2009年09月29日

関西7社販売局長共同声明に見る正常販売の本気度

 9月10日付「販売正常化で是正すべき問題は2つある」の続報です。
 全国で最も不正常な新聞販売行為が行われている、京阪神・近畿地区の販売正常化に向けて、関西地区の発行本社(朝日・毎日・読売・日経・産経・京都・神戸)のトップと日本新聞協会販売員会役員らが16日、「関西新聞販売正常化と販売店強化のための推移会議」を大阪市堂島の「クラブ関西」で開催しました。

 同会議は新聞協会販売員会・新聞公正取引協議会の飯田真也委員長(朝日)が取りまとめた「公正販売の実現に向けて」のスケジュールに沿うもので、「公正販売の実現こそが戸別宅配制度を堅持し、お互いの共生と新たなる繁栄への道であることを確認し、全国に先駆けて完全正常化を達成することを約束した」とする「関西7社販売局長共同声明」が発表されたようです。

関西7社販売局長共同声明
2009年9月16日

 関西7社の販売局長は、公正販売の実現こそが戸別宅配制度を堅持し、お互いの共生と新たなる繁栄への道であることを確認し、全国に先駆けて完全販売正常化を達成することを約束した。
 正常化への具体的な道筋についての議論の結果、以下の事項について合意し、確実に実行することを決めた。
 1、すべての実行委員会と現地会を定例開催することにより、関西における現状の過当競争を直ちに沈静化し、新聞公正競争規約(6・8ルール)を厳守する。
 2、著作物再販制度と「新聞業における特定の不公正な取引方法」(特殊指定)告示の趣旨を系統内に徹底し、相互信頼の下、定価販売による公正な業界秩序を確立する。
 3、新聞販売所の一層の発展と繁栄のため、共同配達、共同集金、及びポスティング等の新規事業について研究し、協力して実行に移す。
 4、前記の3項目を実現するため、すべての実行委員会と現地会に完全正常化への行程表の作成と順守を求め、その進捗状況を毎月点検する。この共同声明と行程表から逸脱する行為があった場合には、当該局長が責任を持って是正する。                      以上
 


 突っ込みどころが満載ですが、高額なオマケや長期間の無代紙に慣らされた読者に対して、同調値上げと同じく護送船団方式で対応するということです。以前、新聞労連では販売現場で起こっている公正競争規約に反する販売行為に対し、発行本社の連座制(連帯責任)確立を求めましたが、今回の共同声明では「(不正常販売行為が行われた場合)当該局長が責任を持って是正する」という表記にとどまるなど、踏み込みが甘いような気がします。
 どの程度実行性があがるのか注目したいと思いますが、それと合わせてもう一つの正常化、発行本社と販売店の取引関係(押し紙)も適正化されることを期待したいものです。



 もうひとつの話題ですが、18日に開催された新聞販売公正取引協議会(中央協)の9月度委員会では、景品表示法の所管が公正取引委員会から消費者庁に移管されたことに伴って、新聞公正競争規約の改正、試読紙戸別配布ルールの配布期間制限の撤廃が承認されたようです。

 「試読紙戸別配布ルール」とは、読者に無料(お試し)で配布できる期間を1カ月につき10日から20日までの間に上限7回と決められています。今回の改定では配布回数(上限7回)はそのままですが、期間の定めを撤廃するというものです。
 新聞の月決め契約とは、その月の1日から月末まで。販売店は月末に契約が切れる読者や新たに契約が発生する読者の数を月初めの1日から3日頃に確定させ、社取り定数(宅配をして代金回収ができる読者数と即売店へ納入する部数の合算に予備紙を加えた数字を指します)を決めるのですが、月をまたぐ試読紙配布が多くなると定数のカウント自体が「試読紙の上げ底」に乗る格好になると懸念されます。当然、社取り定数はABC協会へ公称部数としてカウントされるものですから、実配部数(定期購読をしている読者)が曖昧になる可能性があるのです。

 「押し紙」解消に向けたソフトランディング策の一つかもしれませんが、販売店ばかりに負担をかけると大きなしっぺ返しがありますよ。

posted by 今だけ委員長 at 23:11 | Comment(0) | TrackBack(0) | 新聞販売問題

2009年09月28日

新聞を愛した新聞人との別れ

 きのう、慕っていた先輩の告別式に参列してきました。
 その先輩は福島民友新聞社に勤めていた方で、私より10歳上の新聞人です。突然の訃報でまだ気持ちの整理もついていませんが、「新聞を愛したひと」との議論を思い返しています。

 彼との付き合いは、15年ほど前の労働組合の会議でした。労働組合の議論でも地方連合クラス会合となると、勝手知ったベテラン役員が議論をリードし、最後は「なぁなぁ」で話が収まる場面の少なくありません。しかし、その先輩は常に理路整然として結論を出すのが厄介な問題を提起して、けして妥協を許しませんでした。相手(組織)を敬いつつも「同じ議論を繰り返さないために…」と中途半端な返答には納得しない気骨のある方でした。特に新聞研究・ジャーナリズムの話になると、酒も飲まずに深夜まで議論している場面が印象に残っています。
 tetsu似顔絵.jpg

 記者職を経て、2年前から事業局で出版の仕事をされていたとのことです。似顔絵書きがとても上手で、紙面に登場する著名人の挿し絵も担当していたとか。
 喪主の奥さまが最後の御礼を述べた時に、「主人は本多勝一さんに憧れて、新聞人への道を選んだ」と語っていました。そういう志を持って新聞社の門をたたく人が、今どれだけいるのでしょう。

 また一人、新聞を愛した新聞人がこの世を去ったことが残念でなりません。
合掌

posted by 今だけ委員長 at 06:20 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2009年09月27日

お堅いイメージは不要になってきたのかなぁ

 朝日新聞社の躍進というか、WEB事業の拡大が勢いを増しているように感じます。

 今月から「CNET Japan」「ZDNet Japan」を傘下に収めた朝日インタラクティブ株式会社を設立。
 モバイル部門では、35歳前後の世代をターゲットに利用者同士が「参考になる情報」を出し合うモバイルPC(携帯電話)向け情報サイト「
参考ピープル」のサービスも開始しています。

 若手社員がいろいろなアイディア出しをしているのか、外人部隊が引っ張っているのかわかりませんが、何となくお堅いイメージが取れてきたような…。
人材確保にもこんな動画でPRしています。
posted by 今だけ委員長 at 01:33 | Comment(0) | TrackBack(0) | きょうの喜怒哀楽

2009年09月26日

NIEは新聞のつくりかえに必要な活動

新聞教育の原点.jpg
新聞教育の原点
―幕末・明治から占領期日本のジャーナリズムと教育
著者 柳澤 伸司(世界思想社)3,800円

 「いくら現場のことを熟知した研究者が新聞・ジャーナリズム批判とよりよき提言をしても、現場の記者には届かなくなっている、聞く耳を持たなくなっているのではないか。それ以上に、内部から変えていこうとする彼ら(新聞人)の姿勢を感じなかったことが、私自身の問題意識を深めるきっかけとなった
 立命館大学(産業社会学部教授)で教鞭を振るう著者が、NIE(Newspaper in Education)と新聞・ジャーナリズム研究に取り組む動機を「あとがき」に記しています。

 1980年後半から「教育に新聞を」と呼ばれる活動が推奨されて、2011年度から学習指導要領に「新聞」を授業で活用することが盛り込まれるなど、新聞教育が見直されています。最近の新聞業界でもNIEネタがやたらと多くなっているようです。
 本書は、幕末に日刊紙が発行された頃からの半世紀について、新聞が果たしてきた役割や「新聞についての教育」と「新聞による教育」を考察しています。膨大な量の資料も紹介されているので、NIEに興味のある教育者や新聞人は必見ではないでしょうか。


 ところで、現代のNIE 活動とは何を目指しているのでしょう。

 「新聞を読まない(定期購読していない)」若年層や世帯が増えていることに関連して、時事的な記事を読む能力「リテラシィー」が落ちていると思われるために、新聞を活用して読解力を養う―というのは教育者の論。
 新聞人は将来の購読者に対して新聞を読む習慣をつけてもらいたいという若年層への先行投資の意味合いを強く感じます。

 しかし、著者が目指す「NIE活動を通じて新聞のつくりかえる」という発想はジャーナリズムを叩きあげていくことなのです。

 「読者は新聞を読み、批判するだけでなく、よい記事は誉め、読みたくなるような新聞を求めていくことも含めて、新聞とともに共生していくような関係づくりをすること。そして新聞社内部からジャーナリズムをつくりかえていく人を増やすこと。この命題を解いていくためには、相当な時間がかかるかもしれないが、その鍵は新聞を読み批判できる読者を増やすことであり、そのなかから新聞を支え、つくりかえていく新聞人が育つことにある。そのためにも教育に新聞を導入していくこと(NIE)が必要ではないか、と考えている


 私のような販売労働者は、メシを食うために1部の積み上げに躍起になるわけですが、なぜ新聞離れが起きているのかという根本的な問題提起にうなずきつつも、「時間がない…」とあせる気持ちを抑えながら読ませていただきました。

 著者の恩師は、故新井直之氏ということですが、私も一度だけ新井先生の講演をうかがう機会がありました。1992年だったと記憶していますが、新聞販売労働者を前にしてジャーナリズムや記者クラブの問題を真剣に語ってくれたことを思い出します。その当時から「新聞はいずれテーラードシステム(必要な記事だけを読者に届ける)を導入することになるかもしれない」という言葉が印象的でした。ネット時代になってコンテンツの個別配信(タダですが)が当たり前のようになっている昨今を予見していたのかもしれません。
 新井先生が亡くなられて今年で10周忌になるのですね。


※柳澤伸司氏は「新聞の再販制度を自ら否定する値引き・景品の提供」という論文も書かれています。
http://www.ritsumei.ac.jp/kic/~syt01970/page222.html

posted by 今だけ委員長 at 23:51 | Comment(0) | TrackBack(0) | 書籍紹介

2009年09月16日

民社国連立内閣が発足 官僚よりも米国とたたかえる布陣なのか…

 きょう、民主党の鳩山由紀夫代表が第93代、60人目の首相に選出され、民社国の連立内閣が発足しました。きのうまで、各メディア報じていた閣僚予測とほぼ同じですが、長妻昭氏(厚生労働省)と仙石由人氏(行政刷新担当相)のポストが入れ替わったくらいでしょうか。

 新しい閣僚のなかで直接話をうかがったことがあるのは福島瑞穂さんだけなので、そのほかの方は著書やテレビで話されることをイメージするしかありませんが、どうなのでしょう。官僚というか米国(ロックフェラー)とたたかえる布陣なのでしょうか…。
 Yahoo!「みんなの政治」で行っている新閣僚の評価が意外とオモシロいです。
http://seiji.yahoo.co.jp/close_up/073/detail.html


 一部のブロガーなどは、「民主党が政権を握ると新聞をはじめとする主要メディアの既得権が温存される」という趣旨の主張が多いように感じますが、私はまったく逆ではないかと感じています。
 きのうのブログにも書きましたが、鳩山首相は「首相官邸における記者会見の開放」を明言していますし、民主党が7月にまとめたマニフェストに「(テレビ局の免許などに関連する)通信・放送行政を総務省から切り離し、独立性の高い『通信・放送委員会(日本版FCC)』を設置する」と明記されていることを見れば、既存メディアに対してそう甘くない。民主党議員で今回の衆院選で3選を果たした近藤洋介氏(山形2区)も新聞特殊指定の撤廃論者ですし…。


 先月、8月26日付の新聞情報(新聞情報社発行)に再販制度や特殊指定の必要性や消費税の提言税率などに関するアンケートのまとめが載っていました。

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posted by 今だけ委員長 at 23:50 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時事ニュース

2009年09月15日

新聞週間 公開パネルのテーマは「政治報道を考える」だが…

 「新聞週間」が10月15日からはじまります。新聞協会が主催するイベントで全国各地で講演会の催しや試読紙配布キャンペーンなどが系統を超えて行われます。
 2003年からは「春の新聞週間」も実施されているので、「秋の新聞週間」と呼んでもよさそうな気もしますが、新聞界のメーンイベントはやはり10月15日から1週間行われる「新聞週間」なのだそうです。

 期間中の日曜日を「新聞配達の日」としています。今年のイメージキャラクターは欽ちゃん野球団の片岡安祐美さん。
  新聞配達の日.jpg

 毎年「標語」を募集するのですが、今回は「宅配で 届くぬくもり 活字の重み」となりました。この言葉を胸に秘めてがんばりましょう!
 そのほか、「佳作」に選ばれた作品は以下の通り。


▽ ハイ!新聞 いい朝いい顔 いいニュース
▽ 届けます 世界のきょうを 確かなあすを
▽ みんな待つ あなたの運ぶそのニュース
▽ 作る人配る人 真実届ける思いはひとつ
▽ 新聞が届く安心 伝わる真心 井上 まゆみ
▽ 情報を届ける笑顔はぐくむ信頼 車谷 祐樹
▽ 人の手が 届けるニュース 手に取るよろこび
▽ 君の手が 世界の今を 橋渡し 鈴木 健之
▽ 宅配をささえる読者のありがとう 福島 進
▽ 宅配は 気くばり目くばり 心もくばり

 また、今回の「記念の集い」(公開パネルディスカッション)のテーマは、「政治報道を考える」だそうです。

 民主党が掲げる記者クラブ問題(首相に就任予定の鳩山氏が首相官邸の会見を開放する表明したことを受けて)などを取り上げた方が盛り上がると思うのですが…。

 フリージャーナリストの上杉隆氏は、週刊ダイヤモンドのコラム「
鳩山新政権は記者クラブ開放という歴史的な一歩を踏み出せるか」のなかで、「(ようやくジャーナリストとしてこの10年間の苦労が報われる時がやってくるとして)鳩山内閣の発足と同時に、本当に記者会見をすべてのメディアに開放するかどうかに尽きる。換言すれば、明治以来、戦後を含めて官僚システムと一体となって続いてきた記者クラブ制度にメスが入るかどうかという点である」と鳩山政権へ期待しつつ、「(記者クラブの解放は)権力とメディアの関係が健全化する絶好のチャンスだ。民主主義国家で唯一存在する記者クラブが改革される日が訪れようとしている」と結んでいます。

 このような論点を報じ(提起)る新聞社は皆無です。新興メディアを排除して閉鎖的な「仲良しクラブ(聖域)」を守ろうとすると、権力との立ち位置も微妙な捉え方をされるものです。権力をチェックするために内部に入り込んで取材をする既得権は生かすべきだと思いますが、(施設・設備使用料もきちんと支払って)多くのメディアが出入りできる記者クラブを創造する時期に来ているのではないでしょうか。新聞倫理綱領で「多様な言論の保障」をうたう新聞協会こそが、このあたりのジレンマを切りこんでいかないと―と思うのですが…。
*   *   *   *   *   *   *   *   *   *   *   *
「政治報道を考える〜歴史的転換期にある政治とどう向き合うか」

 政権選択を争点に衆院総選挙が実施された今夏、日本列島に民主圧勝の風が吹き荒れました。衆院選前後、報道機関は総力を挙げて各党が掲げた政策の課題、日本の将来像を分析。さらに市民の率直な声、政治をめぐる人間ドラマ、海外の視点も切り口に、連日、多彩なニュースを報道しました。歴史的転換点とも言える衆院選を中心に、政治報道の意義と課題、求められる役割について考えます。

〈パネリスト〉 河野洋平氏(前衆議院議員) 、西崎文子氏(成蹊大学法学部長・同教授)、村岡彰敏氏(読売新聞東京本社政治部長)、岩田栄一氏(TBSテレビ政治部長)
〈コーディネーター〉 星  浩氏(朝日新聞東京本社編集委員)

日時:10月21日(水) 午後6時
会場:プレスセンターホール(千代田区内幸町)
詳細は、日本新聞協会HP

【追記】
非記者クラブメディアを排除した鳩山首相初会見への落胆(上杉隆)
http://diamond.jp/series/uesugi/10094/

posted by 今だけ委員長 at 23:12 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2009年09月10日

販売正常化で是正すべき問題は2つある

 神戸新聞社に勤める仲間から、販売正常化のチラシ(全系統販売店の連名で)が新聞に折り込まれてきたという連絡を受けました。
 灘区.jpg
 販売店の連名によるチラシは、おととしの春に東京都内の販売店が「金券提供による拡販行為をやめる」と宣言したチラシ以来ではないかと思います。新聞公正取引協議会(中央協)の地方組織の支部協議会(新聞社販売局と販売店らで構成)が音頭を取って作られたものだと思います。この手作り感がなんとも言えませんが・・・。

 今年度から中央協の委員長に就任した飯田真也氏(朝日新聞東京本社役員待遇販売担当販売局長)が掲げた「公正販売の実現に向けて(さらなる販売正常化に向けた委員長提案)」でも、「関西地区の販売正常化を推進する」とうたっていたので、「ふぅーん」という程度で理解していましたが、少しは動きが出てきたようです。
 この販売正常化推進の動きには、2つの要素が絡んでいると見ています。ひとつは飯田委員長のパフォーマンス。すでにこの関西地区をターゲットにした販売正常化プログラムは昨年あたりから計画されていて、今年5月の時点でそのスケジュールが組まれていました。なかでも新聞大会で3度目となる「公正販売の実現に向けて」の共同宣言を行うというシナリオも描かれています。

公正販売の実現に向けて

【スケジュール】
@10月の新聞大会で、「公正販売の実現に向けて」の共同宣言を盛り込んでもらう。そのために、新聞協会理事会に働きかける。
A中央協が毎年実施する読者調査では京阪神・近畿地区の違反率が多く、そのため販売正常化のモデル地区となった経緯があるが、現在もこの地区が最も問題を抱えている。関西地区の販売正常化を推進するため、関西7社の経営トップと販売責任者の合同会議を9月に開催し、関西の再引き締めを行う。会合の詳細については関西7社の販売局長に検討を依頼する。
B11月の新聞公正取引協議会委員総会で。「販売正常化」の徹底を全国に呼びかける。
                                 (中央協だより 7月10日付)


 9月16日に大阪市で開催予定の「関西新聞販売正常化推進会議」には、新聞協会会長の内山斉氏(読売新聞グループ社長)、同協会販売正常化委員長の秋山耿太郎氏(朝日新聞社社長)も参加するようです。ANY連合主導の販売正常化の動きに注目したいと思います。

 もうひとつは、広告不況で販売店への助成(景品斡旋や補助金など)をする体力が新聞社になくなっていることです。各新聞社は広告収入減を乗り越えようとさまざまな予算の見直しをしています。これまで販売局の膨大な予算はいわば、緊急時の安全弁の役割を担ってきたのですが、ここにきてそれが立ち行かなくなってきたとの指摘もあります。紙面の広告単価を維持するために相当な経費をかけ、部数第一主義を貫いてきた新聞社も利益重視の販売政策に切り替えてきたのでしょう。
 景品使用を沈静化させるべく高額景品を使った拡販行為をやめようと業界内部へ促し、「ルールを守らない一部の拡張員(販売店)による違法行為を撲滅してルール順守に努めます」といったアピールを読者へ浸透させ、契約時の景品要求に対して断る口実を作ろうというのが狙いなのだと思います。


 私が考える販売正常化とは、読者に対する不平等を無くすことと、新聞社と販売店の取引関係を正常にすることです。

 読者からの苦情で一番増えているのは、長年同じ新聞を購読しているのに何のサービスも受けられないで、しょっちゅう新聞(購読)を切り替える一部の人だけが景品の提供(恩恵)を受けているという不平等感です。
 近年は契約社会となっていますが、新聞の場合は購読紙を定期的に切り替える世帯以外は、「購読中止の連絡を受けるまで」は自動更新として扱われています。長年購読している世帯は契約書すら存在しない口約束で商売が成り立っているのです。とてもありがたいし、それだけ信頼があるからだと思っています。でもそれに甘んじて、(読者ではなく)部数を伸ばしたいがために、こっそり景品を渡して契約を結んでしまう…。親の代から長年購読されている読者の方がロイヤルティは高いのに…。だからといって再販協議会のメンバーのように「長期購読者には安くしなさい」とは申しませんが、その辺の認識を変える必要があると思います。

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posted by 今だけ委員長 at 01:40 | Comment(0) | TrackBack(0) | 新聞販売問題

2009年09月02日

リクルートが無料タブ情報紙「3TIMESPRESS」を創刊

 R25の存廃がささやかれているリクルートが、新たなフリーペーパー「3TIMESPRESS(スリータイムズプレス)」を8月31日に創刊しました。
  3times_img.jpg
 編集を担うのは、以前にもこのブログで紹介したR25の立役者、藤井大輔氏。

 同紙は30〜40代の働く男女をターゲットに「仕事TIME」「趣味TIME」「週末TIME」の3つの生活シーンに対して実用的な情報を提供するというコンセプト野フリーペーパー。R25のような雑誌タイプではなくタブロイド版(16〜20ページ、オールカラー。B3変形の右開き)で、7万部を発行するといいます。発行日は毎月初旬と中旬の月曜日の月2回。東急電鉄の主要44駅、48の専用ラック設置して配布します。

 藤井さんの著書を読むと、R25を創刊する際に「M1世代のニーズ」を把握するのが一番大変だったそうですが、「ダビンチ」も手掛けた藤井さんですから、(同世代の)30〜40代のニーズをつかむのはお手のものかもしれませんね。
新聞とは違い、雑誌やフリーペーパーは入れ替えが相当激しいものです。

 しかし、なぜリクルートはネットでの配信に特化せず、「紙」にこだわるのか…。やっぱりネットは儲からないからなのかなぁ。

【追記】

「R25」が隔週刊行に
リクルートは、無料週刊誌「R25」を、月2回の発行に変更した。
 「R25」は、これまで毎週木曜刊行となっていたが、媒体資料では、第1、第3木曜日の隔週刊行に変更されている。駅や店舗での配布を毎週楽しみにしていた人は、これからは少しさびしくなりそうだ。(マーケジン:2009/10/09 )

【追記2】
リクルートとYahoo! JAPAN フリーマガジン『R25』のインターネット・モバイル事業において事業提携
株式会社リクルート(本社:東京都千代田区 代表取締役社長 兼 CEO:柏木斉 以下リクルート)とYahoo! JAPANを運営するヤフー株式会社(本社:東京都港区 代表取締役社長:井上雅博 以下Yahoo! JAPAN)は10月15日、リクルート発行のフリーマガジン『R25』のインターネット・モバイル事業において事業提携し、同事業を共同展開することに基本合意しました。(リクルートプレスリリース:2009年10月15日)

posted by 今だけ委員長 at 20:58 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

日経よ お前もか…/広告激減に苦しむ新聞産業

 日本経済新聞社の2009年12月期中間決算が1日、連結決算をしているテレビ東京(親会社の決算に関するお知らせ)から発信されました。
 以下、アサヒ・コムより引用


 日本経済新聞社が1日発表した09年6月中間連結決算は、本業のもうけを示す営業損益が8億5千万円の赤字(前年同期は130億円の黒字)、純損益は55億円の赤字(前年同期は59億円の黒字)となり、連結決算の公表を始めた00年以降では初の赤字となった。新聞や雑誌の広告収入に加え、インターネットの情報サービス収入も落ち込んだことが響いた。売上高は前年同期比14.7%減の1586億円だった。


 広告収入の落ち込みは予想していましたが、「インターネットの情報サービス収入も落ち込んだことが響いた」と解説されています。同社ネット部門の稼ぎ頭だった「日経テレコン21」が減収したのかなぁ。契約件数が激減したとか…。
 同社は、来年春以降に電子新聞を発行することを発表していますが、新たな収益基盤となり得るのか注目したいところです。

(参考資料)
■日経新聞、初の赤字 広告やネット収入減 6月中間決算(アサヒ・コム 9月1日)
http://www.asahi.com/business/update/0901/TKY200909010448.html
■赤字に転落した日経新聞の2009年12月期中間連結決算をグラフ化してみる(Garbagenews.com 9月2日)
http://www.garbagenews.net/archives/981371.html
■日本経済新聞社 2009年12月期中間決算内容(テレビ東京 9月1日)
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120090901095115.pdf


 広告収入の激減が、新聞社のみならずマスメディア産業の経営基盤を揺るがしていることは周知の通り。日経広告研究所は09年度の国内広告費の予測について、今年1月に公表した「前年度比2.9%減」を大幅に下方修正し、「前年度比15%減」との予測を打ち出しました。特に新聞と雑誌の落ち込みが大きく、新聞が21.3%減、雑誌も23.3%減という予測です。「衆院選の特需もあまり効果はなく、インターネット広告の成長も鈍化している」と指摘され、この厳しい状況は2010年まで続くと結論付けています。

 民主党へ政権が代わっても将来的な生活不安は拭えないため、消費の低迷は続くのでしょう。経済が活性化しない限り、広告費の回復は期待できません。これから先、新聞産業をどう舵取りしていけばよいのか…。残念ながらダウンサイズをしながら、販売収入が下がらない努力をしていくしかありません。そのためには紙面のカスタマイズも必要視されてくると思います。

 今年3月22日付けの朝日新聞に掲載された「新聞よ、どこへいくのか」の特集で、「新聞が生き残るためには何が必要だと思いますか?」の問いに対して、イラストレーターのみうらじゅん氏がこうコメントしていました「今を耐える勇気」。
 朝日や日経が目指すメディアコングロマリット路線は、時代の趨勢かもしれませんが、今の厳しい状況を耐えながら新聞本来の役割を担っていくことが見直されてくると思っています。

posted by 今だけ委員長 at 07:49 | Comment(0) | TrackBack(1) | 時事ニュース
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