私たち新聞労働者の役割と責任も重い。発行本社へ正常化を直接訴え続けられるのは労組しかいない。社会の公器を標榜しながら、その一方で不当販売を繰り広げている業界に将来はないし、真のジャーナリズムが成り立つわけもない。「知らない。わからない。関係がない」ではいられない。私たち新聞産業の未来がかかっているのだ―(デーリー東北新聞社・深川公夫さんの寄稿より)
日本新聞労働組合連合(東海林智委員長 略称:新聞労連)の地方組織、新聞労連東北地方連合が結成50周年(2010年)を機に発行した記念誌。「週休2日制問題」、「ベア凍結春闘」、「印刷工場別会社問題」など、東北地連に加盟する労組が経験した問題を当時の組合役員10人が寄稿しています。どの寄稿も執筆者の顔を思い出しながら「懐かしい」と思える年齢になった私も「年表」作成のお手伝いをさせていただきました。
約200頁の大半が新聞産業関連の出来事をまとめた年表(1945年8月〜2010年5月)ですが、このように東北の新聞産業に特化する60余年の歴史をまとめた資料はほかにはないと思います。発行責任者の高橋一己さん(東奥日報労組)のご苦労が感じられます。
冒頭に引用した、「販売正常化運動『無関心ではいられない』」は、ぜひ若手のそして編集職場の方にはぜひ目を通していただきたい寄稿です。執筆された深川さんは1992年に東北地連販売正常化委員長を務められた方。仕事のスーパーマーケットと言われる新聞社では、特に編集部門などでは販売正常化問題がいまだに理解されない方が多いものです。そのような現状に警笛を鳴らされた内容でまとめられています。
もう少し引用すると、
販売正常化は複雑な問題が絡み合い、分かりづらい面が多々ある。ここで私たちが正常化しなければならないものが、実は3つあることをあらためて確認したい。
1つは大型景品など「拡材」の正常化だ。正常化イコール拡材のイメージがあるが、景品表示法改正により新聞価格の6か月の8%を超えない拡材であれば使用できる6・8ルールで、ひと昔前と比べればだいぶ沈静化してきた。しかし冒頭で述べたように一部地域ではいまだに出回っている。また「無代紙」も拡材と同じ性質で、やめなければならない。
2つ目は「部数」。いまや業界で最も難しい問題か。企業の法令順守が強化されなければならない時代、部数の透明化が求められている。いわゆる「押し紙」「積み紙」を無くすことは、無駄をなくし環境に配慮することにもつながるだろう。
3つ目は「売り方」の正常化。悪質な拡張団の一掃が必要だ。大手紙が中心の拡張団とはいえ、読者に直接向きあうセールスが悪質であれば大手も地方紙も同じで、新聞そのもののイメージを悪くし、読者の信頼を失うだけだ。(引用終わり)
ぜひ興味のある方は読んでいただきたい…と言っても、加入組合員向けの記念誌なので入手できないのか。うぅーんもったいない。全頁PDFにして希望者へ販売してもよいと思うのですが。