著作物再販売価格維持行為(以下、著作物再販制)の「当面存置」を公正取引委員会が発表した2001年3月23日から9年経過しました。この間、「当面存置」としたものの著作物再販制の弾力的な運用と価格設定の多様化など、各業界の進捗を監視することを目的に公取委が立ち上げた著作物再販協議会が毎年開催(09年は未開催)されてきたのですが、同協議会は10月25日に廃止されたようです。今後は公取委が直接、著作物再販制対象の3業種に直接ヒアリングすることになるのだとか…。日本新聞協会HPから引用します。
再販協議会の廃止を了承【販売委員会】
第540回販売委員会は11月18日、事務局会議室で開かれ、著作物再販協議会の廃止に関する報告を了承した。このほか、各地区新聞公正取引協議会委員長から、新聞週間中に街頭や大学で試読紙配布を実施したとの報告があった。
著作物再販協議会については10月25日、公正取引委員会から新聞協会に対し、協議会を廃止し、今後は毎年1回、新聞、書籍・雑誌、音楽用CDの3業種別にヒアリングを実施するとの申し出があった。
同協議会は2001年、著作物再販制度が当面存置となったことを受け、制度の弾力的運用の取り組み状況について意見交換するために公取委が設置した。新聞社からの会員2人のほか、出版・音楽CD業界の代表者、大学教授ら有識者、消費者団体代表などで構成し、08年まで毎年1回開催していた。しかし、景品表示法の所管が公取委から消費者庁に移管されることが閣議決定したことを受け、09年以降は開催を休止していた。
公取委は、今年度中に1回目のヒアリングを開きたいとしている。来月度の委員会までに、在京6紙と地方紙から各1人、計2人を出席者として決める。
この協議会は「著作物再販制の廃止を推進する学者や消費者団体のガス抜きの場」として公取委が立ち上げたという話が一部で囁かれていましたが、これまで8回の議事録を見ると、新聞側の答弁内容は著作物再販制の必要性をさらに補完するというよりも、産経新聞社などが時代の変化にあわせて「業界の既得権」を打ち破る動きが強まり、「牛歩」ながら規制緩和を推進せざるを得ない状況に進んできたと分析されます。
「10年サイクルで必ず公取委は再販問題を持ち出してくる」とは、山田健太氏・専修大准教授の弁。音楽用CDも書籍・雑誌もそのコンテンツがネット上で流通される時代にあって、公取委からすると著作物再販制全面廃止の障害は『新聞』だけなのでしょう。
今回の協議会廃止は、規制緩和の最終章として著作物再販制の廃止に動き出したのか、もしくは廃止せずとも販売や広告収入が大きく落ち込み苦境に立たされている新聞産業界を横目に、協議会運営という無駄な労力をかけなくなったのか…。どのような見極めを公取委はしているのでしょう。
以下に新聞労連産業政策研究会の第二期報告書「新聞2009 明日への道標」から、「著作物再販制度―新聞の流通・取引慣行の弊害是正について」から、著作物再販協議会に関する一部記述と資料を引用します。