2006年04月30日

新聞は、自らを糺せるか。

乱気流.jpg
乱気流(上・下)
著者:高杉 良(講談社)1,700円(上・下巻とも)

 日本経済新聞社の社内に噴出する問題点、バブル経済からその崩壊までの「失われた10年」を著者が丹念に取材を重ね、巨大化した新聞産業に一石を投じた小説。

 主人公の倉本和繁を介して、1988年から2004年までの日本経済の流れが分かりやすく記されている。リクルート事件やイトマン事件、山一證券等の経営破たん、大銀行の合併劇、竹中平蔵の影響力…。そして巨大新聞社長の汚職が判明し…。
 新聞業界では正論を唱える人間が「異端児」扱いされてしまう変わった世界。横柄な取材方法の実情や偉ぶる新聞記者、各新聞社間での「抜いた、抜かれた」にエネルギーを注ぎ、新聞協会賞を勲章とする体質など、新聞業界の裏側が主人公の視点を介して伝わってくる。

 かなりの長編だが、それぞれの出来事について掲載された新聞記事も引用されているので「当時を振り返る」テキストとしても十分活用できる一冊だ。

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2006年04月27日

問題点を分けて考えなければならないのですが…

 いろいろな問題がダブってしまい…きちんと問題点を分けて考えなければならないのですが、うぅ〜ん…。「報道に法規制は不要」vs「宅配網維持のために特殊指定は必要」。問題は違いますよ!でもねぇ。きちんとした論調を主張するならば、やはり両論併記の原則を守ってもらいたいものです。

衆院特別委参考人質疑
「報道に法規制不要」国民投票法案で新聞協会
 衆院憲法調査特別委員会は27日午前、全国の報道機関が加盟する日本新聞協会の樽崎憲二編集小委員会(読売新聞東京本社編集局次長)ら三氏を招いて参考人質疑を行い、憲法改正手続きを定める国民投票法案の焦点であるメディア規制について意見を聞いた。
 樽崎氏は「報道・評論にかかわる法的規制は必要ないというのがわれわれの立場だ」と強調。その上で「憲法は二十一条で言論、表現の自由を保障しており、メディア規制条項は現行憲法の精神にも反するのではないか」と指摘。与党が法案骨子案に盛り込んだ自主規制規定についても「取材報道活動を萎縮させ、活発な憲法論議を妨げる恐れがある。容認できない」と反対を表明した。
 同小委副委員長の石井勤朝日新聞東京本社編集局長補佐は「穏やかな規制でもいったん法律に盛り込まれると必ずそれを振りかざした議論が出てくる」と危険性を強調。同小委委員の藤原健毎日新聞東京本社編集局総務も反対の立場を強く打ち出した。
 一方、樽崎氏は憲法論議における報道の役割について「幅広い判断材料を国民に提供するのが使命だ」と強調した。(4/27付、河北新報夕刊より引用)


その他、共同通信の配信を徳島新聞東奥日報のWebサイトにアップされています。

参考人の発言要旨 衆院憲法調査特別委員会
 27日の衆院憲法調査特別委員会での参考人発言要旨は次の通り。
 楢崎憲二日本新聞協会編集小委員会委員長(読売新聞東京本社編集局次長) 報道機関は幅広い判断材料を国民に提供するのが使命だ。報道・論評にかかる法的規制は必要ないというのがわれわれの立場だ。憲法は21条で言論、表現の自由を保障しており、メディア規制条項は現行憲法の精神にも反するのではないか。自主規制の訓示規定であっても取材報道活動を委縮させ、活発な憲法論議を妨げる恐れがある。容認できない。
 石井勤同小委副委員長(朝日新聞東京本社編集局長補佐) 緩やかな規制でもいったん法律に盛り込まれると必ずそれを振りかざした議論が出てくる。
 藤原健同小委委員(毎日新聞東京本社編集局総務) 自律的な判断を信頼、信用してもらいたい。報道の公正さは規制から生まれるものではない。


まさに
 新聞業界ってオモシロイ!?
posted by 今だけ委員長 at 17:43 | Comment(2) | TrackBack(0) | 時事ニュース

2006年04月26日

オーマイニュース日本版の動き…

 恥ずかしながら、「新聞特殊指定問題」について勉強会をするので講演をして欲しい―という要請を受けて、地方紙の労働組合が主催する学習会に伺って、約90分お話しをしてきました。

レジメはこんな感じです。
@なぜ?いま特殊指定改廃の議論が浮上したのか
 ・特殊指定に定められている(いた)7事業分野
 ・日米構造協議
   米国の狙いは「日本市場の開放」、「独禁法の強化による排他的商習慣の改善」
 ・公取委がいう自由競争の促進=規制緩和
   格差社会の拡大。シワ寄せは労働者への賃金(生活)低下という形で跳ね返ってくる。
A新聞特殊指定問題の争点
 ・新聞社、販売店の経営的問題とジャーナリズムの問題
   一方的な紙面展開。特殊指定がもし撤廃されても「戸別宅配網はなくならない」
 ・新聞協会と国会議員、地方議会との関係
   マスコミ人としてこれ以上「借り」をつくってよいのか?これからの紙面への影響。
 ・議論の場はネット(ブログ)でしか語られなくなってきている
B私たちは、どのような行動をすればよいのか
 ・社内の論議がほとんどされていない
   大手紙の動向で決まるだろうーで良いのか?  対策もない・・・
 ・いままで新聞の売り方、売られ方を知らなすぎた
   読者(部数)を増やすのは販売店に任せっきりだったのでは。経営拡大主義=部数第一主義が、グレーゾーン(販売店との取引関係、違法販売)を拡大させた。
 ・本当は消費税率引き上げの方が脅威
 ・もっと読者の声を聞こう

 どんな話だったのか?自分で言うより同労組が発行した組合ニュースを転用します。

組合は24日、「新聞はどうなる『特殊指定』 学習会」を新館1階多目的ホールで、○○労組の○○氏を講師に迎えて行った。○○氏は「特殊指定改廃の議論が浮上した背景に、日米構造会議による『日本市場の開放』『独禁法の強化による排他的な商習慣の改善』という規制緩和の流れがある。特殊指定に定められている、もしくは定められていたのは@教科書(5月17日廃止予定)A海運(4月13日廃止)B食品かん詰(2月1日廃止)Cオープン懸賞 (もうすぐ廃止予定)D新聞(公取委は6月をめどに廃止、修正、存続−いずれかの結論を出すと明言)E物流特殊指定F大規模小売業告示−の7事業分野。公取委がいう自由競争の促進は、格差社会の拡大につながるものだ。新聞の特殊指定が廃止になったとしたら、乱売合戦、新聞社・販売店の淘汰、戸別配達崩壊となり、市民・読者には情報格差が生じ、新聞業界で働く者には生活低下という形で跳ね返ってくる」と指摘した。
 また、「特殊指定問題」のポイントに「@新聞・販売店の経営問題とジャーナリズムの問題A新聞協会と国会議員、地方議会との関係B議論の場はネット(ブログ)に」の3点を挙げ、「権力をチェックすべき新聞が政治力頼みでいいのか。憲法改悪問題もある中で、紙面への影響が懸念される。紙面で読者の生の声を紹介しているだろうか。ネット利用者がどれぐらい新聞を読んでいるか分からないが、一方でブログでの議論が盛んになっている現状がある」と述べた。
 その上で、業界で働く者の対応について「特殊指定は守らなくてはいけないが、維持を求めるばかりなく、販売正常化に努めなければいけない。これまでの部数拡大第一主義でいいのか。社内議論を活発化し、反省すべき点は反省し、読者の声をもっと聞き、どう読んでもらうか考える必要がある。“消費税引き上げ”問題もあるので、紙面の内容で納得して買ってもらえるよう努めよう」と訴えた。



今回の講演(お恥ずかしいのですが…)では、だいぶブログで議論されているネタを引用しました。「新聞では新聞特殊指定の情報がクローズされており、『戸別宅配網の崩壊を招く』としか報道されていません。唯一、幅の広い議論がされている、かつ一般にも公開されているのはブログ(個人発信)しかなくなってきています。参加された皆さん!この現象をどう感じますか?」という具合に。
 日本的「オーマイ・ニュース」の動きが起こり始めている―という指摘もしました。

posted by 今だけ委員長 at 22:10 | Comment(8) | TrackBack(0) | 日記

2006年04月22日

「押し紙」という文字を消してはならない!

 昨日のエントリーの続きで、新聞労連の中央委員会で話し合われた内容をアップします。

 今回の特殊指定問題について、新聞労連本部では、新聞協会や日販協が繰り広げる国会議員や各県レベルの議会要請、各紙の過剰な報道のあり方などと一線を画すため、特別決議を採択しました。

新聞の特殊指定維持を求め、販売正常化と読者に信頼される
新聞ジャーナリズムの確立に取り組む特別決議
 昨年11月、公正取引委員会が新聞業をはじめとする「特定の不公正な取引方法」(いわゆる「特殊指定」)を見直す方針を示し、日本新聞協会はじめ業界団体は一斉に反対を表明した。新聞労連は昨年12月15日、拡大中央執行委員会が発表した声明の中で、新聞特殊指定の改廃に反対の方針を表明するとともに、販売正常化の早急な実現、読者や市民の信頼に応えうる新聞ジャーナリズムの確立を訴えた。3月14日には「2006春闘東京総行動」で公取委と新聞協会を訪れ、特殊指定の堅持を強く訴えた。
 この間、新聞各紙は「特殊指定廃止で戸別配達制度が崩壊」の特集記事を紙面に掲載し、読者に対し制度維持の理解を求めた。新聞協会も「特殊指定廃止」が「戸別配達制度の崩壊」につながると訴えている。わたしたちは、問題はそれだけではないと考える。特殊指定の廃止が新聞の乱売を招くことを危ぐする。シェア拡大のための値下げがひとたび始まれば、容易に「乱売合戦」へ進みかねない。そうなれば経営体力、資本力の差によって新聞が淘汰されることになりかねない。多様な言論が失われることを意味する。
 新聞特殊指定見直しをめぐっては、戸別配達制度維持の観点から政界からも改廃反対の発言が相次いでいるが、権力をチェックすべき新聞が過剰に政治力を頼るのだとしたら、読者や市民の支持を得られるか疑問であることも指摘しておきたい。
 著作物再販制度と特殊指定が一体となることで、新聞の「同一題号同一価格」が維持され、新聞の安定発行という読者利益が担保される。新聞販売をめぐる読者の不満の多くは、ルールを守らない販売方法にあるとわたしたちは考える。新聞産業にとって、ルールを順守した「販売正常化」を達成し、読者の信頼回復に努めることが急務だ。
 新聞が「言論・表現の自由」「知る権利」を守る責任を負っているのは、自明のことだ。その責任を果たしてこそ、新聞の公共性が社会に認められる。新聞が販売面で独禁法の適用除外とされ、特殊指定の対象であるためには公共性が前提となる。
 わたしたちは、著作物再販制度と一体となった特殊指定を存続させ、多様な新聞、多様な言論を守りたい。そのために販売正常化を達成し、読者・市民の「知る権利」に応えうる揺るぎなき新聞ジャーナリズムの確立に取り組むことを、ここに決議する。
2006年4月21日
日本新聞労働組合連合 第115回中央委員会


 この決議の他にも6項目に及ぶ具体的な内容を記した「特殊指定改廃問題に対する新聞労連の取り組み」も同時に承認されました。内容は「地方では全国紙の値下げ攻勢が予想される」などの表記もあり、自らの襟を立たす姿勢も感じられます。しかし、労連本部役員が中央執行委員会へ提出した原案にあった「押し紙」の表記がまるっきり抜けていました。
 新聞労連も連合体。それぞれの組合の思惑が大きく左右したのかもしれませんが、「押し紙」という言葉を排除してはいけない。この業界のすべての問題の温床が「押し紙」から派生しているといっても過言ではないからです。組織全体(多数決の論理)の決議のため、今回の決議文からは「押し紙」の言葉を載せられなかったのは仕方がないのかもしれませんが、議論として「押し紙」を外してはいけないのです。新聞経営者は公正競争規約(自主ルール)からも「押し紙」という表記を外しました。「予備紙」や「残紙」などと表現を変えても「押し紙」であることに変わりはないのです。

posted by 今だけ委員長 at 19:18 | Comment(4) | TrackBack(3) | 特殊指定

2006年04月21日

社会的使命を忘れるな!

 4月20・21日の両日、日本新聞労働組合連合(通称:新聞労連)の「第115回中央委員会」が東京都文京区で開催されました。

春闘総括や夏季一時金闘争方針など多くの議案について議論されるのですが、今回は「新聞特殊指定問題」にその多くの時間を割いて論議されました。私も発言の機会があったので、新聞販売労働者の視点から特殊指定に関連する新聞労連本部および加盟組合への要望を話してきました。

 はじめに、労働組合として、新聞労働者として、社会的使命を果たしていくことを目的として、この会議で発言をしたい。いま、業界内外で大きな問題になっている新聞特殊指定の改廃問題。極端なことを言えば、特殊指定が無くとも各新聞社が再販や特殊指定、新聞公正競争規約(自主規制)を守りさえすれば、そう大きな問題にはならない。しかし、現状を見る限りでは「何でもあり」の販売行為が横行し、読者からの信頼を失っている。記者の皆さんが必至に取材をした記事も、読者に伝えたい記事を掲載した紙面も、資本力が影響する乱売競争によって吹っ飛んでしまっている。このような状況が公取委に対しても真っ向から説明すらできず、業界内の襟も正せないでいる。
 私たちは労働組合なのです。自らの生活をより充実させることに加えて、新聞発行に携わる労働組合は、より高い社会的な使命を担っていると思う。だが、最近は組合が経営者以上に「ことを荒たげない」「押し紙の問題にはフタをする」ようになっているのではないかと危惧する。これ以上、業界内の不合理な問題を先延ばしをしてどうするのか。新聞労連に結集する私たちは仲間であるはず。企業内労働組合ではあるが、勤め先(新聞社)の枠を超えて、共に業界内の問題を是正するために団結をして取り組んできたはずだ。それが今は、それぞれの会社の利害を懐にしたためながら議論されているように感じる。
 特殊指定問題についても大手紙の動きを「横にらみ」をせざるを得ないのだろうが、具体的に行動をしている組合は少ないと聞く。公取委の発表からもう半年も経っているのに…もう組合内の勉強という段階ではない。極論をすると朝日新聞や読売新聞の組合の仲間に、先陣を切って「現在あるルールを守る」よう経営側と交渉をして欲しいとお願いしようということもできないのだろうか。
 いま、紙面での特殊指定報道のされ方、国会議員と新聞協会の関係に違和感を持たないのだろうか。おかしいとは思えど、それぞれの組合でどのような検証をして具体的な取り組みを検討しているのだろうか。
 本音の話が組合からなくなったら、組合そのものの機能が果たされなくなる。特殊指定の問題は、新聞社や販売店の経営に関する問題とジャーナリズムの問題の2つに分かれてきている。私のような販売店労働者はペンは持っていないが、やはりジャーナリズムの役割をここに集まる新聞労働者は果たして行かなければならないと思うし、その役割を組合が果たせれば、例え特殊指定が撤廃されてもそれぞれの新聞社は健全な経営へと再スタートを切れるのではないか。
 もっと外に出て読者の声を聞く必要があるし、その声をもっと紙面に反映させるべきだ。ぜひ、特殊指定に関連する紙面での取り扱いについて、各組合で議論されるようお願いする。


 この通りの原稿を読み上げたのですが、「コンニャロ!何も知らないくせに」と思われた方も「その通りだ」と言ってくれた方などさまざま。まぁそれで良いのだと思います。でももっと議論しないと、そして内側だけではなく読者の声をもっと聞かないとダメだと思うのです。自分たちの問題!胃が痛くなるほどこの問題で悩んでいる人がどれだけいるのでしょうか?少なくとも今だけ委員長は眠れないときもありますよ。

※次回に新聞労連の取り組み、特別決議に触れていきます。
posted by 今だけ委員長 at 01:54 | Comment(6) | TrackBack(3) | 特殊指定

2006年04月15日

地方新聞労働者の地道な活動!

 4月12日、青森県八戸市で新聞労連東北地方連合(略称:東北地連)の会議が開かれました。東北地連は新聞労連に加盟する東北地区の新聞労働組合の連合体で、現在10組合、1支部が加盟しています。
 今回の会議には各地方紙で働く組合員25名が参加し、それぞれの単組の春闘総括と新聞特殊指定維持に向けた取り組み等の各議案が討議されました。

 会議開始前の13時から、参加者全員で八戸市三日町の目抜き通りを中心に「許せますか?情報格差」と刷り込まれた新聞特殊指定維持を訴えるチラシと新聞労連作製のポケットティッシュ300セットを街頭で配布しました。ほとんどの通行人が私たちの説明に耳を傾け、快くチラシとティッシュを受け取ってくれました。
    八戸チラシ配布 001.jpg  八戸チラシ配布 005.jpg
配布を終えた組合員からの感想は、
・特殊指定の問題をひと言で説明するのは難しかった。
・「自由競争の時代なのだから仕方ないのではないか―」と言われ、八戸などでやって(街頭行動)いないで、霞ヶ関あたりでやったほうが良いのでは―という意見もあった。
・「地方紙が好きだから値段が高くなっても読みます」といった言葉を掛けてもらい嬉しかった。
・「署名はないの?」と言ってくれた方もいた。


 約30分で配り終えましたが、「あなたたちが言っていることは違う」という意見はありませんでした。これも土地柄なのでしょうか…八戸市あたりでは、強引な新聞セールスはほとんど行なわれておらず、消費者センターへも新聞勧誘時の苦情、トラブル等もほとんど寄せられていないということです。

 また、新聞労働者が市民(読者)に「新聞特殊指定の問題点」を直接説明し、それに対する意見を直に聞くことができました。「情報の地域差」、「多様な言論を守る」、「違法な販売行為の是正」など紙面では伝えていない問題点、改善すべき点を直接聞いてもらえたことは、とても重要なことだと思います。
 「特殊指定が改廃されると戸別宅配網が崩れる」という新聞協会や議員連合の主張を一方的に掲載する新聞紙面とは一線を画さなければならない―。そのためには、読者の意見を新聞労働者が直接“もっともっと”聞く必要があるのです。このような地道な行動が今後拡がっていくことを期待しています。

 東北地方は関東圏や関西、九州地方のような、大手紙同士(一部の地方紙も加勢して)がしのぎを削る状況にまでは至っていません。それぞれの県紙が地域振興を掲げ、地方に根ざした紙面構成によって読者から親しまれているからです。
 新聞特殊指定は「自由競争」を阻害するものだ―と述べる方が多いのですが、現状では『価格の競争』を攻める側(大手紙)が“いままで以上に”仕掛けてくることは間違いありません。やはり競争社会の行く末は「資本力には太刀打ちできない」となるわけです。だから新聞には資本力が支配するという事態を回避するために「特殊指定」は残す必要があるのです。ただし、多くの読者から非難を浴びているルールを無視した売り方の問題や今回の特殊指定報道に見られる「業界の都合の悪いことは一切載せない報道のあり方」(うそつきと呼ばれます)を正す必要が前提となることは言うまでもありません。

「いくら値引きをされても長年読んでいる新聞が好きだから換えませんよ」という読者のありがたい言葉に応えるためにも、まじめな新聞社の経営を持続させなければならないと思うのです。

posted by 今だけ委員長 at 00:00 | Comment(10) | TrackBack(1) | 日記

2006年04月14日

新聞特殊指定 勢いを増す国会議員連盟とあおる紙面

 特殊指定問題! キモイくらいに国会議員が動き回り、紙面でも大々的に取り上げています。読者への伝え方に大きな疑問が投げかけられている昨今、そのギャップを新聞経営者は感じないにしても、感じている新聞人は抵抗できないのでしょうか?

 今朝の新聞報道では、超党派の国会議員でつくる「活字文化議員連盟」が、国会内で総会を開き「特殊指定」の堅持を求める決議を採択し、同議連の鈴木恒夫幹事長が公正取引委員会(竹島一彦委員長)へ決議文を提出したというもの。
 決議文は「特殊指定の見直しは、全国に張り巡らされた戸別配達網を崩壊させることにもつながりかねない」と相変わらずの“ことの問題を飛び越えた見解”に終始。新聞の特殊指定は「健全な民主主義の発達に欠くことができない」と訴えたと言います。さらに、同総会では、自民党の中川秀直氏(政調会長)が同議連会長に就任。中川氏は公取委が特殊指定の撤廃を含めた見直しを検討していることに対し「国民の代表である私たちの意見をしっかり受け止めてほしい」とある種の脅しめいた発言まで飛び出したそうです。関連記事参照朝日新聞読売新聞


 新聞特殊指定問題からチョイト外れますが、各国の新聞の危機(韓国など)が囁かれている中で、中国のメディア業界の実情を記した「中国メディア青書」に関するこんな記事を見つけました。
「新聞業界、存亡の危機 ネット急成長で広告収入激減 メディア青書公表」

 新聞の広告収入が大幅に激減、「新聞が死ぬか生きるかの瀬戸際にある」との内容で、その背景として、インターネット業界の「爆発的な発展」などを挙げています。中国の新聞は、昨年実績で広告営業額が平均で15%以上減少しており、40%以上減った新聞社もあるという。中国のネット人口が一億数千万人に達している状況もあわせて伝えられています。
 中国の新聞は、昨年7月で1,926紙が発行。その多くが宅配ではなく、スタンド売り。また、「読者のニーズに応える紙面づくりをしておらず、競争力に欠ける」と国内メディア関係者からも指摘されているそうです。
 さらに官僚の腐敗などを暴露したり、政府の指導路線に沿わない新聞は幹部の人事異動で事実上の「制裁」を加えられるケースがあることも読者離れの原因でもあるとされ、「言論の自由」について「青書」では、「(人民日報など)党紙は民衆が必要とするニュースを提供すべき」などの表現で間接的に促しているーと記されています。いまの日本とは逆の現象だと感じてなりません。

posted by 今だけ委員長 at 13:43 | Comment(2) | TrackBack(0) | 特殊指定

2006年04月08日

新聞特殊指定 公取委の考えはこうなのです

 新聞労働者が組織する日本新聞労働組合連合(通称:新聞労連)の地方組織、新聞労連東北地方連合(通称:東北地連)の機関紙に、去る3月14日に新聞労連が行なった公取委への要請行動(90分の意見交換だったそうです)について、詳しくまとめられているので、公取委との主なやりとりを紹介します。

■特殊指定見直しの程度は?
改正、廃止、存続どれもありうる
●「見直す」と表明したのみで「改廃」と言ったことはない。改正、廃止、存続、どれもありうる。ニュートラルな立場で進めている。
●新聞協会、社団法人日本新聞販売協会(以下:日販協)と話し合い、現状把握を淡々と進めている。新聞のみではなく、5つの特殊指定すべて見直している。昭和30年に作られたものが現在も有効に活用されているのか。現在も必要なのか、直視するよう指示されている。5つのうち3つは廃止の方向でパブリックコメントにかけている。教科書の見直しもかなり進んでいる。
●公取委は各省庁に規制緩和を求めているが、省庁から「そう言う公取委にも古い規制が残ったままだ」と指摘された、という背景もある。
●今期、再販を見直すつもりはない。見直しへ向けて国公民的合意を得ようという動きもない。

■新聞協会・日販協とはどんなやりとりをしているのか
「主張が崩れるから」と実態隠す
●弾力的運用を進める、という約束は頂いているし、学割などが広く行なわれている実態は知っている。
●しかし、かなりの割合があるセット割れの朝刊単読の価格を聞くと「価格は言えない。言ったら自分たちの主張が崩れるから」と答えない。こんな状況が続けば「議論は尽くされた」と判断せざるをえなくなる。公取委上層部が「もう聞かなくていい」となるのを懸念している。
●業界側は「特殊指定と再販が個別配達を担保している」と言うが、特殊指定と再販は本来反対のもの、矛盾するものだ。新聞業界側は実態を挙げてこの話しに入りたくないのだろうが、公取委は新聞だからといって他の業界と差をつけるつもりはない。淡々と作業を進める。
●実態を教えてくれと言っているのに、事実は言えないという。特殊指定を残すのに必要な材料を出してくれないなら立証できず、廃止のパブリックコメントをかけざるを得ない、と新聞協会・日販協には言っているのだが。ちゃんと建設的な協議をしたい。こういう実態があり、特殊指定はこういう機能を果たしているので必要だ、と言ってくれないと。指定当時に特殊指定が必要だとした理由が今も存在するのかどうか。

■宅配が崩れる懸念がある
ニーズがあるなら残るはず
●宅配をなくせ、と言うつもりはない。自分たちも個人としては新聞宅配を利用する立場だから残してほしいと思う。ただし、宅配は読者のニーズがあるなら残ると考えるが。特殊指定がなければ宅配がなくなる、と主張しているが、宅配のニーズがあり、かつ再販を新聞発行本社が守れば残ると私たちは考えている。「いや、再販が守られないのだ」というなら、どうして守れないのかを教えてほしい。

■見直しは規制緩和の流れの一つなのか
そうだ。法で縛る必要はない
●そうだ。1円でも安くしたら駄目、という話は今は通用しないのでは?1円でも安くしたら駄目だ、と法律で決める必要はないのでは?
●新聞労連も、ゼロか100かではなく、現状に基づきこういう形で、と考えてみたらどうか。
中部読売の事例のような、略奪的差別対価で市場を奪う方法を恐れているのだろうが、そんなことを販売店レベルでできるものだろうか?

■11月に見直し着手を表明して結論を出すめどが6月というのは、時間が短すぎると思うが
新聞協会・日販協は了解の上だ
●新聞協会、日販協には事前に見直し実施の話をしてある。前回の再販見直しの時と同程度の期間を取り「今回は3月めどでどうか」と話したら「短い」と言われ、6月にした(一方的に決めたわけではない)。ただし、時間切れで決めたくはない。ちゃんと協議したい。

■労組は見直し協議に加われるか。労組側が逆提案をしたら聞くか
協議の主体は新聞協会・日販協
●協議の主体は、あくまで新聞協会と日販協だが、意見はありがたい。

■公取委の案ができ上がったら(以前の再販論議の時と同じように)パブリックコメントにかけるのか
確実にそうする

■特殊指定がなくなると資本力のある大手紙が地方都市をターゲットにして集中攻勢を掛け、地方紙が生き残れず、報道・言論が画一化される事態になると懸念している
乱売は一般指定で対応できる
●そうした事態を望んでいるわけでは全くない。我々も地方勤務の機会があり、情報を出しても大手紙が取り上げず、地方紙に広報してもらうことがある。これからもそうあってほしい。新聞社間の記事の競争はあってほしいし、大手紙の寡占は望んでいない。
●しかし、体力がある社が売りやすい地域で安く売りまくる、という手法は、特殊指定でなくても一般指定の「差別対価」で十分対処できる。中部読売が緊急停止となったように。
●我々の基本的なスタンスは「正当な理由があれば、差別対価はよしとするべきではないのか?」「販売店に条件付き自由度をつけてもよいのではないか?」だ。しかし、実態が分からないままに検討を進めた結果、新聞の画一化を招いたのでは互いに不幸だ。いったんそういう展開になったら再構築は難しい。だから地に足のついた実態論議をしたい。
●今回の見直しは、あらかじめ答えが決まっていてそこに向けて引っ張っていく、というものではない。自由度100lで良い、とか、ここは良いけれどここは駄目、とか言ってもらいたい。特殊指定の、ここをなくすとこうなる、というのを出してほしい。

■公取委の協議相手は大手紙中心なのではないか?地方紙や消費者の話をぜひ聞いてほしい。判断を急がないでほしい
労組の意見や集会報告寄せて
●消費者からも聞いているが、消費者は新規読者のみのサービスに不満が大きい。大学生協を通じて購読を申し込めば値引きするサービスで部数を伸ばした例がある。怖い勧誘員が来ず、口座引き落としなので利便性がいいと評判が良いらしい。取りたいのに新聞社側がブレーキを掛けている、それを外す努力もするべきでは?
●ジャーナリストや新聞関係者のブログなども読んでいる。新聞労連の「改廃に反対する決議」は今回初めて知った。こうした決議や声明、集会報告など、何でもよいので送ってほしい。参考にする。メールでも郵送でも何でも受付ける。


 「新聞特殊指定など大手紙が中心になって決まっていくものだ」などとくすぶっている地方紙の業界関係者は、このような公取委の主張に対してどう感じるでしょうか。昨年は戦後60年の特集記事(検証)をほとんどの新聞社で取り組みました。であるならば、新聞の検証もきちんとされなければならない。これを機に「新聞の売り方、売られ方」について検証し、その責任を受け止め、行動で示す時なのだと思います。

 また、新聞特殊指定を撤廃すべきだと主張している方々も公取委の本質をあまり理解せずに新聞業界が気に入らないがゆえに「特殊指定撤廃ありき」という業界批判の書き込みも結構目立ちます。
 ことの本質はやはり規制緩和。価格の値引きはそこで働く労働者の労働条件の切り下げに直結します。ましてや全国2万865の新聞販売店で働く、43万9,107人(2005年10月現在)の新聞販売店労働者の労働条件(賃金・休日)をこれ以上下げる訳にはいきません。そうでなくとも労働基準法を守れていない販売店も少なくないのですから。
 新聞労働者はカッコつけすぎ。反対意見に対してすべて論破することなど出来るわけもないのですから、指摘されていることについては反省し「正すところは正す」と約束をして、新聞業界の再構築を図っていくべきだと思っているのですが…。


posted by 今だけ委員長 at 19:08 | Comment(13) | TrackBack(2) | 特殊指定

2006年04月07日

言論機関はどこに軸足をおくべきか  新聞は忘れたのか

 社団法人日本新聞協会(以下:新聞協会)は6日、公開シンポジウム「活字文化があぶない!メディアの役割と責任」を東京・内幸町のプレスセンターホールで開きました。
 出席した国会議員や有識者からは、公取委の姿勢に反対する声が相次いだ―とのこと。北村正任会長(毎日新聞社社長)の挨拶では「新聞の戸別配達網は文字活字文化を守るライフライン。これを実質的に担保する特殊指定を撤廃しようとする公取委の姿勢には強く反対する」。その他、有村治子文部科学政務官、鈴木恒夫衆院議員、作家の柳田邦男氏が「特殊指定堅持の立場」から挨拶。パネルディスカッションでも「宅配制がなくなれば、分極化が進む。これは日本に合った社会ではない」、「経済的な規制緩和が文化、自由な情報の流通からはマイナスになる。その可能性について配慮がないのは乱暴ではないか」などの意見でまとまりました。
 さらに国会議員でつくる『活字文化議員連盟』代表幹事の鈴木恒夫衆院議員が「(撤廃は公取委の)告示でできるため、自民党・新聞販売懇話会(会長代行、中川秀直政調会長)は、阻むための新たな議員立法を決定済みだと聞いている」と述べ、特殊指定を維持するための法案を今国会に提出する考えを表明したのです。
 内輪の会合話ならまだしも、その内容を扱い大きく紙面に掲載するのはいかがなものか。両論併記という姿勢はどこにいったのでしょうか。


 新聞特殊指定問題に関連して、業界側(当方もこの業界に身をおく立場ですが)の手法を指摘してきましたが、ここ最近の異常とも言えるやり方に違和感を覚えます。新聞に掲載されることのない公取委の言い分や特殊指定撤廃を唱える意見。その閉鎖的な新聞の報道姿勢に反比例をして、多くのブロガーからの書き込みは「新聞」そのものへの不信感。多くの新聞関係者によるブログも、こと特殊指定問題に関しては炎上を恐れて“触らない”「新聞特殊指定は必要」と書き込めない状態なのでしょう。議論を戦わせられないようなことを推し進めてよいのでしょうか。新聞人という以前に社会人として…。

 人生とんぼ返りサンも主張するように「『言論の自由』の意味って何だっけね」を問わなければ、この先、言論機関としての機能を果たせるのか…疑問を抱かざるを得ません。新聞業界は軸足をどこにおいているか―。
posted by 今だけ委員長 at 12:40 | Comment(2) | TrackBack(0) | 特殊指定
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