約上の扱い

 新聞公正取引協議会が1月10日付で発行した「中央協だより」(167号)に、「紙」を対象とした新聞公正競争規約(自主規制ルール)における「電子新聞」の扱い(Wプランなどのセット販売)について、現時点での問題点の整理が掲載されていたので引用します。

電子新聞の新聞公正競争規約上の扱いについて
 電子新聞の新聞公正競争規約上の扱いについて、事務局に多くの質問が寄せられているため、消費者庁の現時点での見解を踏まえて下記のとおり整理した。
 なお、本紙と電子新聞の組み合わせ販売は新しい事案であり、消費者庁の解釈も必ずしも定まっていない部分がある。
Q.電子新聞は再販商品か。
A.公取委は、著作物再販制度の対象は「物」を対象としており、ネットワークを通じて情報として配信される電子新聞は「物」ではないので同制度の対象にはならないとしている。
 また、電子新聞は本社が読者に直接販売するケースが多い。その場合、再販売という概念が存在しない。
Q.電子新聞は新聞公正競争規約の対象になるか。
A.現行の新聞公正競争規約はそもそも電子新聞を想定して制定したものではなく、現時点では一般ルールに従うことになる。しかし、紙の新聞と電子新聞を組み合わせて販売する場合の景品類提供は、新聞公正競争規約に従う。同一の企画により電子新聞単体読者、本紙・電子新聞組み合わせ読者の両方に景品類を提供する場合も、新聞公正競争規約に従う。
 消費者庁は、「異なるルールのもとにある2つの商品を組み合わせて販売する場合、総付、懸賞のいずれであっても、より制限的なルールが取引全体に対して適用されることが原則だ」としている。
Q.電子新聞を本紙読者に割安に提供することは、本紙購読の景品となるか。
A.例えば単体で4000円の電子新聞を、本紙購読者は1000円で購入できるケースがこれに該当する。
 消費者庁によれば、景表法上こうした販売形態は電子新聞の値引きに該当する。
 電子新聞は再販・特殊指定商品ではないため値引きすること自体は問題ないが、過度に値引きが行われる場合は独禁法上の不当廉売にあたる恐れがある。
Q.電子新聞を本紙読者に無料で提供することは、本紙購読の景品となるか。
A.消費者庁は、電子新聞が単体では有料であっても本紙と実質的に同一の場合(例:紙面をそのままPDF化する場合)は、無料提供は景品にも値引きにも該当しないとしている。これは、紙、電子のどちらの形で読むかを読者に選択させているだけで、商品自体は同一のものであるとの解釈に基づいている。
 一方、付加的な機能がついた電子新聞を無料で提供する場合は、同一の商品とはいえないため、電子新聞が本紙購読に付随する景品となる。従って、6・8ルールの範囲内で行うこととなる。(第601回中央協 12/15)


 各新聞社とも、ネットによる記事コンテンツ配信事業をどのように創造し、事業展開していくのか。まだまだ試行錯誤の中で他社の動向を横にらみしながら、「やっぱり紙だ」と既存事業の殻にこもっているところが多いように感じます。
 確かに「EPIC2014」に踊らされた感もあるのですが、ネット上で全世界をマーケットに商売を仕掛けてくるポータル企業の進出に右往左往するのではなく(本来はそのためのツールでもあるのですが)、得意な地域(取材網)でその情報を最も知りたいその地元の人たちをマーケットにした事業を地道にやっていくしかないのかなぁと感じています。そのために、「紙」も「ネット」も地元の人たちから信頼され、使い勝手のよいメディアとして活動をしていくしかないと思います。「新聞の役割」を自問しながら・・・
posted by 今だけ委員長 at 19:58 | Comment(2) | TrackBack(0) | 日記

2012年01月12日

消費税率引き上げ問題 オールドメディアの論調を考える

 昨年末、第二の故郷の山形県米沢市で2日間過ごしました。雪深い地域として知られる置賜地方では、この時期の積雪量としては10年ぶりの大雪だそうです。
 雪国の朝は雪運びからはじまります。早朝5時からゴム長をはいてスコップ片手に屋根から落ちてくる雪のかたまりを敷地内の雪置き場へ運び導線を確保します。ちょうど、ひと汗かいたところで、新聞配達の方が朝刊を届けてくれました。地域性によると思いますが実家への冬期間の配達は車で行われているようです。あらためて、新聞配達の大変さが身に染みた年の瀬でした。


51Znuv60qBL__SL500_AA300_.jpg決別!日本の病根 古賀茂明.jpg 現役時代に地元の信用金庫に勤めていた義父は、私が訪問すると待ってましたとばかりに平均2〜3時間は経済の話で盛りあがります。そして、自分が読み終えた本を「よかったら読んでみろ」と渡してくれます。今回は元大蔵省職員の橋洋一著「財務省が隠す650兆円の国民資産」(講談社)と元経産省職員の古賀茂明著「決別!日本の病根」(オフレコBOOKS)の2冊。

 アルコールを一滴も飲まない義父との議論は延々と続くのですが、左党の私にとっては少々つらく…。野田首相肝いりの消費税率引き上げが主なテーマでしたが、義父と私の共通認識は、消費はさらに低迷してデフレ経済はより深刻化(増税のためのデフレ・タイミングを見計らってインフレを誘導)し、中産階級の労働者にとってはさらに厳しい世の中になる―ということ。そして、消費税率を上げる前に財務省をはじめとする官僚・公務員の制度改革(末端で頑張っている公務員がいることも理解しつつ)が先ではないかと声を荒げながら、市役所勤めをしていた義母をチラ見しながら議論は煮詰まり…。いずれにしても、米国(ロックフェラー財団)の言いなりになっている財務官僚に政治屋がコントロールされている―という結論で、早くビールにありつきたい輩は早々に引き上げて台所でチビチビと…。

 でも、よくよく考えると、そもそも消費税率の引き上げが「しょうがない」という世論がすでに形成されてしまっているのではないかと思うのです。これはオールドメディア(特に新聞)の報じ方(解説)によるものですが、全国紙のほとんどが「消費税引き上げやむなし」との論調を展開していたように感じます(自宅で3紙取ってますが最近読んでいません)。
▽全小中校図書館に新聞予算計上 15億円、NIEに弾み(2011/12/26共同通信)
http://www.47news.jp/CN/201112/CN2011122601001231.html
 まさか、こんなことで財務官僚と裏取引をしたとは思いたくありませんが、国民の暮らしを代弁する(そう期待してます)新聞社がこぞって「税率引き上げはしょうがない」の世の中ってどうなんだろう。もしかして、新聞が課税軽減の対象品目に加えてもらったから「手心を加えている」と思ったりもして…。新聞界のドンが動いているのかもしれませんが、ありえない話ですね。

 この調子だと2014年4月に8%、15年10月に10%へ段階的に引き上げられることになり、新聞購読料も実質値上げになりそうです。一部マスコミご用達のFACTA(2012年1月号)では「朝日と〇〇は消費税引き上げ分を購読料へ転嫁せず、消耗戦に持ち込む」と書かれていましたが、どうでしょう。販売店への補助金カットなどで相殺するのだとか…。まさにタコ足食いのサバイバル時代への突入です。

posted by 今だけ委員長 at 04:39 | Comment(4) | TrackBack(0) | 日記

2012年01月11日

2012年もよろしくお願いします!

 生涯忘れることのできない出来事となった東日本大震災。津波の猛威にねじ伏せられた人間の無力感にグッと奥歯を噛む日が続いています。多くの知己が不慮の旅立ちをよぎなくされ、未だに行方不明の知人もいます。
 被災3県の首長たちは「新年の祝賀式等は自粛する」と早々に表明し、喪中の便りにまじって「賀状での挨拶は控えたい」とのメッセージも相当数届きました。私も伯父と伯母を今回の震災で亡くしましたが、被災された方が1日でも早くこれまでの生活に戻るため、これまで通りの生活をすることが大切だと考えています。

 「再生へ 心ひとつに」は、河北新報社が掲げた震災復興のスローガンです。とてもよい言葉だと思います。コミュニケーションを取りづらい社会へ一石を投じた言葉としてのインパクトは相当なものでしょう。しかし、言葉の強みは理解しつつも、それが実践されなければ何の意味も持ちません。果たして「心ひとつに」という言葉をどう理解し、実践していけるのかと昨年4月から携わっているボランティア活動を通じながら日々考えています。

 新聞産業も消費税問題や印刷部門など新聞社間の業務提携の動きが活発になっています。新聞産業のアンカー役を担っている新聞販売店はこれまで培ってきた宅配機能、顧客管理、地域住民とのつながり―という人材資源をもっと活用していかなければならないと思っています。業務提携による効率化も新たな仕事の創出もやはり「人」が知恵を出し合い行動していくしかないのです。
 今年もよろしくお願いします。

 2012年1月

追伸、年明けからいろいろなことがあってPCに向かう気力を失っていました。しかし、きょうであの3・11大震災から10カ月。ふんばらなくては―と自分に言い聞かせて「今だけ委員長の独りごと」の2012年をスタートさせます。今年もよろしくお付き合いください。

posted by 今だけ委員長 at 07:52 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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