マスゴミ崩壊
著者 三橋貴明(扶桑社)1,470円
この手のマスコミ(新聞)批判の類は“もう買わない”と思っても、つい手が出てしまいます。考えるに、自分の気持ちの中に、(現状の)マスコミ批判から「新聞再生の妙薬」が秘められているのではないかという淡い期待があるからなのかもしれません。
いずれにしても批判されることは痛いことですが、だからと言ってその(批判される)指摘すら無視するようになってしまっては、余計に孤立していくだけだと思っています。
著者は経済評論家(中小企業診断士)として活躍するかたわら、ネット界では人気ブログ「新世紀のビッグブラザー」を運営している、俗にいうアルファブロガー。
本編は特に新聞産業の問題を中心にさまざまな問題点を指摘していますが、よくこれほどまでに新聞産業界に内在する問題を調べ上げたものだと感心します。おそらくネット上で発信されている情報を手繰り寄せて論拠を整理されているのでしょうが、その知識は業界人以上?かもしれません。
内容は残念ながら目新たしいものは見受けられませんでしたが、気になった一説を引用します。
・・・新聞社はオンライン系メディアや風呂が(ブログ管理者)の批判を自社にとって有益な「フィードバック」として受け止め、新聞記事の品質向上に努めるべきなのだ。しかし、散々解説してきた通り、新聞産業はエンドユーザーからのフィードバックを活用し、自社製品の品質向上に努力するという、一般企業が必ず持っている機能を保有していない。それどころか、エンドユーザーの声を直接聞ける販売店を「専売店」として管理下に取り込み、長年にわたり市場の声を聞くことを拒否し続けたのだ。
この視点はうなずきつつも、「読者の声を聞け!」とはあまりにも抽象的で結論の見えない意見のように感じます。確かに「購読をやめた読者から理由を聞け」と販売現場では口酸っぱく言われていますが、経済的理由以外は「何となく、読まなくても…」といった声が大半で、「こうだからやめる」と明快な意見を言ってくれる読者は少ないものです。
逆に「こうしたら購読してもよい」(オマケ以外で)という意見を集めるほうが生産的なのかなぁ。いずれにしても、マーケティングをすることよりも精神論で登りつめてきた(新聞社の)エライ人たちの「感覚的な解釈」によって、販売政策などが決められてきたのは確かです。
「新聞社の決算を診断する」の章では、全国紙の08年決算内容の分析がされています。そのなかで売り上げの落ち込みが最も大きい産経新聞は利益の悪化がそれほどでもないことに触れて、「産経新聞は08年時点から社内の人件費に手を付け、リストラクチャリングを進めてきたためだ。なぜ産経が、他紙に先駆け、人件費にメスを入れることができたのかといえば、規模が小さい分小回りが利きやすいというのもあるが、それ以上に同社が新聞労連に加盟していない点が大きい」と述べ、各社の従業員が新聞労連(日本新聞労働組合連合)へ加盟しているから、人件費の削減は容易ではないとしています。
この理論展開を読む限りでは、新聞再生の道はなくリストラ(人件費削減)して赤字をしのげ―ということのようです。
マスメディア(新聞)への処方箋についても書かれています。▽再販制度及び新聞特殊指定の取り消し▽専売制の宅配モデルの解体と、合配制化(総合店化)▽全記者クラブの解散・・・・・・。
新聞産業の分析はしっかりされているのですが、批判の域からでない破壊論者という印象を受けました。
posted by 今だけ委員長 at 23:03
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