2010年04月30日

当事者の発信を助け、つながる「個」のメディアへ

   放送メディア研究7.jpg
放送メディア研究 7
編集 日本放送協会放送文化研究所(丸善)1,800円


 本誌はNHK放送文化研究所が2003年から、「放送」を軸にさまざまなメディア環境の変化とその課題を毎年まとめたもので、今年3月10日発行分で7号(7年目)となるそうです。
 じつは当方、本誌の存在を知らなかったのですが、寺島英弥さん(河北新報社)から頂戴して「さずがはNHK。幅の広いメディア論を考察している方々を人選し、それぞれの論文をまとめているなぁ」という印象を持ちました。


 今号のテーマは「都市、地域、メディアの関係性を再考する」というもの。本文から引用すると、


 「地域再生」や「地域主権」「都市と地方の格差是正」などがキャッチフレーズとして叫ばれる中で、地域メディア(地域放送、地方紙、コミュニティメディア等)の存在意義、可能性がさまざまな形で問われている。しかし、そもそも地域とは何か、地方とは何なのか。急激に進んだ都市化と人々のライフスタイルの変化の中、その輪郭や実態は曖昧化・不明瞭化し続けている。本特集は、地方自治論、郊外論、社会関係資本論など諸分野の新しい知見をも踏まえながら、情報化、グローバル化が進む中で今も変貌を続ける都市と地方、そしてメディアの関係性を捉え直し、今後の「地域情報」「地域メディア」「地域放送」のあり方、可能性、課題を考察することを意図している。

 8人の識者へのインタ記事と論文、座談会で構成されていますが、メディアという大きなくくりの中で、新聞産業にも相通じるところは少なくありません。

 地域メディアの可能性への視軸として、前出の寺島さんが「地域で生きるジャーナリスト像とは」と題した論文を発表しています。
 新聞人は「つながるジャーナリズム」を、地方紙の役割は「地域支援NPO」を目指すこと。寺島さんの論考は地域で生活する人々のために存在するのが新聞であり、マスメディアの役割との視点でまとめられています。河北新報社の生活文化部で取り組んだ「雇用不安問題にNPOと協働」、「自死遺族の運動、全国に広がる」を通じて、シビック・ジャーナリズムを実践していく記者と当事者との関係は、その記事を読んだ私にとって「ひざを打つ」ことばかり。「情報リテラシー」をしっかり根付かせるためにも、書き手の側がどういう思いで発信したのかを掘り下げて解説してほしいと感じました。限られた紙面スペースですべてを伝えきることは難しいのかもしれませんが、「である調」の書き方だと特に「伝え手」の気持ちが伝わりづらいものです。

 さらに、昨年から取り組んでいる「SWITCH‐ONプロジェクト」にも触れ、これまでの軍隊方式に慣らされてきた新聞人と新聞(この表現は今だけ委員長の勝手な解釈)を変えるための「記者教育」の重要性とその活動が広がっていることへ期待を寄せています。寺島さんは論文のまとめとして、「地域の発信の主体とつながる担い手づくりへの提案」という8つの提言をされています。

1. 役割:記者には専門家としてのライセンスはない。購読料の有無に関わらず,地域に暮らす人々から,その個々の表現する権利,知る権利の実現を託され,あるいは手助けをする仕事と考える。それゆえ記者は,声あるところへ行き,当事者の語るもの(ナラティブ)を聴き,自ら調べ,声を地域や社会に「つなぐ」役割を有する。新聞を常に,多様な当事者に開かれた場とすることに努める。

2. 姿勢:権力をチェックし問題や不正を明らかにすることも,見えない存在であった当事者の声を地域につなぐことも,「草の根デモクラシーを強める」というジャーナリズムの仕事の同じ働きである。大切なのは,正義の強者となることではない。地域,社会には多様な人の声,多元的な価値観があり,記者の見方はその一つに過ぎないという事実,そして地域の人々から負託を受ける記者として何を質問すべきかという原点を,常に省みる姿勢である。

3. 倫理:記者の倫理は,市民としての(一個の人としての)倫理に同じ。市民にできなくて,記者にできることは,すべて特権である。市民のジャーナリストは何の特権をもたない。読者から負託された仕事という観点から,日常の「特権」を一つひとつ洗い直し,仕事の実現に必要で公正なものか,改めるべきものかを洗い直さなくてはならない。

4. 客観性:客観性とは,離れてながめることではない。記者は,被取材者に対し「わからない他者」であるとの自覚から出発する。発表やネットなどに流通する情報に頼らず,当事者の語るものから出発し,事実の多角的な調査と,執筆にあたってはあらゆる確認を行う。その過程における記者と当事者の議論,報道後の読者の評価と批判,当事者を交えた検証などを通した協働作業によって,客客観性は鍛え上げられる。

5. 署名:記者は,地域のさまざまな当事者の「生きた言葉」の伝え手である。記者自身も,「生きた言葉」を共有する書き手でなくてはならない。調べ,書いた者の責任と読者の信頼を担保するとともに,記事を通して記者を知り,発信の手助けを望む新たな当事者との出会い,つながりをつくるために署名は必要である。また署名を通して,新聞が記者の多様な意見を重んじ,開かれた場であることを示すことは,市民や専門家ら地域の書き手の発掘,参加にもつながる。

6. 責任:責任(responsibility)とは,向き合う相手の発する問いを受け止め,応答する(response)ことに始まる。記者は,読者からの負託に応える仕事であり,読者の疑問や批判,意見に応えることも仕事である。報道被害の取り返しのつかなさを常に自覚し,誤りの是正,当事者を交えた検証にも直ちに対応する。

7. 評価:報道への評価は,読者によって行われるべきもの。それを受け止める窓口となり,問題点を調べ,責任を持って編集の現場に改善を促す権限のある部署を設ける必要がある。それによって,新聞と読者の双方向のつながり,信頼を確かなものとできる。米国の新聞におけるオンブズマン,パブリック・エディターなどの仕事が範となる。

8. 教育:一人ひとりの記者が以上のような「つながるジャーナリズム」を実践するためにも,新聞は,それに必要な教育の仕組みを整える。記者たちが小さな成功と失敗を学び,異なる現場での実践と課題を知り,共有する議論の場を設ける。また大学や他のメディアなどとも連携し,自らの仕事と経験を見つめ直し,新聞のジャーナリズムを別の視点から議論し,協働を学べるような多様な人々との交流の場をつくる。


 このほか、ブログ「ガ島通信」を運営している藤代裕之さんや東海大学専任教授の水島久光さんの論文も興味深く拝見しました。ぜひご一読を。

posted by 今だけ委員長 at 07:36 | Comment(0) | TrackBack(0) | 書籍紹介

2010年04月22日

景気が悪くなると保守化する?

 おとといの楽天イーグルスvs千葉ロッテ戦は東京ドームの開催で4万人の観客を集めました。楽天イーグルスの主催ゲームが東京ドームで行われたのは言わずと知れた三木谷さん(楽天グループ社長)と渡邊恒雄(読売新聞グループ本社代表取締役会長・主筆)の関係によるものと言われています。
 逆にクリネックススタジアム宮城でジャイアンツ戦(交流試合以外で)が行われ、Y販売店は「G戦チケット」を大量に投入して読者獲得を…。まだまだYグループは衰えることを知りません。販売店などの下流部門はだいぶ疲弊していると聞きますが、ナベツネさんの目が黒いうちは1千万部は割れないのでしょう。

 ともあれ、読売グループの総帥として君臨するナベツネさん。「2009年度の経営状況は広告収入の落ち込みで減収したが、一切借金がないので経営は安泰だ」と豪語するほど、グループ経営は盤石なのかもしれません。人間って経済的に余裕が出てくると天下国家に口を出したがるのでしょうね。政治記者の出身となればなおさらメディアを使って、自分の主張を推し進めようとするもの。ナベツネさんもその一人。
 2004年に読売新聞が憲法改正試案を打ち出したあたりから、ほかの新聞社(新聞社系出版物)へ露出し始めたと感じています。
 2006年1月5日に刊行された論座(朝日新聞社:2008年10月廃刊)では、若宮啓文・『朝日新聞』論説委員と靖国神社への首相参拝を非難する内容の対談が特集されました。同じ年の12月からは日本経済新聞の人気コーナー「私の履歴書」で軍隊の不条理に怒り戦後は共産党に入ったことなど、学生からの新聞記者時代までの半生を執筆しています。

 単なる露出狂なのか、戦国の武将のような戦術家なのか、はたまたルパート・マードックのようなメディア王に化けるのか…。(ナベツネさん1926年生まれの84歳、マードック氏1931年生まれの79歳)なんだかんだ言ってもこのお爺ちゃん世代がいまだに権限を持ち、トップセールスをしているもの確かだということですね。がんばらなきゃ!

サンデー毎日.jpg 先日も読売新聞の半三段広告(12段組みなので)にサンデー毎日の広告が載っているので、「おやっ」と思って目を凝らしたら、同誌4月25日号に中曽根康弘大勲位vs.渡辺恒雄読売新聞主筆「鳩山、谷垣にできるか…参院選後は大連立だ」との対談が掲載されているからと納得しましたが、やっぱり毎日にナベツネさんが掲載されているのに違和感を覚えるのは私だけかなぁ。「こんな時代に広告もらえるだけイイじゃないか」と怒られそうですね。

 以前、新聞労連の就活セミナーを開催した際に、「どうしても毎日新聞社に入りたい」と目を輝かせていた女学生のことを思い出しました。労働条件面を考えれば、ほかの全国紙や通信社を目指した方がよいのではないかとのアドバイスを聞き入れず、「子供のころから毎日新聞の論調が好きで、親の代からずっと毎日を読んでいるから思い入れがあるのです」と彼女。見事入社を果たしました。
 毎日新聞社は自由闊達な職場だと多くの先輩から伝え聞いているものの、現状はどうなのかなぁ。

 田原総一朗氏が「田原総一朗ニッポン大改革」(現代ビジネス)で、マスコミが弱まっている原因として景気低迷をあげ「企業というのは景気が悪いと保守化するんです。元気がなくなるんです。乱暴なことはするな、余計なことはするなって話しになる」と自身のブログで述べています。新聞社の経営が困難になると人員合理化が進み、取材態勢を縮小して共同通信の配信に頼らざるを得ないのが、毎日新聞のいまある姿です。
 新聞社の主張に差異が無くなり、総保守化しているとなると、毎日新聞の論調が好きで入社した女学生は今どういう思いで仕事をしているのだろうと思いふけってしまいます。

▽なぜ新聞社はツイッターを恐れるのか(田原総一朗ニッポン大改革)
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/460?page=3
posted by 今だけ委員長 at 21:57 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2010年04月19日

新聞試読紙の期間制限が削除

 ちょっと遅ネタですが、新聞事業者が自ら共同で定めた自主規制ルール、公正競争規約(施行規則)が3月15日、一部改正されました。
公正競争規約施行規則 新旧対照表.jpg 今回の改正は「戸別配布の方法による試読紙配布ルール」と「懸賞企画の当選者氏名公表ルール」に関するもので、消費者庁および公正取引委員会から承認され、同日から施行されています。改正内容は「戸別配布の方法による試読紙配布ルール」のうち、試読紙配布件数が定数日をまたがないように設けていた「1カ月につき10日から20日までの間」との期間制限を撤廃しました。「1カ月につき7回を限度に配布するもの」というルールに変わり、「1カ月につき」とは、暦の1カ月に限らないということになったわけです。


 昨年9月のエントリーでも試読紙の期間制限の撤廃へ懸念を表しましたが、月をまたぐ試読紙配布が多くなると定数のカウント自体が「試読紙の上げ底」に乗る格好になると懸念され、実配部数(定期購読をしている読者)が曖昧になる可能性があります。
▽関西7社販売局長共同声明に見る正常販売の本気度
http://minihanroblog.seesaa.net/archives/20090929-1.html


 「押し紙」を切ることができないため、巧妙な理屈をつけて「押し紙」の行き先をつくり部数の正当性を主張する新聞社も少なくありません。ビジネスホテルへほぼ無償で客室数以上の新聞を納品したり、ファミレスのレジ脇へいわゆる「棚借り」をしたりして配達先を確保します。いったんはその納品先に大きな単位の部数を買い取ってもらい、その代金をそっくりそのまま「PR奨励金」との名目でキャッシュバックするなどのテクニックを使って「押し紙」をなきものにしようと新聞の納品先と代金を迂回させる事例も増えてきました。このようなテクニックは、行き着くところ新聞の価値を下げるだけでしかないのですが…。


 いまの新聞販売現場は新規契約を取るのにとても苦労していますが、それどころか試読紙の申し込みを得ることも難しくなっています。「タダなのだから読者はいやとは言わないだろう」と思っているのは現場を知らない人たちの意見で、新聞を読んでいない人たちからすれば「タダで新聞を届けてくれるの?後から代金を請求されるのでは」といった警戒する人たちも増えています。特に大学生の方々は。逆に定期購読する気もなく試読紙を申し込んで1カ月タダの新聞を読み続ける人たちも増えているような気がします。常習の人はきちんと話をして配達しませんけどね。

 これまでの新聞販売手法に嫌気をさしている読者は、残念なことに新聞そのものと距離を置くようになっていると感じるこの頃です。


【お知らせ】
 新聞公正取引協議会が隔月で発行してきた「中央協だより」が、季刊(年4回)となりました。ネットを活用した情報発信をすることもなく、関西地区や福岡・山口地区でも販売正常化が取り組まれているだけに、販売現場の情報発信の頻度が少なくなるのはちょっと残念です。

資料:中央協読者調査
   中央協読者調査@.jpg  中央協読者調査A.jpg

posted by 今だけ委員長 at 23:23 | Comment(1) | TrackBack(0) | 日記

2010年04月16日

今度はYが新聞輸送との契約を打ち切り 軽んじられる仕事などありゃしない

 「さらば新聞輸送列車」がちょっとした話題になりましたが、JR東日本の東京(両国)から千葉への新聞配送が3月12日で終了したというアナログなネタから1カ月後の4月12日には、朝日新聞社の新聞配送車両をパナソニックが製品やサービス部品の輸送に活用することが発表されるなど新聞輸送界もあわただしく動いています。
 合理化や新たな業務展開は、新聞社間の印刷部門の相互受託だけに限らず輸送部門にも波及してきているのです。


 以前、エントリーした「印刷部門の別会社化に次ぐリストラ策は大手輸送会社切り替えによるコストダウン」の時は、出資会社の毎日新聞が新聞輸送会社との契約を打ち切り、入札制による輸送コストの切り下げを要求。東京一般労組に加盟する新聞輸送従業員組合と毎日新聞社との間で争議が起こるという事態になりました。

 あれから2年。今度は毎日新聞に続き、読売新聞も新聞輸送会社との契約を打ち切るというのです。読売新聞から新聞輸送会社へ支払われる輸送代はざっと見積もって年間4億弱。残る朝日新聞と日経新聞、東京新聞(中日新聞)の輸送代では(新聞輸送会社の従業員の)現行の労働条件の維持は難しいと思われます。
 「新聞輸送会社は新聞社が設立した経緯から、高コスト体質が問題点として指摘されており、年収1千万円を超す従業員も結構いる」という話が伝わってきますが、「輸送会社の従業員が年収1千万円で何が悪い!」と憤りつつ、新聞社の経営が行き詰まりを見せるなか、下流部門の経費削減を強硬に推し進めて“新聞社に勤める人たちの賃金を守ろう”という流れが、なりふり構わず行われていると感じます。

 印刷や輸送部門が新聞社から切り分けられて、別会社化にシフトされ始めてから15年くらいたつでしょうか。輸送会社によるコンペ方式で輸送料金の安いところと提携する新聞社がこぞって出てくるかもしれません。販売店からすると、店着時間が10分遅れると配達作業はその3倍の30分遅れるので、「早く、確実」な輸送業務は重要な問題です。

 「ただ運びさえすればいい」。新聞輸送はそんな軽んじられる仕事ではない。そう思っています。

▽さよなら新聞輸送列車---トラックに転換

http://response.jp/article/2010/03/12/137605.html
▽新聞配送網を活用した低公害車による共同配送を実施
http://www.asahi.com/shimbun/release/20100412.html
▽印刷部門の別会社化に次ぐリストラ策は大手輸送会社切り替えによるコストダウン
http://minihanroblog.seesaa.net/article/90018364.html

posted by 今だけ委員長 at 23:21 | Comment(4) | TrackBack(0) | 日記

2010年04月09日

流通部門を統合させ通信社化する新聞社

 全国紙と地方紙による印刷委託・受託が加速しています。
 今回は新潟日報に続き、北日本新聞社が読売新聞が富山、石川の両県で発行する新聞印刷を来年4月からスタートするというもの。
 北陸地方は冬場の豪雪などで新聞輸送の効率も悪いことから、「印刷、輸送、販売店」の流通工程の提携も視野に入れて取り組まれるようです。
 新聞産業の流通部門の統合がいよいよ本格化してきました。


▽北日本に印刷委託 読売新聞の富山・石川向け
 読売新聞東京本社(老川祥一社長)と北日本新聞社(河合隆社長)は、富山・石川両県内で配達している読売新聞朝夕刊の全部数を、北日本新聞社の印刷工場「創造の森 越中座」(富山市)で印刷することで基本合意し、6日、都内で両社長が合意書に調印した。朝刊約10万4千部、夕刊約5千部を来年4月から印刷を始める。富山県内の輸送協力についても今後、具体的な協議に入る。今回の委託・受託印刷は、読売にとって印刷体制の安定化とカラー紙面の充実による読者サービスの向上につながる。北日本にとっては、生産設備の有効活用が図れるメリットがある。(新聞情報 4月9日付)
 これまで富山・石川両県内の読売新聞の現地印刷は。96年から読売新聞東京本社が100%出資する「北陸オール印刷」(富山県高岡市)していますが、輪転機が1セットのみでトラブル発生時の不安を抱えていたこととあわせて、稼働から14年たった輪転機の更新も近づいていたことも印刷委託に踏み切った理由だと思われます。
 北日本新聞も4年前に48頁40個面カラーが可能な最新の輪転機を2セット投入したばかりで、昨年から夕刊を廃止した北日本新聞としては輪転機の稼働率をあげたいことろ。両社の思惑がピッタンコだったのでしょう。

 輪転機の更新時期にあわせて、印刷の委託・受託が行われてくることになると、新聞社だけでなく印刷会社(凸版やDNP)も含めた共同出資の印刷センター構想も浮上してきそうです。もちろん販売部門(宅配部門)にも同様のことが
起きてくるはずです。
 「新聞紙」を印刷・宅配して、読者から購読料を得ることで成り立ってきた新聞産業のビジネスモデルの流通部門が統合し、新聞社がニュース記事を取材、配信する「通信社化」していくのだろうと、あらためて思います。

posted by 今だけ委員長 at 22:43 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時事ニュース

2010年04月08日

新年度でさらに加速する「編・販」業務提携

 新年度を迎えて新聞業界も編集・販売とも『業務提携』の動きが活発になっています。

 編集系では、朝日と読売が鹿児島県内の一部地域で記事相互配信に取り組むとのこと。

▽朝日と読売、記事相互配信 鹿児島県内一部地域で
 朝日新聞と読売新聞は3月31日、鹿児島県内の一部地域で、記事や写真などを相互に有料で配信することで合意したと発表した。地域取材網の強化と紙面の充実が目的。4月1日制作分から配信を始めた。対象地域は、朝日新聞鹿児島総局霧島支局管内の霧島市、伊佐市、姶良市、湧水町と、読売新聞鹿児島支局指宿通信部管内の指宿市、枕崎市、南さつま市、南九州市。記事は対象地域内の自治体が発表したもの、行事、話題もの、季節の写真ものなどに限る。掲載時は原則として「朝日読売地域取材特約」と記して、読者に配信記事と分かるようにする。両社は今回の連携について、対象地域内を含めて双方の独自取材を妨げるものではなく、紙面づくりの競争はこれまで通り続けるとしている(文化通信 4月5日付)
 取材拠点および人員体制の縮小化によって、販管費を抑え経営効率を高めようとの業務提携は、発表ものや季節の写真までとはいえ、朝日と読売の紙面に同じ記事が掲載されるという時代になってきました。新聞社の通信社化が進み、共同通信配信の地方紙と相互配信の全国紙という題字は違えど大きく分けて「2種類の新聞」という構図になっていくのかなぁとも感じます。

 販売系では、ANYではなく朝、毎、日経の3系統が神戸市内で共同配達に取り組むとのこと。京阪神地区の販売正常化の動きが加速したものと業界内では受け止められているようですが…。

▽朝、毎、日経が共同配達
 朝日新聞神戸販売、神戸毎日舎、日経神戸中央販売は3月17日、神戸市中央区の三宮、元町、ポートアイランド地区で、共同配達を行うことで合意した。
全国紙連合による共同配達の提携は、販売正常化時代の新聞販売のモデルケースとなる。共同配達は4月下旬にまずポートアイランド地区で始め、その後、三宮、元町地区へと順次拡大する。ポートアイランド地区は神戸毎日舎が受け持ち、三宮と元町は、朝日新聞神戸販売と日経神戸中央販売と神戸毎日舎がそれぞれ分担する。対象部数は3地区で合計約1万3千部の予定。委託店は受託店に対し、部当たりの配達委託料を払う。共同配達は、配達経費や店舗経費を削減することが目的。経営の効率化を図り、戸別配達網の維持・強化を目指す。また、互いに正常販売を順守し、共同ポスティングなど販売促進面での提携も進め、新聞事業のさらなる発展を目指す(新聞情報 3月24日付)
 3つの販売会社のうち、2社の経営者が同じであることから業務提携が進んだと思われますが、今だけ委員長がこの業界に入った20年前から浮上していた「配達の効率化」がやっと実現してきたのかなぁという気がしています。
 販売店間では共同配達を促進したいけれども、一番ネックになるのが発行本社の担当員だったりします。専売店政策下では「部数を増やすこと」以外に経営改善の道はないわけです。片務契約の問題でもありますが、販売エリアを限定される新聞特殊指定とも関係しています。

 あとは、即売の4月値上げも3社が実施しました。
 神奈川新聞、山陽新聞、函館新聞が1部売り定価を20円引き上げ、それぞれ神奈川(120円)、山陽(130円)、函館(100円)となりました。少しでも増収を図りたい気持ちは分かりますが、即売は昨年秋頃から相当な勢いで下落しています。値上げによる販売不振ではないと思いますが…。
posted by 今だけ委員長 at 23:01 | Comment(3) | TrackBack(0) | 時事ニュース

2010年04月06日

新聞をヨム日に考える 営業の基本はフェース・トゥ・フェース?

 きょう4月6日は新聞を「ヨム日」。全国各地でいろいろな活動が繰り広げられたようです。
 街頭で試読紙やパンフレットを配ったり、PR紙をポスティングしたり…だいぶマンネリ化している感もありますが、
日本新聞協会の音頭によって各系統の枠を超えて新聞購読のPRをする共同作業は悪くはありません。でも生活者(特にターゲットとする無購読の新社会人や大学生)からはどのように映っているのか検証する必要があると思います。


毎年4月6日から12日までの1週間を「春の新聞週間」、その初日の4月6日を「新聞をヨム日」として、無購読者に新聞の購読を呼びかける活動を集中的に展開しています。
2003年春から実施しているもので、全国各地でポスターやチラシによるPRのほか、試読紙の街頭配布キャンペーンやPRイベントなどが行われています。09年からは新聞の魅力を伝えるキャンペーンサイト、「見えないものが観えてくる。-新自聞スタイル-」(

http://www.readme-press.com/46/)を開設しました。(日本新聞協会HPより)
 春の新聞週間は、若年層の無購読化が進んでいることへの対策として、新たに世帯主(単身生活)となる新社会人や大学生へ新聞購読を浸透させるという目的で取り組まれました。スタート当初は大学入学式の出入り口で購読パンフレットを手渡したり、新入社員研修期間に教材として試読紙を人数分届けたりしていましたが、レスポンスはかなり低く徐々にそのようなPR的な取り組みもその規模を縮小させています。
 昨年からはIT企業の社長を登用して「新聞を読むことの価値」を全面的にPRしたサイトをスタートし、「
HAPPY NEWS」でも竜馬伝でおなじみ福山雅治さんのインタビューを掲載するなど、若年層受けしそうなコンテンツを打ち出しています。

 でも申込件数(返還率)は相当に悪い。というか、ターゲットにしている世代が月々の購読料を払ってまで新聞を購読する価値に足りていないと考えているのです。加えて業界側も新聞を購読することのメリットが提供しきれていないのも事実。販売する側にとってはここが悩ましい問題です。
 金融機関では新入社員に「日経は必ず購読するように」と指示が出されるようですが、同じように提携企業からの(新入社員の)読者紹介も相当なもので、「お付き合い」の文化もすてたものではありません。ですが、この不況で提携企業との関係も希薄になりつつあり、これまでのような「お付き合い」も難しくなっています。こちらも削れば、向こうからも削られるという当たり前の理屈です。


 販売の原点は「フェース・トゥ・フェース」であるならば、敬遠されがちな各戸訪問セールスの手法(イメージ)を一新させることと、大学や企業に入り込んで講座や社員研修などをパッケージ化させて新聞営業を展開するかしかないのかなぁと思っています。あくまでも「紙」にこだわるとですが…。


newsworker 購読層の世代交代の問題が深刻かと。今新聞を読んでいない若年層が将来は購読するか、の問題です。
fujisiro やれば出来るんですよ。僕が徳島新聞でやったように、でもやりたくないだけ。
hamasan63 購読しません。その前提で何の手も打ってないのが空恐ろしい。 
Tokyo_Wave 今の20、30代の生活時間内の許容文字量は「R25」の薄さが限界だそうです。創刊メンバーに聞いたことがあります。広告はもっと入るが敢えて抑えてると。
【追記】4月7日22:40
husaosan 申し訳ありませんが、紙のみで考えるのはやはりもう破綻してると思ってます。取材コンテンツを形にこだわらず届けることを本業としないと新聞業界は生き残れない。販売の現場をどうするかは、また別に考えないといけない。そこを同じでやろうとするので思考停止してしまうと思っています。ニュースを朝のリビングに届けるためのデバイスは発売されましたし、新聞紙を購読する人は、遠く近い未来にはいなくなると思います。でも新聞読者はまだいます。みんなポータルから読んでますし。そこをどうビジネスとしてなりたたせるかに注力する時代になってしまったんだと思います。販売の現場を無視と言われると辛いのですが、そこは別に議論すべきかと。  (ツイッターの書き込みより)

 購読しません。と断言されると“うわっ”とポジティブでいられなくなってしまいますが、もしかすると、その前提(若年層は紙新聞を読まないという)で手を打つことを考えることすら禁句になっていることの方が、新聞経営の危険なところのように感じます。

追伸:4月の異動で古巣の営業部門へ戻りました。今後ともご指導いただければと存じます。

posted by 今だけ委員長 at 23:21 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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