2010年03月26日

Tポイントは換金システムよりも広告プロモーションに期待

 今だけ委員長のケータイとPCのメルアドには1日平均20件程度のメルマガが送られてきます。もちろん新聞社系のものが多いのですが、きのう毎日新聞の「まいまいクラブ」から送られてきたメルマガには、4月から共同通信との提携することや「Tポイントサービス(購読料のポイント加算)」を開始することなどの告知がありました。(以下に引用)


【まいまいクラブ、リニューアルのお知らせ】
 日頃は毎日新聞をご愛読いただき、ありがとうございます。また、まいまいクラブの活動をご支援いただいていることに感謝いたします。
 毎日新聞社は、4月より、新聞業界に先駆けてさまざまな新しい取り組みに挑戦します。共同通信との提携や、地方紙との協力体制の構築で、紙面のより一層の充実を図るとともに、今月23日から、ご愛読いただいている読者の方を対象に「Tポイントサービス」を新たに開始しました。https://www.mainichi-hanbai.jp/tpoint/

それに伴い、愛読者組織であるまいまいクラブの活動をさらに発展させるため、リニューアルの計画を進めております。
 つきましては、4月から当面の間、従来の活動や提供サービスの一部を変更させていただきます。プレゼント企画や、ツイッターは従来通り続けます。個別の活動については、該当のコーナーをご覧ください。メールマガジンにつきましては、不定期発行となりますことをご了承ください。
 まいまいクラブ会員の皆様にはご迷惑をおかけしますが、事情をご斟酌のうえ、なにとぞご容赦ください。また、今後の予定につきましては随時、ウェブサイト、紙面、メールマガジンなどでお知らせいたします。今後の毎日新聞、およびまいまいクラブにどうぞご期待ください。

 今回注目したいのは「Tポイントサービス」の導入について。
 業界紙から引用すると「毎日新聞社は4月1日から、毎日新聞の定期購読者に対し、買い物などで利用できるTポイントの付与サービスを始める。Tポイントは同社と業務提携するカルチャ・コンビニエンス・クラブ(CCC)が運営する国内最大級のポイントサービス。加盟約60社の約3万店舗で、支払額に応じてポイントがたまり、それを1ポイント1円として代金に使えるもので、今回は、朝夕刊配達地域で39ポイント、その他の地域で30ポイントを付与する。日本の新聞社で、読者に本格的なポイントサービスを導入するのは初めて」(新聞情報 3月17日付)

 これまでは、購読料の支払いをカード決済にした場合にそれぞれのカード会社の換金率でポイントが加算されるというものでしたが、ビデオCDレンタルのTSUTAYAを事業の柱とするCCCが展開する広告プロモーションに絡めたポイント換金システム(Tポイント)のグループに毎日新聞社が加わったということです。

 さらに毎日新聞社はTポイントなどの読者情報を販売店と共有するシステム構築を急いでいるそうです。システムの名称は「えぽっくシステム」。ネット上で発行本社と販売店、関係会社との間で情報のやり取りができるネットワークで、4月に都内と大阪の毎日専売店3店程度に導入し、5月から本格稼働するとのことです。販売店は発行本社の販売管理部への登録が必要で、料金は管理費として月額1000円程度かかる見込み。


 新規読者獲得より現読者維持に経費を振り向ける。普通に考えれば当然のことですが、「部数を伸ばすこと」のみを販売政策に据えてきた新聞業界にとっては、今になって顧客ロイヤルティを高める必要性が浸透してきたのでしょう。遅すぎますけど、毎日新聞は早いほうなのかなぁ。

 
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2010年03月25日

新聞人は「何を」守るために新聞を発行し続けるのか

 今週初めに「某中堅地方紙が7月から夕刊を廃止する」という情報が入ってきました。
 完全セット版で発行をしてきた新聞社だけにいろいろ感慨深いものがありますが、人件費の維持と夕刊発行の維持を天秤にかけた場合、新聞人はどう考えるのでしょうか。

 確かに近年の広告や販売収入の落ち込みによって、これまでのような経営(販管費の維持)ができなくなってきているのは周知の通りです。「夕刊は広告が入らなければ発行するだけ赤字」と聞いたことがありますが、これまでのような経営ができなくなったから、夕刊媒体とそのインフラ(宅配網)をやめるというのはどうなのかなぁという気がします。


 新聞離れについて多くの方がネットの影響だとか、記事の質が低下しているからなどと評していますが、私は習慣性という見方で新聞(夕刊)離れを考えてみたいと思います。

日曜夕刊廃止運動の歴史「小休符があるからいい音楽ができる」 今だけ委員長ブログより
 現在のような情報産業が発展していない時期、新聞は市民への情報伝達に欠かせないものだった。現在は日曜・祝日、そして年末年始にかけて休刊になる夕刊だが、日刊紙の夕刊は1965年頃までは日曜日も発行され、販売店従業員はそれこそ362日(当時の夕刊休刊日は元旦、こどもの日、秋分の日の3日間)朝も昼も新聞の配達をしていた。
 日曜夕刊廃止については、新聞販売店従業員の葛藤もあった。「新聞というのは社会の公器。休まないところに新聞の意義があり、われわれは一般社会人とは違って特殊な仕事をしているという“誇り”を持って頑張らなければいけない」と言い聞かせて、当時の新聞奨学生なども学業との両立を寝る時間を割きながら配達業務に従事していた。しかし、時代は高度経済成長に後押しされ、週休制が浸透、日曜日には「本日休業」という札をぶらさげる商店が当たり前になってきた。そこで週休制を一挙に実現することは難しいから、せめて日曜日の夕刊ぐらいは休刊にして欲しいという運動が、東京組合から各地の新聞販売店へと拡大して行った。新聞協会や新聞社への要請行動の始まりである。

 1965年4月から、新聞協会加盟の40社が日曜夕刊を休刊することになったのですが、これを機に朝刊の休刊日も増えていきました。夕刊だけではなく新聞そのものを読むという習慣は新聞休刊日と社会環境の変化(24時間ローテーション職場の登場などでライフスタイルが激変)と相まって、出勤前に朝刊を読み、帰宅したら夕刊に目を通すという習慣性を薄めてきたとも考えられます。
 そして今はいつでも最新の情報が入手できるネット社会が形成され、自ら全世界に向かって発信できるツールを持てる時代です。決まった時間に宅配され新聞に目を通すという行為を当たり前だと思う人が残念ながら少なくなっているのです。その習慣が崩れれば新聞社(プリントメディアを提供する)のビジネスモデルも崩壊するわけです。

 「採算が合わないから夕刊を廃止」。それは延命手段であって新聞経営(ビジネス)の根本的な改善にはつながらないのではないかと感じます。

 米系投資銀行に勤務する藤沢数希さんのブログ「金融日記」の3月24日付けエントリー「日本にはマスメディアの危機なんてない。あるのは社員の高すぎる給料だけだ」をぜひ新聞人には読んでもらいたいと思います。自身も反論は山ほどありますが、いろいろと考えさせられました。
 今回の夕刊廃止の話題は、「新聞人の生活レベルを守るために夕刊を犠牲にした」と解されるかもしれません。新聞人は「何を」守るために新聞を発行し続けるのかをじっくり考え直す必要があると思います。

▽藤沢数希ブログ「金融日記」
http://blog.livedoor.jp/kazu_fujisawa/archives/51672231.html

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2010年03月22日

不完全燃焼だったNスペ「激震マスメディア」

 NHKスペシャル「激震 マスメディア 〜テレビ・新聞の未来〜」をアルコール抜きで見ました。今日3月22日は放送記念日ということで、マスメディアの特集が組まれたとのことです。
 職場の「アンダー50」な方々にも「必見!」なんてメールを送りましたが、正直見なくてもよかったなぁという感じです。あした「ゴメンナサイ!」と言わなくてはいけませんねこりゃ。

 正直、いまのマスメディアの限界(ネタの扱い方)を感じました。パネラーの議論も佐々木俊尚さん以外は理論的に崩壊してましたね(笑)
 あの年代(マスメディア代表の内山さん・広瀬さん)の方々に川上さん(ドワンゴ会長)の意見を理解できるはずがないと思った方が自然なのかもしれません。ツイッターhttp://search.twitter.com/search?q=%23nhk_media0322
)での書き込みもざっと読みましたが、イマイチ不完全燃焼といった意見がほとんどでした。メモった意見(番組でテロップに流れた)としては、「いまのマスメディアはジャーナリズムではなく、コマーシャリズムになっている」というのと、「いまの現状(米メディアの倒産など)を騒いでいるのはマスコミに働いている人だけで、普通の生活者にはそんなの関係ありません」との厳しい意見…なるほど。
 現場の記者の皆さんはそう思っていなくても、別の世界(ネットの側?)の人たちだけではなく複数の方がそう感じているということも押さえておきたいところです。

 番組の最後に、司会の藤沢秀敏さん(NHK解説委員長)がムリくりまとめてましたが、(仕方ありませんが)どっちつかずのまとめが余計に視聴者の消化不良を増長してしまったと感じます。
 自分なりの感想は、新聞、テレビのマスメディアであろうが、ネット言論だろうが、重要なのは情報の質だと思います。その情報をすくい上げるのは、それを生業にしている人たち(ジャーナリストの免許ありませんから)だけではなくなっているので“もっと頑張らなきゃ”ということ。そして、メディアの定義はそういった情報がしっかりと人に届くシステムであるはずだと思うのです。

 まぁ番組の冒頭にも登場したガ島通信を運営する藤代裕之さんの「ネット社会では、これまでマスメディアが報じてこなかったことも明かされていくようになる」というひと言に集約された番組でした。
 ガンバレ〜新聞!(他人事ではありませんが)


※「激震マスメディア」再放送は3/29日(月)午前2:05〜の予定。


※3月22日は放送記念日(ほうそうきねんび):NHK1943年に制定した記念日
NHK東京放送センターの前身である東京中央放送局(JOAK)が、1925年3月22日に東京都港区芝浦の仮送信所でラジオの仮放送を開始したことを記念して制定された。

【追記】
佐藤尚之さん(電通)のNスペの読み解き方は参考になります。「個人の人生」と「社会での老い方」の違い―――とても興味深い。
▽昨晩のNHK「激震マスメディア」を見ながらボンヤリ考えてたこと(さとなお.com)
http://www.satonao.com/archives/2010/03/nhk_1.html
posted by 今だけ委員長 at 23:57 | Comment(4) | TrackBack(0) | 日記

2010年03月16日

朝日の即売値上げは5月に延期…?

 「新聞情報」からの引用で、4月から朝日新聞が1部売りを現在の130円から、20円引き上げて150円に値上げするというエントリーを書きましたが、5月からに延期されるとの情報が入りました。先のエントリーの値上げ時期を「4月から」を「5月から」へ訂正します。

 もうひとつ朝日新聞に関するネタですが、2月のABC部数で朝日が800万部を割ったことが速報されました。
 朝日新聞社販売担当で中央協委員長を務める飯田真也氏を中心に、販売正常化を推進する動きを強めている朝日新聞。産経新聞と同様に部数整理のタイミングを図っていたのかもしれません。朝日新聞では昨年末に販売店(ASA)との取引契約を新たに見直し、発行本社と販売店の権利と義務を明確化すると発表したばかり。
 「朝日新聞MEDIA DATA 2010」の公称部数が803万1579部ですから、2009年1〜6月平均部数から半年経過して3万部強(▲3.75%)の減紙。通常の企業で考えれば「その程度の浮き沈み」と取られるかもしれませんが、新聞業界は「創刊何周年」などの記念年に「何百万部達成」といった会社の歴史のようなものを背負っているものです。もちろんですが広告費(段単価)の価格設定の問題もあるため、定着した部数の御旗を取り下げることはそう簡単なことではありません。読売もナベツネさんがいるうちは1000万部を割れないのではないかと思います。

 押し紙によってかさ上げしてきた部数を正常化(適正化)できるのは、正直なところ経営者の判断しかありません。配達されることのない新聞をビジネスホテルやファミレスへ無償で提供して、あたかも配達先があるように見せかけて公称部数を守ろうとする販売政策では立ち行かなくなっていくのは当然のことです。
 顧客ロイヤルティをあげていくためにも新聞には「信頼」が一番大切なのだと思います。これは紙面だけではなく、売り方も同じことなのです。

 最近の業界の動きを見ていると、週刊ダイヤモンドで連載中の「ザ・メディア」に何となく近づいているように感じます。
posted by 今だけ委員長 at 19:42 | Comment(4) | TrackBack(0) | 時事ニュース

マスメディアは読者や視聴者からの「声」に感謝してるのか?

 先のエントリー「日経初の赤字 赤字決算できるだけましかも…」(3月13日)に対して、日本経済新聞社出身で日本広告学会常任理事の森内豊四さんからメールをいただきました。
 以前、日本経済新聞社の経営分析をした時のイメージ(超優良企業)が残っていたので、輪転機購入等の設備投資による借金によって赤字を計上できない新聞社(関連企業)の苦悩を表すために、「ANY連合は安泰」と書いたのですが実際はそうではないという指摘です。以下に引用します。


 「日経が初の赤字」に関し、「資産が潤沢」、「無借金体質」は、朝日・読売はいざ知らず、日経に関する限りは当てはまりません。
 過去に日経は毎年200億円以上の黒字を生み、新聞社のなかで一番業績が良かった時期がありました。その時でも銀行からの借入金は1,000億円を超えていました。
 以前にも申し上げたと思いますが、全社員、一部のOBで全株を所有している日経は、利益が出ると社員、株主で山分けしてきました。印刷設備をはじめ、投資資金は銀行からの借入れを誰も疑いませんでした。オーナー経営者のいない民主的企業の欠陥はそのまま日経に当てはまります。


 昨年秋、朝毎読および電通・博報堂の昔の仲間と会合を持った時、新聞社の経営悪化が当然話題となりました。その時、朝日OBが言ったのは、「朝日は全国すべての県庁所在地の一等地に自社ビルを持っている、それを少しずつ売っていけば、あと数10年はやっていける」というものでした。
 プロ野球団を持っている読売もそうでしょう。毎日もまだ名古屋と大阪でのビル経営で新聞事業の赤字を埋めることができそうです。そういう資産が一番ないのは実は日経なのです。


 業界の大先輩として新聞産業のあり方、特に経営問題については客観的、中立的な論点を指摘してくれる森内さんには感謝するばかりです。


 ブログをやっていて感じるのは、やはりこのようなインタラクティブ(双方向性)機能によっていろいろなことを発見できることです。(小ブログを除いて)個人ブログの質も高まってきており、「今日のランチ」ネタから「メディア報道を客観視して真実を問いかける」内容のものも増え、そのコミュニティも徐々に広がりつつあります。
 既存マスメディアの方からすれば、「情報の二次使用なのに自分で取材したような書き方するな」とか「ウラも取っていないのにネットへ掲載するとは何事だ」という批判も少なくないはず。まだ情報発信の雄は「新聞」であると思っていますが、個人ブログの発信によって各マスメディアの解説を論じるカタチができあがってきたのだと感じます。その多くのブロガーたちは新聞を中心にしたマスコミへの叱咤激励とばかりに“けちょんけちょん”に書きたてる節が目立つのですが、そのようなネット内で形成された意見を無視するのではなく、読者からの「声」として耳を傾けてはどうでしょうか?


 ブログの書き手は、読んだ方からの「コメント」が一番うれしいものです。そのコメントに賛否があるのは当然のこと。新聞人も読者からのコメントはありがたいと思うのですが、どうでしょう。コメントが来なくなったらそれこそオワリだと思うのです。

posted by 今だけ委員長 at 07:58 | Comment(2) | TrackBack(0) | 日記

2010年03月15日

朝日が1部売りを20円値上げ

 日本経済新聞社が今年1月から1部売り価格を20円値上げしましたが、朝日新聞社も4月5月から値上げに踏み切るようです。


 朝日新聞社は4月1日から、1部売り価格を20円値上げし、150円とする。夕刊は値上げしない。近く、関係者に説明する。今年1月1日の日本経済新聞の朝夕刊20円値上げに続くもので、朝日の即売価格の改定は2000年の20円値上げ以来。
 神奈川新聞社も4月1日から、朝刊1部売り価格を16年3カ月ぶりに値上げし、100円から120円にする。同社はこの間、3度(うち、1回は消費税率アップ)、月決め購読料を値上げしたが、1部売り価格は据え置いてきた。(新聞情報3月10日付)

 スポーツ紙を中心に即売が売上不振にあえいでいるわけですが、今回の値上げが収益拡大策になるかどうか注目したいところです。日経は即売部数が多いので増収の可能性もありますが、朝日はどうなのかな?(たまたま同時期に神奈川新聞も20円値上げするそうです)

 確かにページ数で見れば各社が減ページをしているなか、朝日は「be」等の特集も多くページ数を維持しているので、原材料費(広告でペイできているとは思えない)はあまり減っていないと思われます。


 これまで「同調値上げ」との批判を受けてきた新聞業界ですが、護送船団方式の構図が大きく崩れ始めて、戦国時代の世を思わせるサバイバル時代へと変化してきたように感じます。他社(紙)との争いではなく、多メディア社会のなかで自社がどう生き残っていくか―。それぞれの新聞社の経営判断が大きく求められていくのでしょう。


【主要新聞の即売価格】
 ・朝日新聞=150円(45月から)
 ・毎日新聞=130円
 ・読売新聞=130円
 ・日経新聞=160円
 ・産経新聞=100円
 ・神奈川新聞=120円(4月から)


【追記】
 朝日新聞の1部売り価格の値上げが、5月からとなったため訂正します。
posted by 今だけ委員長 at 06:21 | Comment(2) | TrackBack(0) | 時事ニュース

2010年03月13日

日経初の赤字 赤字決算できるだけましかも…

 日本の新聞社は株式公開(上場)をしていないので、系列のテレビ局(クロスオーナーシップと言われてる)決算報告(連結決算)で新聞社の決算状況を知ることができます。
 日本経済新聞の子会社、テレビ東京の決算発表によると、日本経済新聞社が2009年12月期決算で、創業以来初めて132億円の赤字を計上したことが伝えられています。広告収入の減少で4期連続の売上高減を人件費などを含むコストカットでしのいできましたが、今期は赤字を計上せざるを得なかったようです。

 日本経済新聞より引用


 日本経済新聞社が9日発表した2009年12月期の連結決算は最終損益が132億1600万円の赤字(前の期は48億8200万円の黒字)となった。連結決算の開示を始めた2000年12月期以降、通期で初めての赤字決算となる。
 新聞・出版事業の広告収入が大きく落ち込んだことが響き、売上高は前年同期比13.1%減の3154億1400万円となった。販管費を10.2%削減するなどグループ全体で経費削減に取り組んだが、減収を補えなかった。
 単独決算は売上高が10.1%減の1771億400万円、最終損益は14億1600万円の赤字(前の期は35億1500万円の黒字)だった。

 「赤字」という報じられ方は企業イメージのマイナスですが、単年度の赤字決算で日経のような大企業はビクともしません。潤沢なキャッシュと資産を有している日経ですから…。でもこの現象が続くとキャッシュがなくなってくる。来月スタートする電子版も大した投資ではないでしょうから、収入(売上高)に見合った支出(原価+販管費)にするか、支出をまかなえる収入源を確保するかの問題。

 でも、赤字決算ができるというのは、まだ経営内容が健全だということを意味していると思います。多くの借金を抱えている企業(新聞社)は、赤字決算ができないわけです。「赤字」となったらすぐさま銀行が乗り込んできますからね。だから関連企業内(連結決算)で帳尻を合わせて黒字にするわけです。

 その意味では、ANY連合(朝日、読売、日経)はほとんど無借金体質(これまでは)なので、当面は安泰というところでしょうか。
 
▽日経の09年12月期決算、初の赤字に 広告収入減響く(日本経済新聞)
http://www.nikkei.co.jp/news/sangyo/20100309ATDD0907O09032010.html
▽日経新聞が初の赤字、連結純損失132億円−広告低迷で4期連続減収(ブルームバーグ)
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90920000&sid=apNMD4IKawOg
 

posted by 今だけ委員長 at 17:52 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2010年03月10日

産経45.6%、Yahoo!61.4%、朝日は25.8%…?

 広告収入の低迷が続いている新聞産業ですが、新聞社の広告収入は何も紙媒体ばかりではありません。自社サイトのバナー広告も少ないとはいえ重要な収入源となっています。
 グーグルのようにトップページには一切広告がないサイトがある一方、めっちゃ広告ばかりに目を取られてしまうサイトもゲップが出るものです。


 Webデザイナー長谷川恭久さんのサイトをのぞいていたら、「新聞サイトのコンテンツと広告領域」というエントリーがとても参考になりました。実は新聞社サイトは広告ばかりを詰め込んで記事スペースがヤフーよりも少ないということなのです。
 なるほど、これでは「ヤフーが記事を作っている」と思う学生がいてもおかしくないような…。

 長谷川さんが調べたのは各新聞社サイトの記事と広告の表示領域はこうなっています。
     ■朝日新聞 記事25.8%・広告32.7%
     ■毎日新聞 記事48.1%・広告19.6%
     ■読売新聞 記事29.2%・広告43.2%
     ■日経新聞 記事30.7%・広告15.5%
     ■産経新聞 記事45.6%・広告12.4%


 ウェブファーストを旗印に広告収入でビジネスを構築しようとする産経新聞が、意外に広告のスペース(12.4%)は少ない。記事スペースは毎日新聞が断トツで48.1%となっているものの、産経新聞の45.6%もほかの全国紙と比較しても多い方です。
 なるほど…と思いきや、さすがは長谷川さん・ニュースといえば新聞社のサイトばかりではなく、ポータルサイトでチェックする人が多いことも見逃していません。そして驚いたことに、ヤフーニュースのトップページは広告が11.4%しかなく、記事スペース(ニュースコンテンツ)がなんと61.4%もあるのです。
 本来広告収入がビジネスの柱であるヤフーなどのポータルサイトが実は新聞社サイトよりニュースコンテンツの領域を豊富に表示しているのです。“だから”というわけではありませんが、サイト上の一覧性(見やすさ)などを考えるとヤフーのニュースサイトの方が見やすく工夫されていると言えます。


 少しでも多くの広告費を稼ごうと各新聞社もみっちりバナー広告を張り付けてしまいがちですが、ユーザーの見やすさをもっと重視する必要があるかもしれませんね。


▽新聞サイトのコンテンツと広告領域/could(長谷川恭久氏のサイト)
http://www.yasuhisa.com/could/article/newspaper-site-ads/

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印刷部門の合理化が意味するもの

 新潟日報の営業努力なのか、採算割れの印刷工場の縮小が加速したのか…。
 読売、朝日に続いて、毎日新聞の(新潟県内)印刷も新潟日報が受託することになりました。
 以下、YOMIURI ONLINEより引用。


 毎日新聞社は8日、新潟県内で配達している全朝刊約2万7000部の印刷を2012年春から新潟日報社に委託することで同社と基本合意したと発表した。
 両社は新聞の輸送協力についても協議中だ。
 毎日は現在、新潟県内で配る朝刊を群馬県高崎市の関連会社で印刷している。新潟日報への委託に切り替えて輸送距離を短くし、安定した輸送体制を確立する狙いがある。
 新潟日報は、読売新聞東京本社と10年秋から、朝日新聞社と11年春から、それぞれ新潟県向けの朝刊の一部の印刷を受託することで基本合意している。
(3月8日付  読売新聞)

 これまで新潟県内で発行する毎日新聞の印刷は、関連会社「毎日新聞北関東コア」(北関東コア)が行っています。毎日新聞、スポーツニッポン、聖教新聞、公明新聞などが主な印刷紙で、長野、群馬、埼玉(新潟)エリアの毎日系新聞を印刷しています。
 今回、毎日新聞を新潟日報へ委託(すでに聖教新聞は新潟日報で刷っている)するとなると、北関東コアの印刷収入がダウンすることに。実はこの北関東コアは群馬県の上毛新聞も出資しているので、本丸の毎日新聞が信濃毎日(長野)にも印刷を委託するようになれば、上毛新聞の負担増は免れないような気もします。

 輸送体制や販売店業務提携などは協議中とのことですが、輪転機(印刷センター)を建てることで、その近隣エリアを主戦場にして部数拡大を図ってきた販売政策を見直さざるを得ない状況になってきたということです。とはいえ、それぞれの印刷センターに働く人たちの生活もあるわけですから、「ソフトランディング」の基本姿勢で今後の印刷体制を考えてもらいたいものです。


 一方、新潟日報の印刷体制にも関心があります。新聞は「生もの」ですから、速報性は大きく求められなくなったにせよ、最新のニュースを朝刊に入れたいもの。高速輪転機が数台あるとはいえ降版時間がこれまでより繰り上げられるのではないかと思います。やはり地元紙ですから新潟日報の紙面を最終版にするのでしょうが、大手3紙にスポニチや聖教まで含めるとその降版時間の裁き方は容易ではないでしょう。輸送体制や販売店の提携による配達コストまで考えないと物流部門の効率化は図れませんから…。
 今後の動きに注目したいと思います。

posted by 今だけ委員長 at 06:59 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時事ニュース

2010年03月03日

無購読者に新聞研究「記者読本」を読んでもらいたい

   新聞研究704.jpg
新聞研究(704)記者読本2010
社団法人日本新聞協会(840円)

 「無購読者にはこれを読んでもらいたい」そう思いました。
 毎年、新聞研究の3月号は「記者読本」と称して、4月から新聞社で働く新入社員へのメッセージ集で構成されています。
 「記者となる君へ」というキーワードでベテラン記者からのメッセージや先輩記者からの体験談などは、「こういう先輩のもとで働くのはオモシロイだろうなぁ…キツそうだけど」と勝手に回想してしまいます。
 筆者の先輩方のなかには、磯野彰彦さん(毎日)や具志堅学さん(沖タイ)などお世話になった方の寄稿もあって、大変興味深く読みました。なかでも高知新聞の山岡さんの文章はとても印象深く、強面の編集局長(実は心優しのでしょう)のイメージが伝わってきます。新聞はこういう人たちが作っているのだ―と思いながら新聞を手にすると、また一味違った「新聞の読み方」ができると思います。

 「新聞は読まない」なんていう方には、今号を読んでもらってから「どうです。新聞読みたくなりませんか?」と口説いてみたいですね。


 「記者読本」と銘打っているわけですから、記者職の先輩方の記憶が多いのは当然ですが、新聞協会の販売と広告の両委員長からも営業職場の現状が綴られています。
 もちろん販売労働者ですから販売委員長の飯田真也さん(朝日)の寄稿から読みました。表題は「経営安定の努力続ける」。不正常販売の問題点を指摘し、「今後は販売店間の業務提携も進み、戸別配達も合理化されてさらなる経費削減につながる」との見解を示しています。さらに、「新聞の報道・言論は公平で正確でなければならない。そのために欠かせない経営の安定を図り、一人でも多くの方に読んでいただくために我々『販売人』は全力を挙げる」と結んでいます。
 これまで、販売委員長が不正常な販売の実態を示しながら改善に取り組むといった内容を表記するのは、はじめてではないかと思います。さらに、経営を守るために販売はさまざまな合理化(経費削減)に取り組むという書き方も。昨年同月発行の新聞研究を引っ張り出して、当時の販売委員長(船瀬さん・日経)の寄稿を見てみたら、「報道の自由支える個別宅配網」という表題で、「新聞事業の根幹は日々読者の元へ届ける戸別宅配網である。世界に冠たる日本の個別宅配網を維持、強化する必要がある」と書かれてありました。
 そうそう、これまでは宅配網の維持を前面に出して書かれていたのです。ところが、飯田さんになってからいろいろと変わってきた。経営を守るために販売は合理化(正常化)に取り組むと…。

 改革派の飯田さんを応援したいと思う一方で、無謀な合理化には断固反対です。配達従業員もまた地域の読者であり、業界構造の根底にある発行本社と販売店の取引関係を適正化することが優先されるべきだと思っています。


 話は脱線しますが、新聞研究を発行する日本新聞協会に勤めていた阿部裕行さん(事務局次長兼経営業務部長)が、地元の多摩市長選(4月4日告示、同11日投開票)へ立候補するため、2月に退職したという話を今日伺いました。少々びっくりしましたが、「あの方ならば」という気持ちです。
 阿部さんには新聞労連の役員時代に春闘要請行動の段取りや、産業政策研究会メンバーと協会職員の方々とのディスカッションの場を設けていただくなど、大変お世話になりました。新聞というキーワードでのつながりはなくなるのかもしれませんが、多摩市民のためにご奮闘されることを願っています。

posted by 今だけ委員長 at 23:51 | Comment(2) | TrackBack(0) | 書籍紹介

2010年03月02日

【備忘録】原口大臣の(チリ大地震による津波情報)ツイッター中継

 メディアのクロスオーナーシップの是非を問い、既存メディアのあり方についていろいろ言及(まだ何をしたいのかわかりませんが)をはじめた原口総務相。
 野党時代はテレビへ出ずっぱりで人気を博した原口さん。メディアの活用は熟知されているのでしょう。その原口さんが、ツイッターでチリ大地震後の津波情報を国の災害対策情報に先駆けて発信していたことが物議?を呼んでいるようです。


▽津波関連情報をツイッターで発信…原口総務相(読売新聞3月2日付)
http://www.yomiuri.co.jp/net/news/20100302-OYT8T00760.htm


 今だけ委員長も原口さんをフォロー(注)しているのですが、きょう現在で56,186人からフォローされています。
 56,186人のツイッター利用者は原口さんの“つぶやき”を読めるわけですが、「閣僚の“つぶやき”(書き込み)はすでにつぶやきの域ではない」と、公人としての許容範囲を問うような問題提起をメディア側(特に新聞)がしているようです。
 それに対して原口さんは以下のようにツイッター上でつぶやいています。

原口.jpgkharaguchi
記者会見で私のツイッターによる災害対策情報提供について記者の1人よりなりすましの危険もあり不適切ではないかと質問がありました。 全くそのような認識を持っていないと回答しました。国会議事堂内会見だったためインターネットで流れていませんが会見内容を開示します。

原口.jpg

kharaguchi
情報通信、紙媒体、電波…全てのメディアに対して政府は、平等・公正な姿勢で接するべきと考えます。枝野大臣らと政府広報や記者会見の持ち方などについて時間を作って話し合いたいと思います。
(このつぶやきは完全にマスコミへブラフかけてます)

 閣僚の発信が個々人へダイレクトに伝わることの是非は、受け取る側のリテラシィーの問題も含めて慎重に考えたほうがよいと思っています。世論誘導(よくも悪くも)に使われる可能性は否めませんからね。
 一方メディアの側も個人がメディアを有する時代にあって、そのような問題意識よりも記者クラブを含めた「メディアの中抜き」への懸念を主張するならば、それは既得権を盾にした「言いがかり」でしかないという気がします。

 さて、この顛末はどうなるか。

【追記】3月5日
 上杉隆さんのコラムはキレがよくて読ませますね。原口大臣のツイッター問題の件は、こういう背景があったことを知ってから紙面を見ると「なんじゃこれ」となりますね。

▽呆れた言論封殺に、姑息な見出し変更/日本の新聞に未来などない!
http://diamond.jp/series/uesugi/10116/

posted by 今だけ委員長 at 19:10 | Comment(2) | TrackBack(0) | 日記

ちょっとロマンティックに

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 昨晩から降り続いた雪もひと段落。気温も高めなので足元の雪は概ね解けていますが、通勤路の桜や銀杏の枝に白い花びらが…。
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 こんな日の新聞配達も仕事とはいえ、大変な作業です。配達スタッフの皆さんに感謝!
posted by 今だけ委員長 at 09:48 | Comment(0) | TrackBack(0) | こせきかつや通信

2010年03月01日

M1・F1総研「料金がかかるから購読しない」の結果をこう読み説いた

 電通子会社のマーケティング調査機関「M1・F1総研」が先月25日に発表した「若者と新聞」に関する調査報告書について、ネット上でさまざまな分析が行われています。
 今回の報告書で特筆されているのは、M1層の男性が新聞を読まない理由としてもっとも多かった意見が「料金がかかるから」(62.6%)というもの。

 調査手法を見てみると昨年11月にインターネット経由(謝礼あり?)で関東1都3県在住の男性に対して行われたもので、有効回答数は1200人。年齢階層はM1層(20〜34歳男性)1000人、M2層(35〜49歳男性)200人というものです。

 以前にも意見を述べましたが、さまざまなリサーチには依頼者側の意図が含まれ、(その理由等は特に)設問に微妙な誘導性が含まれる場合もありますから注意して読み説かなければなりません。

 今回の調査はネット限定で行われたということですから、M1層の意見を集約するには適していると言えばその通り。でも、新聞を積極的に読む(週1回以上閲覧する)人が20%チョイとはかなり低い結果です。自ら定期購読をせずとも昼飯を食べに行けばその食堂なりに必ず新聞が数紙置いてあったものですが、経費削減で新聞を置いている食堂(喫茶店)が減っているということも影響しているのでしょうか。ほとんど読まない人が70%台に達しているというのも、まんざら嘘ではないと感じる今日この頃です。

 新聞へ叱咤激励をしてくれる方からは「コンテンツに魅力がないから読まれないのだ」という意見も出そうですが…。では、どういうコンテンツにすればよいの?と問うても答えなんてありません。
 人間は本当にその商品の価値観を分からずじまいということがよくあります。例えばケータイもその機能を使いこなしている人どのくらいいますかね。取説も要所しか読まないので多機能のケータイを買っても宝の持ち腐れとなってしまうのと同じ。
 私は以前、学生さんと話した時に「これが新聞を購読しない本音だな」と思った答えに出くわしました。それは「みんな(周りの友人)が読んでいないから」というもの。それは新聞の活用であったり利便性であったりを知らないからではないかと思いました。それでその取説を本来は販売店がやらなくちゃいけないのですが、無理です。そんな教育受けている販売店なんて皆無ですし、生活者の販売店従業員へ対するイメージを考えれば分かることです。残念ながら…。

 「料金がかかるから」購読しないという結果を前面に出しているということは、料金がかからなければ購読してもよいということになるのかな?でもこれまで新聞の購読などに関するリサーチ結果と見比べても料金を下げたからといって購読者が増えるとは思えません。商品の価値を下げるような安売りは絶対にしない方がいい。デフレ経済のなかにあって、そりゃ安いに越したことはありませんが、月3,000円(朝刊)レベルはまだ読者も納得できる範囲。毎日自宅まで届けられて1日100円は個人的にはかなりお得だと思っています。

 それこそ新聞社員の賃金と購読料の関係を指摘されるとイタイところもありますが、(減っているとはいえ)広告収入があるから「まだこの購読料で提供できる」との説明には耳を貸してくれるんじゃないかなぁと…。
 でも、これから値上げ(消費税率引き上げ含む)の方向へ向かった時に、購読している新聞への費用対効果が問われてくると思います。

 日経のように企業資産を有効活用した電子版で客単価をあげる戦略もうなずけるし、朝日の「学割」戦略もこれまでの既得権を破って新たな販売チャネルを打ち出したわけですから、どのような成果が出るか興味のあるところ。

 そう考えると、今回のM1世代のリサーチ結果「料金がかかるから購読しない」は、朝日の「学割」の正当性をアピールすることになるのかなぁ。意外と担当者が社内での評価を高めるために動いてたりして…。


▽M1・F1総研のリリース
http://m1f1.jp/files/topic_100225.pdf
▽若者はなぜ新聞取らないのか 情報にお金払うという感覚なし(J-CASTニュース)
http://www.j-cast.com/2010/02/27061104.html
▽若者が新聞を読まない理由――M1・F1総研調査(RBB TODAY)
http://www.rbbtoday.com/news/20100301/66002.html

posted by 今だけ委員長 at 20:58 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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