2006年06月30日

物流業界の再編と新聞販売店

 最近サボっていましたが、物流関連のニュースを溜め込んでいたのでチョットまとめてエントリーします。
 まず2週間前からガヤガヤと郵政公社の動きが慌しくなってきました。ヤマトが動くと郵政公社も追随する構図が物流業界の当たり前になってきています。

ネタ@郵政公社、郵便強化に1800億円投資・06年度
 郵政公社が手紙やはがき、小包を扱う郵便事業を強化するために昨年度の4倍(1800億円)資金投入のニュース。「ゆうパック」冷凍配達版の整備や、インターネットを使ったサービスを充実させるという。2007年10月の民営化を前に駆け込み的な大規模投資に「民業圧迫」という批判が続出する可能性は大!民営化される郵便と貯金、保険の事業分割があるため、その前に郵便事業で大型投資をするのが得策と判断しようです。

ネタA郵便局再編、1048局で集配中止・来年3月までに
 郵政公社が郵便物の集荷や配達をする集配郵便局の再編策を固めたというニュース。現在、集配業務をしている約4700局のうち、1048局は業務を近隣の局に移管して窓口業務に特化するとのこと。再編策は集配業務をしている約4700局を(1)郵便物の集荷・選別・配達をする「統括センター」(1088局)(2)集荷・配達をする「配達センター」(2560局)(3)窓口業務だけの無集配局(1048局)の3つに分けるということです。これで年間100億円の費用削減? もう生き残り策? 利益追求で利用者のこと考えてないのねぇ!

ネタB郵政公社、国際物流合弁白紙に・オランダTNTとズレ
 郵政公社がオランダの物流大手TNTと進めてきた国際物流分野の提携交渉を白紙に戻すって言うニュース。これもヤマトの後追いだったような気がしますが・・・。今回の白紙撤回で世界進出戦略の見直しを迫られるのは必至だとのこと。

 そんでもって郵政公社のネタが続くとヤマトも黙ってはいられません。
ネタCヤマトなどの共同会社に12社参加、企業間物流が全国網に
 ヤマトと西濃運輸の両グループが共同出資で設立した物流会社「ボックスチャーター」に、8月からトナミ運輸、名鉄運輸など中堅トラック輸送12社が資本参加することになったというニュース。すでに日本通運の参加が決まっているこの会社、まだまだ膨らむ可能性があるんじゃないかなぁと思います。

 郵政公社VSヤマトに統合される民間物流会社―物流業界も大変な時代を迎えています。ガソリン代は値上がるは、駐車監視員制度の導入でツーマン態勢を余儀なくされるなど、間違いなく経費は嵩んでいるのですが…。競争を終えた後は、勝者がコストを引き上げて我慢した分の回収にまわるのでしょうか?

 そんな慌しい物流業界事情なのですが、こんな話題も入ってきました。6月は忙しいですねぇ信書便(ハガキ等)を扱う事業への民間事業者の参入促進策を検討している竹中平蔵総務相の研究会が、郵政公社の配達ネットワークなどの郵便網を、新規事業者が有料で利用できるようにすることを柱とした報告の要旨をまとめました。将来的には民間参入を全面自由化する案も盛り込むとのこと。詳しくは「とある新聞販売所の偏り日報」に要点がまとめられていますが、新聞販売店が物流部門で生き延びていけるか否か・・・。来年10月の民営化を前に、数千世帯へ約2時間の間に宅配ができる機能を持つ新聞販売店が、どう絡んでいけるのかどうかが問われてきます。夕刊は歩留まりが悪く、物流会社の下請け受注をしたメール便との併用で経費割れを補っていますが、何せ2輪車ではその物量も限られてくる。でも販売店が持ち合わせている地域顧客のデータは活かせると思うのですがねぇ。どちらにしても将来を見越した経営戦略を立てられなければ新聞販売店も運送業と同じで統廃合が進むこと間違いなし。でもその方(販売行為と配達業務の分離)が、健全な新聞業界への再生につながるのかなぁ。
posted by 今だけ委員長 at 23:06 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時事ニュース

2006年06月28日

韓国に見習おう「物流コスト節減狙い新聞共同配達開始」

 今だけ委員長が所属する労働組合では、新聞業界紙を3紙定期購読しています。早めに仕事を終えた時などは組合事務所に行って1週間分くらいたまった業界紙を拾い読みします(数字は参考にしませんウソが多いですから)。

 業界紙も「新聞特殊指定」の特需によって結構売れたのかなぁ…などと思いつつ、特殊指定の記事を後追いしていたらこんな記事を見つけました。
「公取委に遺憾の意を表明」新聞特殊指定存続決定当事者に説明なし

 日本新聞協会の6月度の理事会は21日午前11時から東京内幸町の同協会で開かれ、一般会計の収入が22億6234万円で、余剰金が82万円となった平成17年度決算などと、テレビ和歌山が6月30日をもって退会することを承認した。報告事項では、新聞業の特殊指定の見直しに関しては、公正取引委員会が2日、今回の見直し作業では結論を出すことを見合わせる方針を正式に発表して新聞特殊指定の存続が決まったことと、その敬意などについて報告があり、12日には新聞特殊指定プロジェクトチームの荒木高伸座長(朝日新聞社社長室)名で公取委の舟橋和幸取引部長あてに「(公取委の決定を)直接の話し合いの当事者組織に正式な説明がなされていないことは誠に遺憾だ」としたうえで、特殊指定の存在理由に理解を求める文書を提出したことや、同プロジェクトチームは所期の目的を達成したため解散することを決めた報告を了承し、北村正任会長(毎日新聞社社長)と秋山耿太郎再販対策特別委員会委員長(朝日新聞社社長)から、新聞特殊指定問題をめぐる会員各社の支援、協力に感謝の意が表明された。販売正常化に関しては、20日開催の6月度新聞公正取引協議委員会(中央協)の審議内容を中心とした報告があり…(新聞之新聞 2006年6月23日付)

 やはり今回の特殊指定問題の決着は公取委と議員連盟で決められたことが露呈しており、ジャーナリズムが権力に握られていると思わざるを得ません。また、公取委の肩を持つわけではありませんが、今だけ委員長は今年2月と5月に公取委に出向いて意見交換を行った時の話では、公取側が「新聞協会は公取委側の質問に対して、論点を摩り替えてばかりで全く質問の内容に答えてくれない」と語っていました。どちらの言い分が本当なのか?やはり公取委側も公開ディスカッションなどに参加(そうするとウソは書けませんから)してペーパーに残さないと「ペンの力?」に押されてしまうのです。ネット(HP)による発信だけでは世論形成とまでは行かないのでしょう。PJニュースもブログで新聞叩きをしていますが全体的な広がりには欠けているように感じます。だって新聞を読んでない人が、読んでいない人に対して書いてるんでしょうから…。

 もうひとつオモシロイ!?記事を見つけました。文化通信(6月19日付)2面に「韓国で新聞共同配達開始」という見出しで、「物流コスト節減狙い」というサブタイトルで掲載。韓国で昨年7月から施行された「新聞法」(新聞などの自由と機能保障に関する法律)によって「新聞流通院」が設置。今年春から、国の支援で新聞の共同配達が始まったという。また、同国の公正取引委員会が昨年4月から、新聞販売店の過大な景品に歯止めをかけるために「深刻報奨金制」を導入しているとし、日本と同様、公正取引法(日本の独禁法にあたる)により新聞に再販制度が認められ、新聞公正取引規約もある韓国で、新聞の流通にどのような変化が起きているのかという内容で、韓国出版研究所責任研究員、白源根氏が寄稿しています。
 本文を引用すると、今年4月26日に韓国で初めて新聞共同配達センターが開所された新聞流通院は、政府の公益特殊法人で、今年に全国50カ所(直営15、民営35)、2010年までに750カ所の地域共配センターを構築する目標を設けているとのこと。インターネットの煽りで新聞購読率が低下する中で、高費用低効率の構造は新聞産業の発展を損なうとし、国が新聞流通の現代化を目指し、読者には新聞選択権の改善、配達労働者の雇用安定と労働条件向上のために新聞共配を実現させたとのこと。実際には配達の物流コスト節減が狙いとの見方もあるようです。
 いまや韓国と言えばネット大国というイメージが強いのですが、言論機関(多様な言論)を守るために国による法整備や効率的な配達を手掛けているようです。このような記事を多くの新聞経営者に読んでもらって…
 日本と全く逆な方向ですよねぇ韓国は。韓国の新聞はなぜネット喰われたのでしょうか?なぜ日本は新聞が世論を動かす力をいまだに持ち続けているのでしょうか?『リテラシー』という言葉を最近よく耳にしますが国民性だけでは済まされないような気もします…。
posted by 今だけ委員長 at 00:09 | Comment(0) | TrackBack(0) | 特殊指定

2006年06月27日

新聞はなんと人間に似ていることか

明。新聞ものがたり.jpg
明治新聞ものがたり
著者:片山隆康(大阪経済法科大学出版部)1,545円

 新聞の歴史を辿ると、日本で「ニュース」が『商品』になったのは江戸時代初期からだということが分かる。「瓦版」と呼ばれた木版刷りの粗末な印刷物を売り子が街角で鐘を鳴らし“サワリ“を読み上げながら通行人に呼び掛けたことから「読売り瓦版」、「読売り」、「呼び売り」などと言われたようだ。この語源が現在の読売新聞のルーツなのかは不明だが、商品を陳列するだけでなく拡販する行為は現在の新聞拡張の走りなのだろう。
 慶応から明治元年にかけて鳥羽伏見の衝突など混乱を迎える中、噂話だけが駆け巡っていた時期に新聞は大歓迎されるのだが、官軍寄りの主張をする新聞は新政府軍によって言論統制の対象となる。それこそ新聞の大本営加担は明治初期にも起こり、それから幾度も繰り返されるのだ。その中で「官許」を得た新聞が東京、大阪、京都を中心に各地で芽吹く。「横浜毎日新聞」(1870年12月創刊)、「新聞雑誌」(1871年5月)、「東京日日新聞」(1872年2月)、「郵便報知新聞」(1982年6月)。横浜毎日は神奈川県知事の井関盛止良が音頭を取り地元の人に発行させた。東京日日は娯楽小説作家の篠野伝平ら3人が資金を募って創刊にこぎ着ける。その後、政党機関紙化した大新聞は軒並みよろめくことになる。東京日日に至っては一貫した漸進主義、天皇主権論を唱え、政府の代弁者と見られたことにある。読者は目減り、朝日新聞が殴りこみをかけてきたなどから経営難が訪れる。1886年12月には発行人の福地源一郎の名前が紙面から消えるのだが、新聞経営者は経営難に見舞われたとき、主義に殉じて新聞を道連れにするか、主義に目をつぶって売れる新聞に変えるか、そのいずれかの選択に迫られるがどっちも嫌だとなると経営を明け渡すしかない。福地は自分の信念を貫いた言論人だったのかもしれないが、信念に生きようとする新聞経営者は「前垂れをつけなくては新聞経営は成り立たない」という流れが、平成の現在でもルール無視の乱売やワイドショー的な報道姿勢というように商業化していると言える。

 この本は著者が毎日新聞社を1980年に退社し、大阪経済法科大学の客員教授の時代に書いたもので、37の文献を引用または参考にして書いてあるので明治の新聞(新聞社経営)の移り変わりが分かりやすく書いてある。あとがきにはこう記してある。「新聞はなんと人間に似ていることか」新聞史を振り返ってみてつくづくそう思う。時には感動を誘うまでに気高く理性的であった。時にはその言動は溜息を催すほどまでに動物的であった。雄々しく権威や時流に逆らったかと思うと、いじましく人気や評判を気にし、生きるために節を屈したことさえあった―。
posted by 今だけ委員長 at 22:40 | Comment(0) | TrackBack(0) | 書籍紹介

2006年06月26日

新聞特殊指定の問題を終わらせてはいけない

 もうすぐ2006年も折り返し。あと4日で下半期に突入するわけですが、今月2日には公取委が新聞特殊指定問題について「結論を出すことを見合わせる」とする発表がされるなど、新聞業界にとってはいろいろな意味で節目の月になりました。
 昨年11月2日に公取委が新聞を含む特殊指定8項目について、廃止も含めた見直しを検討すると発表されてから7カ月間、「新聞特殊指定は必要」との考えで行動してきました。公取委へも2回伺って意見交換をさせてもらったり、このブログにも「新聞特殊指定は廃止すべき」という意見が圧倒的に多かったのですがTBやコメントを書き込んでもらったり、販売店労働者の「声」を発信してきました。今年4月あたりからはページビューが4千アクセスになる日もあり、発信する責任を感じながらコツコツと動いてきました。
 「新聞特殊指定は必要だけれども、いまの新聞の販売行為や新聞社と販売店との取引関係を正して行かなければならない」と自分が働く販売会社でも労働組合の取り組みとして“業界内の問題”を改善させるべく活動していますが、なかなか前進していません。ルールを無視した新聞販売行為は、新聞特殊指定問題があろうとなかろうと関係なく続いています。新聞社経営と販売現場の実態に認識のズレ(知っているのに知らぬふりなのでしょうが)が大きくなればなるほど、読者と新聞との距離もさらに離れて行くものです。「新聞離れの原因は、新聞が読者から離れていった」という反省が全く生かされない。そして特殊指定問題も先延ばししただけで、新聞業界として読者への説明責任も正常販売の実行もされていません。“このまま”の状態ではもっと読者離れが進むと思うのですが…。

 先日、新聞業界紙の記者の方とお話しをする機会がありました。新聞特殊指定の主観やこのブログを読まれて感じられたことを90分程ざっくばらんに意見交換。以前このブログに「業界紙も新聞経営者に擦り寄る体質」という内容でエントリーしたことに触れ、「業界紙をひと括りにせずキチンと見比べてから意見を書くべきで、自分の社は今だけ委員長の指摘には必ずしも当てはまらない」との指摘も受けました。その記者の方は消費者の立場から新聞特殊指定は見直すべきとの意見を持っており、「どう考えても特殊指定が撤廃されれば各戸配達制度が崩れるという新聞業界の理屈は通用しないと思うのだが…」と悩まれていました。業界紙の方とはよくお話しをするのですが、胡散臭い方が多く販売店の人間なんて馬鹿にする方がほとんどでしたが、この方は本音で話しをしてくれましたし、業界のことを真剣に考えていらっしゃるのだなぁと感じました。。
 自らの業界を正当化するのではなく、読者のニーズやジャーナリズム論も含めて、新聞がその役割を全うし業界(新聞協会や日販協)が健全な判断をするための指南役を業界紙にも求めたいと思います。
posted by 今だけ委員長 at 23:45 | Comment(0) | TrackBack(0) | 特殊指定

2006年06月24日

メディアの役割!を考える「リレー講演」に行って来ました

 今日は昼休みを利用して、連続セミナー「いま、あらためてメディアの役割!を考える〜デジタルとケータイ文化の嵐を前にして〜」のセミナーに行って来ました。
 このセミナーはメディア・リテラシー・プロジェクト日本放送労働組合、河北新報労働組合が主催したもので、全5回開催されるセミナーの1回目。今回の講演者は東北大学大学院情報科学研究科の関本英太郎氏。演題は「多様な価値観の中での放送」でした。
        ポスター.jpg        関本さん 001.jpg
 内容は、ワンセグ、地上波デジタルなどのメディア環境の劇的な変化を踏まえ、ケータイ(NTTドコモ)の可能性と横並び主義の既存メディアのあり方を提起。論点として@多様な価値観A双方向性B公共性を挙げてパワーポイントを使った分かりやすい講演でした。

@時代のメディア環境―外的問題―
 ・技術的条件(デジタル化を受けて)
  伝統的メディア(テレビ、新聞、ラジオ)
       +
  ニューメディア(インターネット、ブログ、ケータイなど)
  2006年4月、「ワンセグ」スタート
  2011年 「地上波デジタル」スタート
A放送と通信の融合(もうテレビは要らない…とドコモが言っている)
 ・NTTの戦略「テレビは情報生活のハブへと進化する」
       ↓
  映像も活字もすべて「ドコモから…」
       ↓
  すべてのメディアは「ケータイ」に特化する!?
  『お茶の間の団欒のイメージは崩れる』
Bいよいよ氾濫する情報/垂れ流し
       ↓
 ・コンテンツの供給+質(送り手のリテラシー)
 ・受け手のリテラシー
Cローカル局を取り囲む、待っている厳しい現実
 (1)2011年、地上波デジタル
   ×ハイビジョンで映像がもっと綺麗に…?
   ○双方向性、データ情報入手
       ↓
   準備のための資金。民放の場合、広告料に反映される。間接的に一般視聴者にしわ寄せ。
 (2)ローカル局の現状
 ・自立? 自前の番組制作率は20%程度
 ・BSデジタル放送が本格的に普及されれば? 電波は空から遍く行き渡る。
 ・多チャンネル化の時代? 細分化、専門化
『論点』既存のメディアに「対抗戦略」を問う
 自ら「開かれたメディア」として、市民、視聴者の参加(公共性議論の場)、多様な価値観の反映、EPIC2014の危機…
Dプロとアマチュアの棲み分け、それゆえに「多様性」
 プロとして何を伝えるのか?取材力、調査力の歴然とした違い。人を育てる工夫、そのための教養講座など。

 以上、メモを列記しました。とても感慨深い内容の講演でした。あと4回開催されるセミナーもアップしていきたいと思います。
※「リレー講演」は、ドイツ語の「リングフォアトラーク」の訳です。前の講演者がテーマについて話をしたら、次の講演者はその講演内容を受けて話をする、という具合に継続していく。したがって、講演者はかならず前のセミナーに参加する。 ということです。
posted by 今だけ委員長 at 18:17 | Comment(2) | TrackBack(0) | 日記

2006年06月19日

格差社会を生んだ規制緩和 安全を守るため「揺り戻し法」でふたたび規制強化

 今国会で成立した法律のうち、政府が規制緩和を進めてきた交通、住宅、流通、金融などの分野で、再び規制を強化する「揺り戻し法」が20件になると朝日新聞が報じています。
 規制緩和による安全規制の不備が鉄道事故やマンションの耐震偽装事件の原因につながったと実質的に認めたわけです。規制緩和を進めてきた政府も「安全、安心」にかかわる分野では路線の修正を迫られているようです。

 最も大規模に規制を見直したのは交通分野。鉄道事業、航空、海上運送などの交通関連12法を改正する「運輸安全法」が成立し、鉄道、航空、運輸会社などに取締役の「安全統括管理者」を置くことや安全管理体制についての内部監査を義務づける。国の事業改善命令に従わない場合の罰金も引き上げた。
 昨年から今年にかけて公共交通機関の事故やトラブルが続発したことが改正のきっかけだ。90年代以降の規制緩和で、国の監査体制や企業の安全管理体制を十分に整えていなかった。
 昨年4月にはJR宝塚線(福知山線)の脱線事故が発生。01年に車体重量や車輪の大きさなどの数値基準を廃止したが、車体の軽量化などでコスト削減や効率化を進めようとする鉄道会社の安全軽視が指摘された。
 90年代に新規参入を認め、サービス競争を促した航空業界では、日本航空やスカイマークエアラインズの運航トラブルが続発。タクシー、トラック業界も競争激化で運転手の長時間労働が原因の交通事故が増えた。
 住宅では昨年11月、マンションなどの耐震強度偽装事件が発覚し、民間の指定確認検査機関が偽装を見抜けなかったことが問題になった。99年に建築確認を民間開放したが、耐震強度などを十分にチェックさせる体制ではなかった。今国会で建築基準法など関連4法を改正し、第三者機関による再チェックや罰則強化を盛り込んだ。
 北側国土交通相は16日の閣議後会見で「経済的な規制の緩和は大事だが、安全面のような社会的な規制まで緩くなってはいけない」と述べた。
 緩和一辺倒だったスーパーなどの小売業界に対する規制は、強化へと路線転換された。大型店の出店を制限してきた大規模小売店舗法(大店法)を緩和・廃止した結果、大型店が郊外出店へと流れ、中心商店街で閉鎖店舗が並ぶ「シャッター通り」化が深刻になったためだ。まちづくり3法のうち2法を改正し、大型店の郊外出店の原則禁止を打ち出した。
 90年代後半に証券取引や金融サービスの規制を緩和する「日本版ビッグバン」(金融制度改革)を進めた金融分野では、ライブドアの粉飾決算や村上ファンドのインサイダー取引疑惑の発覚で法律の抜け道が明らかになったほか、ハイリスクの金融商品で損失を被る消費者の被害も相次いだ。
 今国会で金融商品取引法を成立させ、企業買収のための株式公開買い付け(TOB)の規制や投資ファンドに対する規制を強化して取引の透明性を高めたほか、幅広い金融商品の販売ルールを定めた。


 「失われた10年」、バブル崩壊の後遺症はまだ尾を引いています。政府が推進してきた「競争促進」「効率重視」に乗った企業経営者は、文字で綴られているルールさえ守れば「何をやっても構わない」という倫理欠如の経営を“やむなし”としてきました。安い人件費を求めて社員の雇用を制限し、キャリアもなく立場の弱い契約社員へと切り替えていった行為が、結果的に『人命』まで危険にさらすことになってしまいました。
 また、「街づくり」にも大きな影響を与えています。「平成の大合併」、道州制への動きは地方分権の道を閉ざしてしまいました。大店舗法の緩和によって郊外型大手スーパーに対抗できない商店街はシャッター通りへと姿を変えてしまいました。過疎化が進み、個人情報保護の過度な取扱いによって地域コミュニティも活性化されない状況が続いています。
 はぁ〜。書きながら嫌になってきましたが、「他人よりもっと良い生活がしたい」という発想は誰しもが思うことです。でも、「自分さえ良ければ・・・」という風潮がこの国を染めているような気がしてなりません。「並み居る人を掻き分けて・・・」私たちが住む日本に合っているのか?と考えるこの頃です。
posted by 今だけ委員長 at 14:49 | Comment(2) | TrackBack(0) | 時事ニュース

2006年06月18日

東奥日報労組結成60周年 時代の節目に組織の役割とありがたさを確認

 今月に入って2回目の青森出張です。青森は人も街もとても優しく素敵なところで、プライベートで行きたいのですが今回も労働組合の出張です。
 青森には地元紙が3紙(地域紙は除きますが)あります。青森市を中心に一番の発行部数を誇る東奥日報。八戸地区を基盤とするデーリー東北新聞、津軽地区を網羅する陸奥新報。今回は東奥日報労働組合の結成60周年記念祝賀会(結成は1946年3月5日)に伺ってきました。
      東奥日報.jpg      東奥新聞少年像.jpg

 同労組は単なる祝賀会ではなく、社会問題など時代に即したテーマで記念講演を催しました。今回はクレーム処理研究会の川田茂雄氏が「社長を出せ!クレーム最前線と企業の危機管理」と題した記念講演がありました。
 川田氏は「消費者の四つの権利」消費者基本法(2004年6月から公布施行)@安全を求める権利A知らされる権利B選ぶ権利C意見を聞いてもらう権利―を消費者は有しているとの再定義をした上で、クレーム対応の基本を・たらい回しをしない・最秋の状態を最高の状態に変えて真の顧客作りをする・クレーム情報をきちんと社内にフィードバックする・徹底的な事故検証(原因を明らかにし、最適の解決方法を探る)などを事例とともに分かりやすく話されました。最後に「クレームは誰でも受けたくないもの、担当者だけに押し付けないで企業(メーカー)として、販売店やお客様も味方に付けながらクレームの対処をしていくことが重要」と締めくくられました。

 新聞は発行するまでが新聞社の仕事で、販売店が新聞を配達して代金回収、そして拡販行為もすべて販売店が行っていることになっていますが、メーカー側の責任はどうなのでしょう?読者は販売店も含めて新聞と思っています。読者からの一番のクレームが「新聞販売における違法な行為」なのですから、連帯責任とするのが当たり前なのでしょうが…。そうでなくとも紙面へのクレームもその多くが販売店へ寄せられる訳ですから…。
 読者からの声を「知らぬふり」する業界意識を早急に変えていかなければなりません。


 今だけ委員長は同労組の50周年記念式典にも出席したのですが、その時も佐高信氏、鎌田慧氏、藤森研氏(現朝日新聞論説委員)の基調講演を催すなど、絶えず新聞労働者の意識を高めていく活動には感心させられます。「組合の歴史を後世に伝えていく」という同労組の取り組みを見習いたいものです。
posted by 今だけ委員長 at 13:28 | Comment(3) | TrackBack(0) | 日記

2006年06月16日

本音を言わず二枚舌を使う業界体質 なぜ読者の声を聞こうとしないの?

 きのうは、仙台市青葉区にあるホテルで宮城県支部新聞公正取引協議会が主催する「宮城県新聞販売人大会」に参加してきました。宮城県内の新聞販売会社や新聞販売店の店主(所長)さんなど約200名の関係者が集まりました。
 それぞれの役職を担っている方の挨拶は、やはり新聞特殊指定に関する話が多くを占めました。「日販協による特殊指定維持を求める署名が58万8千人分集まった成果だ」、「再販と特殊指定は新聞の戸別配達には不可欠」と今回の公取が下した結果を「いかにも自らの力で維持させたものであり、業界の主張は正当である」と言わんばかりの挨拶が続く中、「公正な販売が第一であり世論の理解が得られているかは疑問」という内容のことを話された方もいて、「まだまともな方もいるのだなぁ」と思ったりしました。販売店側も読者の声を聞かないようにしているのかなぁ・・・。でも販売店の経営をしている方々だから、本音ではなく二枚舌で話しているのだろうと感じました。

 社団法人日本新聞販売協会(日販協)専務理事の前田博司氏の挨拶もかなりインパクトがありました。「業界紙にも載らない生くさい話をしたかったけれど、時間がないので詳しくは話せないが今回は国会議員の力をどれだけ借りたことか・・・」と前置きをしながら、国会議員への働きかけの凄まじさが切々と話されました。
 独禁法調査会、経済産業部会、文教部会などでさまざまな議論が行なわれたがまとまらず、公明党の冬柴幹事長に自民党への働き掛けを要請、中川秀直自民党政調会長が動いて、自民党の新聞販売懇話会が動き出したなどの話や、特殊指定が外れると韓国の新聞事情と同じになってしまうとの論点で、ネットやフリーペーパーに押される韓国の新聞事情について言及しました。最後には「何があっても政治家にお願いせざるを得ない」と力説し、「日販協政治連盟への加入してもらいたい」と要請。また、300委員会(全国の小選挙区に立候補する与党議員に新聞販売店が密着をして先生方にいろいろなお願いをしたり、付き合ったりすることのようだ)についても、今回の新聞販売懇話会などの流れを機に再構築を図るべきだと語りました。

 日販協の目的は「新聞販売送達事業の公益性に立脚し、発行本社と緊密な協調を保って業務の改善、進歩を図るとともに、新聞読者に対する奉仕を旨とする倫理化運動を推進することを目的とする」ということですが、新聞販売店の公正な競争を守ることと、国会議員(与党の)との「つながり」は関係ないはずです。
 今回の大会でも会場から意見や質問もなく「当たり前」のように終了しましたが、この業界が「当たり前」になれない理由もこうした「現実から目をそらし、二枚舌を使う」方々で運営されているからなのでしょう。そういう私も同類であります。しかし、世論(読者の声)からは目をそらさないで出来得る範囲で行動しようと思っているのですが・・・。
posted by 今だけ委員長 at 12:50 | Comment(4) | TrackBack(0) | 新聞販売問題

2006年06月15日

東京高裁があらためて「情報源の秘匿」を認める決定を下しました

 取材活動で得た情報源はどこまで秘匿することができるのか?取材源秘匿の是非が争われた「米国健康食品会社の日本法人への課税処分」に関する一連の問題で、読売新聞記者が米嘱託証人尋問で取材源にかかわる証言を拒絶したことの当否が争われた裁判の即時抗告審は、東京高裁が「拒絶の大半を理由がないとした東京地裁決定を取り消す」とし、取材源の秘匿を認める決定をしました。
 東京高裁の赤塚信雄裁判長は「取材活動は公権力介入から自由でなければならず、取材源は 公表しないとの信頼関係があって初めて正確な情報提供が可能になる」として、取材源は 民事訴訟法で証言拒絶が認められる「職業の秘密」に当たると判断。「公共性のある報道では、取材源秘匿を認めるのが相当で、対象となった読売新聞の報道は国家機関である国税当局の活動と多額の所得隠しを取り上げており、公共の利害に関するものであることは明らかだ」と認定しました。

 この問題は、米国の健康食品会社などが米国政府に損害賠償を求めた訴訟の嘱託尋問で、月刊誌「THEMIS(テーミス)」(2002年10月号)の編集長らが取材源に関する証言を拒絶したことが正当か否かが争われた裁判で、今年3月14日の東京地裁(藤下健裁判官)が「取材源が国税職員だった場合、その職員は法令に違反して情報を漏らした可能性が強く疑われ、拒絶を認めるのは間接的に犯罪行為隠蔽に加担するに等しい」として、読売新聞記者が証言拒絶をした21問中の14問の拒絶を認めない判決を下し、読売新聞側が即時抗告をしていました。
 証言拒絶裁判をめぐっては、読売新聞、NHK、共同通信などが各裁判所などで係争しており、今回の決定で「取材活動で知り得た情報の秘匿は担保される」という司法判断が下されたことによって、取材活動と情報源の秘匿は当たり前ですが、これまで通りとの方向に進むようです。

 取材源は情報提供者であるわけですが、その情報を過大に扱ったり、裏も取れずに加筆してしまうような取材であってはなりません。「記者の地道な取材活動」と「何かを優位に進めるための情報リーク」伝える側の姿勢がさらに問われていると感じていただきたいと思います。

 余談ですが、今回の問題については読売新聞側の一貫した姿勢にうなづくのですが、11日のプロ野球「ジャイアンツvsマリーンズ」の試合で、李選手のホームランで一塁走者だった小関選手が3塁ベースを踏み忘れて得点が取り消された判定で、よみうり寸評まで使って「誤審だ」と読者に訴える必要があるのか・・・新聞人としてどうなのだろうと首を傾げました。プロスポーツとはいえ、エンターテイメントですからね〜。最近不調だからなのでしょうか?清武球団代表が抗議書(映像付)をセ・リーグ連盟に提出したようですし・・・球団運営と新聞紙面の関係には秩序を持って扱ってもらいたいものです。
posted by 今だけ委員長 at 01:16 | Comment(2) | TrackBack(1) | 時事ニュース

2006年06月14日

中国のみならず、新聞は革命を企てる指導者の言論活動から端を発する

中国新聞史の源流.jpg
中国新聞史の源流
著者 孔健(批評社)2,400円

 中国四千年の歴史の中で、あの広大な土地でどのような情報伝達が行われたのか興味のあるところである。中国における新聞の歴史を調べようと読んでみたが、中国新聞史の源流というよりは辛亥革命(1911年〜1912年)での孫文などの「中国ブルジョア革命派」の活動などを主に記してある書という印象。

 中国で最初に発刊された月刊誌は『東西洋考毎月統紀伝』で、主宰者はイギリス人のグラッツラフであった。1833年、広東で発刊され、のちにシンガポールへ移り、4年間を経て1837年に停刊する。最初の週刊誌は『中外新報』で1858年香港で発刊された。この新聞は、週刊英字紙「┿品鵝ハシイロウホウ)」の中国語版で、イギリス人のA・ショートリードが主宰し、1876年2月1日には日刊紙となった。最初の日刊紙『昭文新報』が艾小梅(エーショウメイ)により発刊されたのは、1873年、漢口においてだったという。

 あとがきには、著者が上智大学大学院新聞学科に提出した修士論文であって、原題は「辛亥革命前後の中国新聞」だという。中国新聞史のルーツを探るという趣旨ではなかったので、呼んでいて間抜けをした感は否めない。孔子の75代の子孫である孔健(著者)は他にも「儲けることにきれい汚いはない」(講談社)、「日本人と中国人どちらが残酷で狡猾か」(徳間書店)などの著書があるが、個人的には中国人と日本人のイデオロギー的な部分を誘導する論調が強すぎるという感じがする。
posted by 今だけ委員長 at 15:25 | Comment(2) | TrackBack(1) | 書籍紹介

2006年06月07日

公取委 竹島委員長のインタビュー

新聞の特殊指定見直し議論は一歩前進=公取委委員長

 6月2日に当面存置が公取委から発表された「新聞特殊指定」。公取委の正式な見解も「これ以上議論を続けてもかみ合わないので打ち切る」、「与野党の議員が反対を表明している」など、本質的な議論がされないままに「当面、見直さないこととする」という形で決着がついた新聞特殊指定問題について、ロイター通信が公正取引委員会の竹島一彦委員長のインタビューを配信しました。

 竹島委員長は「ここで議論を中断するということであって、後退ではない。廃止はできなかったのは事実だが、とにかく議論を提起した。結論は出さなかったが、一歩か半歩かは前進した。あれは法律的には筋が通らず、説明が難しいということが、分かる人には分かってもらえた」と新聞特殊指定の廃止に向けて、ふたたび動き出すことを示唆しています。

 ブログなどでも新聞特殊指定の問題を取り上げたエントリーが減少する中で、新聞経営者には“正すべきところは正す”ことを強く求めるとともに、新聞労働者も経営側に“正させるべきところはキチンと正させる”経営のチェック機能を果たさなければなりません。販売行為の正常化、新聞社と販売店の取引関係の正常化… 業界内部の治療はまだ手術室にも入っていません。
posted by 今だけ委員長 at 22:01 | Comment(4) | TrackBack(1) | 特殊指定

集団的過熱取材=パパラッチ?

 秋田県藤里町で起きた小学1年生殺害事件で、近所に住む容疑者が逮捕。今日夕方のテレビニュースでは「容疑者が犯行を認める」と報じられるなど、この事件の真相が究明されようとしています。
 最近、幼い命が狙われるケースが増えていますが、なんとも痛ましく無力な幼い子供が殺められることに憤りを感じます。

 今回の藤里町小学1年生殺害事件では、メディアの過熱した報道体制もまたぞろ問題になっているようです。テレビ画面に映し出される「コラァ 写真撮るな」といってカメラマンに言い寄る容疑者の姿を見てどう感じられたでしょうか。6月6日付けの河北新報には容疑者の実家に100人の取材人が連日詰め掛けていたと記され、取材の「節度」申し合わせをした経過や藤里町教育委員会や容疑者自身が秋田県警犯罪被害者対策室や「放送倫理・番組向上機構(BPO)」に取材自粛の要請を行い、秋田報道懇話会でも「待機人員を制限」するなどの申し合わせがおこなわれたと、事件があった5月17日から6月4日の逮捕までの主な動きが報じられています。
 以前、和歌山県で起きた毒物カレー事件で、起訴されている林真須美被告の時と同じような「報道陣による包囲網」という図式をメディアは繰り返しており、まさしく集団的過熱取材(メディアスクラム)そのものです。新聞協会編集委員会が2001年12月に発表した内容は@嫌がる当事者らを集団で強引に包囲した状態での取材は行うべきではないA通夜葬儀などの取材で、関係者の心情を踏みにじらないよう十分配慮するB近隣の交通や静穏を阻害しないよう留意する―などの順守を申し合わせたそうですが、「得ダネ」、「スクープ」を得るためにマスコミ各社はそんな申し合わせなど無視してしまうのでしょう。ルールを守らないマスコミの体質は販売だけではないようです。

 仙台でも先月23日に起きた「小4女児マンション転落死」でも事件、事故の両面で捜査が進められているようですが、新聞記者による電話取材等について販売店にまでクレームが寄せられました。内容は夜の11時頃に「・・・の件ですが」と身辺状況など取材の電話をマンション住民にかけた模様で、その住民から販売店の従業員が集金で訪問した際に「何時に電話をかけてくるのだ!」と怒鳴り散らされたようです。新聞社への不満を抗議の電話まではかけない住民(読者)が、言いやすい販売店の従業員に文句を言う。そりゃ同じ看板を背負っているのだから読者からすれば「同じ会社の人」ですけれど、つらいですよねぇ。
 記者の皆さんも一生懸命なのは分かりますが、深夜に電話取材をするって「常識」から外れているのではないでしょうか。
posted by 今だけ委員長 at 01:22 | Comment(9) | TrackBack(0) | きょうの喜怒哀楽

2006年06月03日

新聞労連が新聞特殊指定見合わせに対する声明を発表

 まだまだ新聞各紙では新聞特殊指定問題を後追いした記事が数多く掲載されています。
 本日付の読売新聞は社説で[新聞の特殊指定]「『当面見直さず』の結論は当然だ」との見出しで「不毛な見直し論が提起されることのないよう、強く公取委に求めたい」とこれ見よがしに「だから言ったじゃない!」との理論を展開しています。

 また、前のエントリーでも書いたのですがライブドアのPJニュースでも「新聞特殊指定の特集」において、ある意味暴力的とも取れる痛烈な新聞批判を展開するなど土俵の外にいるメディア(新聞も含めて)が紙やネットを使って“言いたい放題”の状況になっていると感じます。

 その中で、新聞労連が声明を出し「公取委の結論はあくまで通過点。私たちが目指すのは販売正常化の実現だ」とし、「現在でも規制を超えた景品提供や契約期間に応じた無代紙が後を絶たない」と指摘。「新聞の公共性を高め、新聞ジャーナリズムの信頼を構築することが急務だ」と表明しています。

新聞の特殊指定改廃見合わせに対する声明


 6月2日の自民党独占禁止法調査会で公正取引委員会は、新聞の特殊指定改廃について、今回は結論を見合わせることを表明した。昨年11月に公取委が特殊指定見直しを表明して以来、議論が続いてきたが新聞については当面は残ることになる。この結論自体は、私たちが求めてきたことと一致する。しかし、この結論に至る議論の経緯には、問題が多いと考える。
 新聞労連は特殊指定改廃にこれまで一貫して反対してきた。「新聞の同一題号同一価格」を定めたこの制度が廃止されれば、購読料値下げによる乱売合戦が予想されるからだ。現在でも規制を超えた景品提供や契約期間に応じた無料購読(無代紙)が後を絶たず、これに値引き合戦が加われば販売現場は混迷を極める。資本力の弱い新聞社は次々と倒れ、多様な言論を形成してきた新聞が少数の新聞に淘汰され、民主主義が危機にさらされるだろう。
 私たちはこれまでの議論から、特殊指定維持を求めるには販売正常化が実現しなければ理解が得られないと訴えてきた。新聞労連が調査したところ、新聞に対する意見は「紙面内容」よりも「新聞販売への苦情」が圧倒的に多かった。
 新聞労連はこれまで新聞協会に販売正常化の早期実現を求め、公取委には特殊指定の堅持を訴えてきた。今回、公取委が出した結論は私たちの主張に沿ったものだが、問題点も多い。これまで公取委は新聞協会との話し合いで「実態の説明」を求めてきたが、協会側は明確な回答を避けてきた。現状を説明し、矛盾点の是正へどのように取り組むかが焦点だった。
 一方、公取委の方針には与野党を問わず全政党が反対し、自民、公明の両党は独占禁止法に特殊指定の内容を盛り込んだ改正案をまとめ、国会提出に向けた手続きを進めてきた。公取委が見合わせると判断した背景にはこうした政界の動きがあるといわれている。業界側と「かみ合わない」として議論を打ち切った公取委。独禁法の改正で公取委の権限を封じ込めようとした政界。本質的な議論を置き去りに、何より読者・市民の意見を顧みないままの政治癒着といえる。
 さらに公取委が「見送り」を最初に伝えたのは自民党で、新聞業界の窓口となっいている新聞協会ではなかった。このことは問題の本質からすでに新聞業界が、一歩外に押し出されていることを表している。公取委が議論すべき相手はいつの間にか政界にすり替わっていた。
 今回の議論では販売正常化に関する問題で前進したことはほとんどなかった。公取委が説明を求めても、新聞業界が明確に答えなかったからだ。公取委の結論はあくまでも通過点ととらえなければならない。そして私たちがめざすのは販売正常化の実現である。「言論・表現の自由」「知る権利」を守る責務を果たすことで新聞の公共性を高め、新聞ジャーナリズムの信頼を構築することが急務である。新聞労連の取り組みはこれからが正念場だ。
2006年6月2日
日本新聞労働組合連合(新聞労連)
中央執行委員長 美浦克教

posted by 今だけ委員長 at 12:43 | Comment(2) | TrackBack(3) | 特殊指定

2006年06月02日

公取委の正式発表も歯切れが悪い

 昨日は「新聞の特殊指定が当面維持」をほとんどの新聞が1面トップで報じましたが、公取委が本日の記者会見で正式発表を行いました。

新聞特殊指定を存続 公取委が正式発表

 新聞の戸別配達(宅配)制度などを支える独禁法の特殊指定をめぐり、廃止も含めた見直しを検討していた公正取引委員会は2日、当面は現行規定をそのまま残し指定を維持すると決めたことを正式に発表した。
公取委の野口文雄取引企画課長が同日、記者会見し「存続を求める新聞業界との議論に進展がなく、各政党からも存続するよう要請を受けたため、今回は結論を出すのを見合わせたい」と述べた。
指定維持の決定を受け、日本新聞協会(会長・北村正任毎日新聞社社長)は同日、「われわれの主張を適切に判断したものと受け止める。新聞各社は戸別配達網の維持、発展などに一層努力していく」とする会長談話を発表した。

 公取委は新聞業界との間で議論を繰り返してきたが、噛み合わず「これ以上」議論を続けても特段の進展は望めない状況にあると述べ、各政党においても新聞特殊指定を存続させるべきとの議論がなされていることを踏まえて、今回の見直しでは結論を出すことを見合わせることとした―と結んでいます。新聞業界の「政治家との癒着」も大きな問題ですが、公取委の軟着陸も少々味気なさを感じてしまいます。
 これまで公取委へ申し入れなどの交渉に数度伺って意見交換をしてきましたが、事務レベルでの議論からすると「不満が募る」決着であったことは間違いありません。

公取委の正式見解(報道発表資料 同委員会HPより)
posted by 今だけ委員長 at 19:38 | Comment(2) | TrackBack(3) | 特殊指定

2006年06月01日

全国3紙の解説記事を比較してみました

 きのうの「新聞の特殊指定維持」の動きを受けて、けさの全国3紙は見事に1面で大きく取り上げています。1面トップの記事はほとんど横並びなので、各紙の解説記事(ネットには出ていないと思うので)をアップします。

朝日新聞「公取委、廃止見合わせ」−見直し作業打ち切り−(1面見出し)
自民、独禁法改正案見送り(3面・解説)
 公正取引委員会が新聞の特殊指定廃止を当面見合わせる方針を固めたことを受け、自民党は31日、特殊指定存続のための独禁法改正案の今国会提出見送りを決めた。
 同党では「新聞の特殊指定に関する議員立法検討チーム」(高市早苗座長)が独禁法改正案をまとめ、国会提出に向けた党内手続きを進めていた。
 一方で、保岡興冶・独禁法調査会長らが公取委側と協議を重ね、31日の公取委の竹島和彦委員長との会談で特殊指定維持を確認。これを踏まえ、中川秀直政調会長と改正案を提出しないことで一致した。
 中川氏は31日、党本部で記者団に「世論を反映した意見を入れ、(公取委が特殊指定を)見送ったことはよかった」と語った。また、保岡氏は同日、記者会見し、特殊指定を見直すための条件として「全政党が反対しているような状況でなく、何らかの合理的理由が存在する必要がある」との考えを示した。(南岡信也)

毎日新聞「新聞特殊指定 維持へ」−公取委、廃止見送りを決定−(1面見出し)
国会と世論 配慮か(2面・解説)
 公正取引委員会が新聞の特殊指定の廃止方針を一転して見送った背景には、国会で与野党がこぞって反対し、指定を維持するための独占禁止法改正案を今国会中にも提出する動きが出てきたことがある。
 自民、公明両党が個別にまとめた独禁法改正案は、現行の特殊指定の内容を法律に別表として盛り込み、指定の廃止には公聴会の開催や国会の議決などを義務付けるというものだ。
 特殊指定廃止に対しては、地方議会でも反対の意見が相次いだ。また、主な新聞社、通信社が今年2月以降に相次いで実施した世論調査では、7〜8割の人が特殊指定の維持を支持し、8〜9割の人が、特殊指定によって支えられる新聞の宅配制度の継続を望んだ。
 公取委のある幹部は「(与党の改正案は)かなり違和感のある法律だ」と明かす。このような状況で廃止を主張し続ければ改正案が現実化しかねないため、公取委の竹島一彦委員長らも強行を見合わせるとの判断に傾いたとみられる。
 しかし、公取委は「特殊指定は法的に説明がつかない」という立場は変えていない。日本新聞協会などとの協議で「指定を廃止しても宅配に影響はない」と主張しているが、具体的な根拠を示さないままだ。
 国会内には「公取委は裁量の幅が大きく、第二の立法機関だ」との批判も根強い。反対意見に耳を傾ける姿勢が求められる。(横井信洋)

読売新聞「新聞特殊指定維持へ」−公取委、与党に見解伝達−(1面見出し)
特殊指定、公取委見解の要旨(37面・公取委の見解要旨)
 公正取引委員会が31日、自民党などに示した見解「特殊指定の見直しについて」の要旨は次の通り。
1.これまでの取り組み状況
 公正取引委員会は、制定後長期間を経過し、近年運用実績のない5つの特殊指定について、昨年11月以降見直しを行ってきたところ、これまでに、@食品缶詰または食品瓶詰業における特定の不公正な取引方法A海運業における特定の不公正な取引方法B広告においてくじの方法等による経済上の利益の提供を申し出る場合不公正な取引方法C教科書業における特定の不公正な取引方法――の4つの特殊指定について廃止することとした。
 残る「新聞業における特定の不公正な取引方法」については、新聞業界等との間で鋭意議論を進めてきた。
2.新聞特殊指定をめぐる議論(略)
3.今回の対応
 これまで公取委と新聞業界との間で議論を繰り返してきたものの、議論がかみ合っておらず、これ以上の議論を続けても特段の進展は望めない状況にある。また、各政党においても、新聞特殊指定を存続させるべきとの議論がなされているところである。これらの状況を踏まえ、公取委は新聞特殊指定については、今回の見直しでは結論を出すことを見合わせることにした。

 あす、公取委が公式見解を示す前に読売は「その要旨」を先駆けて掲載しています。これを取材力と言うのかどうか分かりませんが、「2.新聞特殊指定をめぐる議論」に公取委の本音があるように感じてなりません。
 公取委の公式発表(記者会見)は、通常であれば上杉事務総長が行うと思われますが、ぜひ竹島委員長に本音の沙汰を述べてもらいたいものです。

追伸:きょう開かれた新聞の特殊指定問題を考える公開シンポジウム「知識格差が生まれる」(主催・毎日新聞労働組合、ジャーナリズムを語る会)は、今回の報道を受けてどのような反響だったのでしょうか・・・
posted by 今だけ委員長 at 00:00 | Comment(2) | TrackBack(1) | 特殊指定
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