新聞社間の印刷部門の業務提携(受託印刷)が加速している昨今、発送、販売店部門を含めた流通部門の統廃合が動き出しています。
▽ASA所長の転進支援 朝日が一時金支給
朝日新聞社の飯田真也常務取締役販売担当らは16日、朝日新聞販売店主への転進支援制度の概要や趣旨を説明した。支援制度は10月から来年1月末まで、山梨、栃木、群馬、新潟、長野、静岡、東北6県、北陸3県、中国、四国、九州、北海道(札幌圏を除く)に本店を置き、朝日新聞を500部以上扱う専売店店主が経営を完全廃業した場合、500部から1000部までの扱い店に500万円、1001部以上の扱い店に1000万円の特別金を支給するもの。11月11日現在49件の応募がある。応募者の平均年齢は59歳、店主歴は平均18年。
飯田担当は制度の趣旨を「朝日販売網を支えたことに対して感謝の気持ちを表した。資金面で余裕のあるうちに支援したい」と説明。さらに、今後の人口減少、高齢化、デジタル化と若者の新聞離れ、東日本大震災後の折り込み減少、消費税などが新聞販売店に及ぼす影響に対して今から準備をしておく必要があると述べた。そのため、同社は朝日販売網を部数が伸ばせる競争地域(都市部)と部数を維持する協調地域(過疎地域)に分けて中長期の販売網のあるべき姿を検討していくとした。これまでも読売や日経などと「預け合い」を行ってきたが、今後は両紙に加えて協調できるすべての新聞社と相談して朝日新聞販売網、戸別配達網を守っていくという。
質疑応答では、制度が今回限りの特別措置であり新聞社側にも販売経費削減効果があること、100件以上の応募に対応できる予算をとっていることなどが明らかになった。(ジャーナリスト新聞 11月21日付)
印刷部門を提携したところで、その下流部門の発送(新聞輸送会社)と宅配(販売店)まで共同的な業務運営をしなければ、新聞産業全体のスケールメリットは得られないと小ブログでも指摘をしてきました。しかし、一方的に販売店を改廃するわけにはいかない。朝日新聞の販売店店主に対する「肩たたき」はそうしたジレンマを抱えながらの宅配体制を維持させるための施策なのだろうと感じます。
「専売網を維持するために、1000部の店だと毎年約1000万円の経費(補助金など)が必要となる」と記事は伝えていますが、1000万円の経費を使って「紙」を押しているわけですから、部数(販売収入)を維持するために自社の経費を使っているという新聞社の摩訶不思議なシステムまでには言及していません。販売店主さんも「紙」新聞や折込チラシの行く末を見れば、転身支援制度に応じる方も少なくないと感じます。いずれにしても、全国紙ほど専売店を維持するということがしんどくなってきているということなのです。
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東奥日報が小学生記者を募集
東奥日報社(青森市)が来年1月末に発行する「東奥こども新聞」(第26号)の取材をする小学生記者を募集しています。購読者を取りこむという戦略は最も効果的な手法です。募集人員の60名(世帯)は間違いなく、長期固定読者として同紙を購読されると思います。
子ども向け新聞の発行部数が軒並み伸びているなかで、有料の新聞(毎日、朝日、読売)に関しては、小学館などその道の専門企業が紙面を構成するなど、コンテンツ自体もすばらしいものです(大人が読んでもオモシロイ)。ですが、地方紙が紙面の補完として提供している子ども向けのページ(新聞と言ってますが)はやはり読み応えはいまひとつ…。子どもページをつくる目的が「読まれるコンテンツをつくる」ということから、「とりあえず子ども向けの媒体はできたのだから、販路を拡大しろ!」へすり替わり、「現状ではこのレベルのものが手一杯」という編集側の苦悩さえうかがえます。会議室と現場のギャップはまだまだ大きな隔たりがあるものです。