2009年12月10日

「マードックVSグーグル」を尻目に産経のウェブファーストはさらに加速

 米国の新聞事情をチェックしていると「マードックVSグーグル」という構図がこのところ突出して伝えられています。良くも悪くもマードックは「優れたジャーナリズムには金がかかる」として(ウェブ上の)新聞記事の有料化を訴え、廃刊を余儀なくされる米新聞業界の救世主のようなイメージで伝えられているように感じるのですが、日本の新聞界でそのような人物は登場してくるのでしょうか。

 ニューズ・コーポレーションのルパート・マードック会長が、新聞社のコンテンツを無料提供するネット検索大手のグーグルなどを強く批判し、傘下メディアの記事をグーグルで自由に検索・閲覧できなくする措置を検討していると述べると、グーグルは新聞社サイトの有料記事は1日当たり5本までしか全文を無料で閲覧できないようシステム改良を行うと発表。次いでグーグルが新聞社のネットを通じた収益拡大を支援するとして、ニューヨーク・タイムズとワシントン・ポストの米主要2紙と協力した新サービスを開始すると報じられると、マードックが米メディア大手5社とともにインターネットを活用し独自に情報を販売するサイトを2010年に立ち上げる計画をぶち上げるなど、激しいバトルが繰り広げられています。
 グーグルがニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポストと手を組むとなると、ニューズコーポレーションとマイクロソフトとの提携の動きも報じられているので、米新聞界はニューズ(MS)派とグーグル派の二極化する可能性もありますね。結局はグーグルの総取りになるようにも感じるのですが、ことの結末はいかに?(こんな軽い話ではないのですが…)


 米国では新聞社の危機を救うために記事の有料化を推し進める動きが加速する一方、業界の切り込み隊長こと産経新聞が、新たに無料モデルのサイトを立ち上げました。
 産経デジタルは12月7日から、新しい経済情報サイト「SankeiBiz(サンケイビズ)」を開設。フジサンケイビジネス・アイの公式サイトをリニューアルして、ビジネス・アイに加え、産経新聞、夕刊フジなどの経済関連記事を無料で提供するサービスをさらに拡充させるとのこと。産経が掲げる「ウェブファースト」の流れは加速する一方のようです。大量の希望退職者を募り、押し紙を大幅に整理し、2010年3月期中間決算は連結で黒字となったものの、産経グループの一貫したウェブ戦略に注目です。

 ところで、このサンケイビズの経済ネタ(見出し)はtwitter(ツイッター)とマッチするような感じがします。でも、ケータイ未対応(ケータイ閲覧は月315円の有料モデル)なのは残念かな。


※参考記事
▽「優れたジャーナリズムには金がかかる」 グーグルVSマードック
http://www.sankeibiz.jp/macro/news/091202/mcb0912021841326-n1.htm
▽グーグル、有料記事の閲覧回数を1日5本に制限
http://jp.reuters.com/article/technologyNews/idJPJAPAN-12760120091203
▽新「新聞サービス」開始 米グーグルと主要2紙
http://news.goo.ne.jp/article/kyodo/entertainment/CO2009120901000153.html
▽米メディア大手5社、共同サイト設置=グーグルに対抗、広告収入狙う
http://news.goo.ne.jp/article/jiji/business/jiji-091209X514.html
▽グーグル、日本のユーザー拡大に躍起 音声検索やCMも
http://www.asahi.com/business/update/1207/TKY200912070358.html
※追記(12月10日)
▽マードックのWEJはグーグルと戦うが、NYTはグーグルと今後も仲良く
http://zen.seesaa.net/article/135182030.html

posted by 今だけ委員長 at 01:29 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2009年12月08日

手探りですが、ツイッターでつぶやいてます

140文字が世界を変える.jpg
ツイッタ― 140文字が世界を変える
著者 コグレマサト+いしたにまさし(マイコミ新書)819円

 流行のツイッター。もう遅いか…
 今年6月の全世界ユーザー数が4450万人で、どんどん伸びているようですねぇ。
http://jp.techcrunch.com/archives/20090803twitter-reaches-445-million-people-worldwide-in-june-comscore/
 今だけ委員長も6月に登録だけして、放置しっぱなしだったのですが、先月後半からぼちぼちつぶやいています。
 kose_k  です。
興味のある方は、ぜひフォローしてください。

 さて、ツイッターを始めるにあたり、「RT」とか「流行のトピック」(この辺は初歩的なこと)とか、基礎的な使い方をを知ろうと本書を購入したのですが、「まずやってみよう!」という内容でした。
 ツイッターの可能性は計りしれず、これからさらにユーザーが増えれば、よりリアルなメディアとしてSNSやブログよりも企業の販促ツールとしても活用できる可能性があるとか…。敷居が低く誰でもつぶやける(書き込める)手軽さはよいのですが、まだ実感としてつかめていません。いまはシコシコとつぶやいて行こうと思います。

 ぜんぜん本の紹介になってないなぁ…。
posted by 今だけ委員長 at 21:40 | Comment(0) | TrackBack(0) | 書籍紹介

「多対一」のマイメディア時代が到来する

 2030年メディアのかたち.jpg
2030年メディアのかたち

著者 坪田知己(講談社)1000円



 結論を先に言うと、将来「メディアは逆転する」のです。デジタルメディアは、その可能性を秘めています。明らかに、現在のマスメディアの延長にデジタルの世界はありえません。根本からメディアのあり方を考え直さなければなりません。(本書「はじめに」より)


 2030年のメディア産業がどう変化しているのか…。もしかするとこの答えは誰も持ち合わせていないし、「こうなる」と言い切る人は逆に怪しまれるかもしれません。しかし2030年は間違いなくやってくるし、自分は60歳チョイになっている。マスメディア(とても広義的ですが)に身を置いている人たちも、これまでと同じような状況が続くとも思っていないし、特に新聞のようなプリントメディアの行く末がどうなるのか悩み、もがくばかり…。本当は自分たちで何かしらの手立てを打たなければならないのに、定年ギリの人たちは前例踏襲路線を変える気もなく、人件費抑制でしか企業延命の手立てを持ち合わせていない。将来のマスメディアに向けて何をしていかなければならないのか。

 坪田さんは予言者ではないので、本書では「マスメディア産業がこうなる」という書き方はされていませんが、2030年には究極のメディアが具現化し、「多対一のメディア」いわゆる「マイメディア」の時代が到来すると予見します。そしてそのニーズに対応し、知的生産レベルを日本国民が高めていくための「知性増幅装置」としてメディアが必要だとしています。うぅーんなかなか難しい。それは坪田さんの思考回路に私がついていけないだけなのですが…。

 本書はメディアの歴史もしっかりひも解かれていて、大学の講義を受けているように読み進められます。そしてメディアの信頼とは何か、プロとは何か、△型ジャーナリズムによるコミュニケーションへと坪田さんが実践していること、こうあるべきという“メディアのかたち”が詰まった本です。


 坪田さんには東京在住中にいろいろとお世話になりました。mixiコミュニティーで意見を交わしていたら「一度こちらに来なさい」との言葉に、図々しくうかがって豊富な資料を提供してもらったり、今後の新聞産業のあり方などをご教示いただきました。2度目にうかがった時には新聞労連の産業政策研究会のインタビュー(第1期報告書へ収録)に応じてもらうなど、いろいろと面倒を見ていただきました。
アンビエント・ファインダビリティ.jpg
 バイクにまたがり雑誌に漫画も書いている(今はどうかな?)坪田さんに“読め”と薦められた「
アンビエント・ファインダビリティ(Peter Morville著)」とも何かしらつながっていると感じながら読み終えました。

参考:WEB日誌(河北新報KOLNETより) http://blog.kahoku.co.jp/web/archives/2009/12/post_234.html

posted by 今だけ委員長 at 00:19 | Comment(0) | TrackBack(0) | 書籍紹介

2009年12月06日

「ワンピース」キャラクターに紙面ジャック 広告企画もがんばってる!

ワンピース第56巻.jpg 先週金曜日(12月4日)の朝日新聞ご覧になりました?
 本紙36面中9面にわたって週刊「少年ジャンプ」(集英社)の全面広告が掲載されていました。
 来週14日に発売される「少年ジャンプ」新年号の300万部発行の復活と、連載中の人気漫画「ONE PIECE(ワンピース)」(作者:尾田栄一郎さん)が4日発売の第56巻でコミックス史上最大の初版285万部を達成(ワンワンピースの累計発行部数は55巻までで1億7千万部超とのこと)したことのPRというか御礼を、新聞広告を使って表現したものです。
12月4日発売の「ONEPIECE」第56巻の表紙(C)尾田栄一郎/集英社


週刊少年ジャンプ:300万部に復帰 朝日新聞を「ワンピース」キャラクターがジャック(毎日jp12/4)
http://mainichi.jp/enta/photo/news/20091204mog00m200022000c.html


 紙面を使った印象深い広告企画としては、2004年8月10日付けの全国6紙に掲載された「スラムダンク1億冊感謝キャンペーン」があげられます。新聞紙面がアートになった瞬間で、スラムダンクファンはこぞって掲載紙を手に入れるため新聞販売店へ詰めかけたことを記憶しています。あれは伝説ですね。
 作者の井上雄彦さんが読者へ伝えたい感謝の気持ちを伝えたい相手に深く伝える企画でした。廃校になった校舎(旧神奈川県立三崎高校)へ読者を招いて開催されたファイナルイベント(2004年12月3日〜5日)はコンセプトがしっかりしていて、ストーリーも抜群でした。その企画を手がけたのが「
明日の広告」の著者でもある佐藤尚之さん(電通所属)です。


 日々の紙面スペースは限りがあり、ウェブにはかないませんがスペースを最大限活用して“人へ伝える”広告のチカラが磨かれてきたように感じます。その意味では広告会社の企画部門が相当頑張っているのでしょう。
 新聞社は媒体(紙面)を提供するだけではなく、こんな企画を広告会社に提案できるようになれないものかなぁ…。


「スラムダンク」1億冊突破朝刊6紙に全面広告(夕刊フジ 2004/8/10)
http://www.zakzak.co.jp/gei/2004_08/g2004081009.html

posted by 今だけ委員長 at 20:12 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2009年12月05日

毎日新聞との包括提携 横やり入れた一国一城の主

 きのうの話になりますが、11月26日に発表(共同記者会見)された「毎日新聞社と共同通信社、共同通信社加盟社による包括提携」の一部訂正、説明の追加について、共同通信社が記者会見を開きました。共同通信加盟社(地方紙)と毎日新聞社の包括提携にすべての加盟社が合意したものではなく、具体的な協力・提携については個々の加盟社が独自に判断する問題だということをあらためて発表したというものです。
 ※47NEWSより http://www.47news.jp/CN/200912/CN2009120401000839.html

11月26日合同記者会見の一部訂正 2009-12-4.jpg 毎日新聞社が来年4月から共同通信社に加盟し、共同加盟社に加盟する新聞社とも▽紙面について三者間によるキャンペーンの展開やシンポジウムの開催、各社の論説委員による対談、また紙面内容についてチェックしてもらう外部の第三者機関の議論の場を合同開催するなど、これまでにない試みや協力を進める▽毎日新聞社は共同通信社加盟社と協議の上、地域面の記事配信で協力を進める▽スポーツ事業や文化・展覧会事業の共催など三者間で事業面の協力を進める――とし、
今後のテーマとして▽事業協力、紙面協力▽紙面制作システム、新聞の印刷委託▽新聞販売網の効率化などを進める――としていました。

 共同通信社が制作システムや販売網の効率化まで言及するのかぁ…と考えながら、包括提携を伝える翌11月28日の紙面を読むと、「毎日新聞が加わったことで地方紙を合わせると5000万部の勢力となる」とANY連合を意識したような印象を持ちました。いわゆる共同通信連合があらゆる分野で業界の未来を切り開くかのような…。それに毎日新聞と包括提携という話だけが先走って、共同通信社理事会長の多田昭重・西日本新聞会長がコンセンサスを取りあぐんだことが火種の元になったようです。

 多くの地方紙経営陣がお気に召さなかったのでしょう。一国一城の主としてプライドだけは人一倍高い地方紙経営者が、「そんなこと聞いてない」と激怒して、共同通信社と理事会を突き上げただと思われますが、わざわざ記者会見までする必要があったのか疑問です。
 「共同にけじめを付けさせろ!」となったのかもしれませんが、誰に対して一部訂正と説明の追加をするのか意味がわかりません。要は先走った包括提携ニュースを共同配信の記事を使って掲載したため、事実と異なっているものを紙面を通じて読者へ伝えてしまったから、その記事を訂正するためにも記者会見をして共同通信がそのニュースを配信する必要があった…?のでしょうか。

 多くの読者にすればそんなこと大した問題ではありません。内輪のゴタゴタ劇に紙面のスペースを割くくらいなら、もっと載せることがあるでしょうに。そもそも、26日に共同通信から配信された記事が誤解をあたえるような記述だと判断すれば、編集段階で手直しするのが“編集権をかざす”新聞社の仕事じゃないのでしょうか。お粗末だなぁ…

 今後の新聞産業をまともに考えれば、さまざまな提携による効率性を求めていかなければならいないと先行かないと多くの新聞関係者は思っていると思うのですが、今回の毎日新聞社との連携を不快に思っている地方紙経営陣は、ほかに収入をあげる策があるの?と言いたいです。毎日新聞の受託印刷で輪転機の稼働率を上げようと思わないのかなぁ。少なくてもデメリットはないはずだと思うのですが…。それともANY連合に加わりたいと思っているのかなぁ
posted by 今だけ委員長 at 23:13 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時事ニュース
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