2009年04月30日

絶版は立ち読みできないのが難点…

  マスメディア法政策史.jpg
マス・メディア法政策史研究
著者 内川芳美(有斐閣)8,064円(絶版でオークションで14,000円程度)

 新聞業界にはさまざまな法規制があります。正確に数えたことはありませんが、200項くらいはあると記憶しています。ただし、現状と照らし合わせると形骸化しているものも少なくありません。法律が時代の変化に合わなくなっているのか、新聞業界が法律を無視して慣行化されているものがあったり・・・。


 私が末席を汚している新聞労連の産業政策研究会で、新聞に関連する法律の実態比較のために資料として購入しました。しかし、内容は新聞紙法の歴史がその大部分を占め、資料としてはあまり活用できないものでした。
 著書のレビューを参考にはしていますが、まず一度立ち読みをするのが一番ですね。


 新聞・出版編(大津事件の報道統制と緊急勅令;新聞発行停止行政処分権の廃止―明治30年新聞紙条例1部改正をめぐって;新文聞紙法の制定過程とその特質;新聞紙法改正運動とその帰結;言論統制装置としての出版物納本制度―出版物納付法案の問題と意味;内閣情報局の設立過程―日本ファシズム形成期のマス・メディア組織化政策;昭和前期マス・メディア統制の法と機構;占領下のマス・メディア)
放送編(戦後放送制度の確立過程;占領下の放送制度改革;アメリカの放送政策における社会的責任論―1946年FCCブルー・ブックの意義を中心に;イギリス政治放送制度;アメリカの放送と公正原則;放送におけるマス・メディア集中排除政策)
国際コミニュケーション編(新世界情報・コミュニケーション秩序問題;国際報道の法的倫理的諸問題―マクブライド委員会報告書を中心に;コミュニケートする権利の概念)


posted by 今だけ委員長 at 23:10 | Comment(0) | TrackBack(0) | 書籍紹介

2009年04月29日

新聞社の経営問題が見えてくる

   日本の五大新聞.jpg
徹底検証 日本の五大新聞
著者 奥村 宏(七つ森書館)1,890円


 最近、新聞をはじめとするメディア関連の書籍を読んで感じることは、時代の変化が著しいメディア業界にあって、新聞をテーマに執筆される方に高齢の方が特に多いということ。どうしても先輩方の結論は業界への応援歌でしかなく、精神論に走りがちなのですが、著者の奥村宏さん(1930年生まれ)は経営理論の専門家として冷静に新聞業界の問題点を指摘しています。それから多くの文献(引用文献は24)も紹介されているので、とても参考になります。

 読売、朝日、日経、毎日、産経の順(昔から朝・毎・読・日・産という順番でしたが…)で、各社の問題点が経営的な観点から指摘されています。
 第1章の読売新聞(独裁者が支配する世界最大の新聞)では、経営安定(1000万部を維持するために)のために右傾化したところで、政府や有力政治家に取り込んで国有地を払い下げてもらったり、銀行からの資金調達でも有利な扱いを受けることがあっても、発行部数には関係ないと指摘。読売の発行部数が増えたことで読者が右傾化しているとは到底言えず、販売店に配達されずに山積みされている「押し紙」が1000万部を支えているという公称部数の本質を分かりやすく解説しています。
 さらに、新聞社の経営を改善するためには新聞社そのものの在り方を変える必要があると主張する筆者。そのことを新聞記者、そして労働組合がさとることがまず必要なのではないかとメッセージを送っています。


 また、会社学研究家の肩書を持つ筆者は、新聞社と大学が似かよった構造であると解説しています。
 新聞社の生き残りについては、記者自身が専門性を持つことと、「人の顔が見える」小規模な組織へ再編すべきだとの結論を出されています。

 新聞社の経営などに興味がある方には、とても参考に一冊だと思います。

posted by 今だけ委員長 at 23:17 | Comment(0) | TrackBack(1) | 書籍紹介

2009年04月28日

アカチャン本舗でこんなものを発見!

 赤ん坊があすで5カ月になります。夜泣きもせず親孝行な娘は、今のところ順調に成長してくれています。
 
9c390762973a235f968f80dbee09d7ad.jpg 子供を授かる前は、こんなにも子供中心の生活へシフトするなんて思っていなかったのですが、甘かった…
 やはり人を育てるということは大変なことなのだと、あらためて自覚しています。B嫁にも頭が下がる思いです。

 GWも明日は仕事ですが、あとは暦通りのお休み。この半年間は映画館にも行けず、アマゾンで購入した本も未開封のまま積み上がっているこの頃ですが、B嫁に“ガス抜き”をさせてやろうと「娘と留守番」の連休になりそうです。

 さて、休日はB嫁のアッシー君に専念するわたし。食材は地元若林区にあるスーパーや商店で買い求めるのですが、最近は泉区の「アカチャン本舗」へ行く機会が増えています。
 いろいろ見て回ると意外に飽きないもので、つい衝動買いをしてしまうことも。
 
980391e08a450c4f2941ee6fa3ea78a3.jpg こんなものを見つけました「赤ちゃん新聞」と「赤ちゃんチラシ」。赤ちゃんは目にするものすべてに興味津津。広げてある新聞をくちゃくちゃするのも大好きだとか。「赤ちゃん新聞」はインクによる汚れもなく、手触りも新聞紙に似せてあって、結構売れているとか(テレビ番組で紹介されたらしいです)。

 うちでは三紙購読しているので現物でくちゃくちゃさせたいと思っています。
posted by 今だけ委員長 at 11:28 | Comment(0) | TrackBack(0) | こせきかつや通信

2009年04月21日

「再発見!町内会の役割」コミュを始めます

 ここのところ、年度替わりでバタバタとしていたこともあって“ふらっと”の書き込みが滞ってしまいました。まぁ正直なところ、皆さんに発信するようなネタがなかったというのも正直なところです。

 ブログは個人日記ですから、日々感じたことを気軽につづればよいのですが、私のような飽きっぽい人間は何かテーマを見つけて(ゴールに向かって)いかないと長続きしないという自己分析をしています。

 その意味では個人ブログを書くというよりは、この“ふらっと”(SNS)のコミュニティのフィールドでテーマごとの意見交換をしていった方が性に合うと思い返しました。そうそう“ふらっと”って地域SNSなのだ、と。

 そこで、今月から1年間の任期で、町内会の部長を仰せつかったものですから、町内会をテーマにしたコミュニティ(再発見!町内会の役割)を立ち上げました。
 結構催しが多い町内会なので、いろいろな体験記や地域コミュニティの問題点などを感じたままに発信していこう(無理しません)と思っています。

▽再発見!町内会の役割
http://flat.kahoku.co.jp/s/chounai/
posted by 今だけ委員長 at 11:15 | Comment(0) | TrackBack(0) | こせきかつや通信

2009年04月07日

ジャーナリストを名乗るなら企業人の前に人間たれ!

 「読売新聞社は、司法制度を利用した言論弾圧を真摯に反省し、報道機関・言論機関としてあるべき行動をとれ」 3月30日に新聞販売店弁護団が全国の報道機関へ出した声明の見出しです。

 新聞販売黒書を運営しているフリージャーナリスト黒藪哲哉氏と読売新聞西部本社法務室長の江崎徹志氏との間で争われていた裁判(原告、江崎氏の催告書をHPに掲載した被告、黒藪氏への著作権侵害と掲載差し止めを求めた裁判)の判決が出されました。
 提訴の段階で、よく裁判所が受け付けたものだと思っていましたが、当然のことながら、原告の江崎氏の請求は棄却されました。
 弁護団の声明には、以下のようなことが書かれてあります。

 本件判決により、読売新聞社は、およそ著作物とは言えない書面をもって、しかも他人が作成した書面を自社法務室長が作成したとまで偽って、被告の言論活動を封殺しようとしていたことが明らかとなりました。
 我々弁護団としては、読売新聞社が、かかる暴挙を反省するとともに、報道機関、言論機関であることを深く自覚し、このような言いがかり的な訴訟に頼ることなく、言論には言論で対抗するという報道機関の本分に立ち返るよう切望するものです。


 蟻が象を倒そうなどとは誰も思っていません。ですが、なぜ象のまわりに蟻が命を掛けて抗うのか。社会のルールに則って、当たり前のことをしていれば蟻がよることもないはずです。
 紙面で報じられる食の安全を脅かした数々の偽装問題も、自分さえよければという儲け主義に経営者が走ったからです。儲けることは悪いことではないけれど、偽装行為は許されるものではないと紙面には書いてあるはず…。


 今回の裁判で明らかになったことは、偽装部数問題を社会に向かって発信している黒藪氏の言論活動を抑え込もうと、象が蟻を訴えたものです。日本を代表し、世界一発行部数を誇る読売新聞社は何を見誤ったのでしょうか。私も同社に多くの仲間がいるし、素晴らしい記者の方も多いことを知っています。それなのに・・・。今回、読売新聞社が取った行動を彼らはどのように見ているのでしょうか。企業人である前にジャーナリストを自負するなら人間であってもらいたい、そう思うのです。

 「押し紙」の存在は早急に改善させなければならない問題ですが、日本の新聞社が言論封殺まで行おうとしているなんてあり得ない。そう思いたいのだけれど、このような問題が出てくるたびに新聞社への信頼が揺らいでいくのです。もしかすると多くの読者がそう見限っているから、新聞離れが加速しているのかもしれません。


 今回の裁判所判決を報じた新聞社はありません。赤旗とネットメディアのみです。新聞社という報道機関に携わり、生活をしている皆さんに問いたい。このまま知らないふりをするのですかと。


▽販売店弁護団による「判決のご報告」
http://www.syuppan.net/uploads/smartsection/68_hokoku0903.pdf
▽出版労連の談話
http://www.syuppan.net/modules/news/article.php?storyid=67
▽「押し紙裁判」フリー記者が読売に勝訴/JanJan
http://www.news.janjan.jp/media/0903/0903300549/1.php
▽ジャーナリスト黒薮さん、「押し紙」著作権裁判に勝訴/Jcastニュース
http://www.j-cast.com/2009/04/02038733.html

posted by 今だけ委員長 at 01:34 | Comment(2) | TrackBack(0) | きょうの喜怒哀楽

2009年04月06日

見せる売上増、見えない経営実態

 メディア・パブによると、米グーグル傘下の動画投稿サイト「ユーチューブ」の経営状況が思わしくないことを伝えています。同サイトの2009年赤字が4億7000万ドルに達すると予測されているとのこと。


 ネット上でフリーソフトを無料提供するビジネスモデルは、広告収入が集まらないと運営が続けられないもの。魅力あるコンテンツを提供すれば閲覧数(PV・UU)があがり、広告がついてくるという収入構造(ユーザーの個人情報をデータ化したアプローチ手法もありますが)によって、企業活動がなされているわけです。


 私もたまにユーチューブを利用して「懐かしのヒットメドレー(70年代)」などを見ながら、リフレッシュをすることがあります。「ユーザーがコンテンツを配信しているのだから、そんなに経費はかからないのでは」と思っていたのですが、膨大なデータを蓄積するサーバー管理だけで相当な経費がかかるようです。また公序良俗に触れる配信をチェックし、削除するスタッフの雇用も情報量とともに拡充していかなければならないようです。いくらアルゴリズムを施しても、最後は「人の目」による確認ということになるわけです。


 先のエントリーでも取り上げましたが、2008年の総広告費が前年比4.7%減で、5年ぶりに減少しました。マス四媒体が苦戦を強いられているなかで、ネット広告が16.3%の伸長を示していますがウェブ広告企業の経営状況が良くなっているのかと言えば、必ずしもそうではありません。「売上の伸び」は見せるけれども「かさむ経費」はあまり公開されず、低賃金で働いているSEの方も少なくないと聞いています。

 「モノが売れない時代」に入り、ネット広告が右肩上がりの成長を続けられるわけがないと思っていますし、根本的な問題として経済が活性化しないと広告全体が落ち込むわけです。新聞広告は苦戦が続いていますが、あたかも「新聞広告はネットに食われている」と結論づけるのではなく、購読者数の問題、信頼性の問題など、新聞の媒体価値を問い詰めなおす必要がるのではないでしょうか。あまり時間はありませんが…


 以下に、元日経広告研究所専務理事の森内豊四さんからいただいたメールを引用します。


 当面の新聞の経営危機は広告不振にあります。その原因をちょっと考えてほしいものです。いつも同じことばかり言うようですが、いくら広告をしてもモノは売れないし、赤字で軍資金もないわけですから、機構・組織をいじくり名称を変えて売り込みを図っても、企業は見向きするはずありません。
 すさまじく単価が下がり不信を招くだけで、これでは傷口を広げるばかりです。
 今どんな業界も供給を落とし、在庫減らしに必死です。ここは広告紙面を大幅に縮小するしかないはずです。ムダな広告紙面を少しでも減らすことが、ジャーナリストの好きな地球環境への対処にもつながるわけではないですか。
 こういう状況下では、ネットやモバイルも大した伸びは期待できません。サイトが増えた分、ネット企業の経営も苦しくなっています。
 紙媒体とセットで売れば何とかなる?
そんなことあり得ません。元の蛇口が固く閉まったままですから。問われているのは、広告自体の値打ちです。
 広告はしばらく逼塞するしかないでしょう。組織縮小(広告部員削減)ができなければ、給料カットでみんなで支え合いましょう。ワークシェリングだと思えばいい。
 消費者が倹約疲れすれば、そのうち徐々に消費も動き出します。その時、先見の明のある経営者は打って出るでしょう。広告はモノが少し動き始めたときこそ効くもので、効果が実感できれば、広告主の方から申し込んできます。
 その時のためにも、定価の8割引などといった無理な広告取りの作業は止めましょう。一度値下がりした広告単価は容易に上がらないものです。何しろ広告の原価など説明しようがないわけですから。
 広告ビジネスの成り立ちや営業に求められる機微を知らない新聞記者出身の広告幹部が、広告営業をリードできるはずがありません。そういう連中が現場のやる気を削ぎ、広告会社の支援を失っていることを、経営トップはもっと理解しなければなりません。
やれ「ソリューション型営業」、それとも「企画提案型営業」?どこかの代理店の者が口にするようなご託をならべるのはやめましょう。
 新聞社の広告営業の基本は、広告主への広告紙面の売り込みではなく、自紙の読者の意識や嗜好、生活感情を正しく広告主に伝えていき、プランニングの参考にしてもらうことしかありません。代理店と同じことをやっても負けます。
いまは、一歩退いて、全体を根源から捉え直しましょう。

森内豊四

posted by 今だけ委員長 at 07:13 | Comment(2) | TrackBack(0) | 日記

2009年04月02日

新聞産業に危機感を持ち始めたころの本を読み返し

新聞は生き残れるか.jpg
新聞は生き残れるか
著者 中馬清福(岩波新書)735円


 新年度を迎え、久しぶりに書棚を整理していたら、中途半端に飛ばし読みをしたままの本がいくつか出てきました。

 この本も2003年4月が初版で、ここ数年の新聞没落ブームの前に新聞業界への警鐘を鳴らしたもの。内容はジャーナリズムにシフトした構成になっているものの、新聞が“生き抜く”ために必要なことが書かれてあり、とても参考になります。若者の新聞離れ、「表現の自由」絶対論の後退など編集系の方に読んでいただきたい内容がふんだんに取り上げられています。
 一方で、新聞の上から目線に対しても、鋭く言及しています。
「日本の新聞は旧武士階級が農耕商階級を教え諭す形で成長した教論型メディアだ、というのが私の考えだが、この教えを諭すスタイルの記事が、いま読者に強く嫌われている。もともと新聞が啓蒙的な物言いに走りやすいのは、自覚を呼びかける相手を本心では信用していないからではないのか」(以上引用)との著者の分析は、ほとんど納得できるものです。

 新聞人の常識がいつの間にか市民と離れていったのではなく、頼るものが新聞ではなくても済む時代になってきたいま、新聞は何をすれば生き残れるのか。興味深く読み返しができた一冊です。

posted by 今だけ委員長 at 20:13 | Comment(2) | TrackBack(0) | 書籍紹介
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