新聞労働者が組織する
日本新聞労働組合連合(通称:新聞労連)の地方組織、新聞労連東北地方連合(通称:東北地連)の機関紙に、去る3月14日に新聞労連が行なった公取委への要請行動(90分の意見交換だったそうです)について、詳しくまとめられているので、公取委との主なやりとりを紹介します。
■特殊指定見直しの程度は?改正、廃止、存続どれもありうる●「見直す」と表明したのみで「改廃」と言ったことはない。改正、廃止、存続、どれもありうる。ニュートラルな立場で進めている。
●新聞協会、社団法人日本新聞販売協会(以下:日販協)と話し合い、現状把握を淡々と進めている。新聞のみではなく、5つの特殊指定すべて見直している。昭和30年に作られたものが現在も有効に活用されているのか。現在も必要なのか、直視するよう指示されている。5つのうち3つは廃止の方向でパブリックコメントにかけている。教科書の見直しもかなり進んでいる。
●公取委は各省庁に規制緩和を求めているが、省庁から「そう言う公取委にも古い規制が残ったままだ」と指摘された、という背景もある。
●今期、再販を見直すつもりはない。見直しへ向けて国公民的合意を得ようという動きもない。
■新聞協会・日販協とはどんなやりとりをしているのか「主張が崩れるから」と実態隠す●弾力的運用を進める、という約束は頂いているし、学割などが広く行なわれている実態は知っている。
●しかし、かなりの割合があるセット割れの朝刊単読の価格を聞くと「価格は言えない。言ったら自分たちの主張が崩れるから」と答えない。こんな状況が続けば「議論は尽くされた」と判断せざるをえなくなる。公取委上層部が「もう聞かなくていい」となるのを懸念している。
●業界側は「特殊指定と再販が個別配達を担保している」と言うが、特殊指定と再販は本来反対のもの、矛盾するものだ。新聞業界側は実態を挙げてこの話しに入りたくないのだろうが、公取委は新聞だからといって他の業界と差をつけるつもりはない。淡々と作業を進める。
●実態を教えてくれと言っているのに、事実は言えないという。特殊指定を残すのに必要な材料を出してくれないなら立証できず、廃止のパブリックコメントをかけざるを得ない、と新聞協会・日販協には言っているのだが。ちゃんと建設的な協議をしたい。こういう実態があり、特殊指定はこういう機能を果たしているので必要だ、と言ってくれないと。指定当時に特殊指定が必要だとした理由が今も存在するのかどうか。
■宅配が崩れる懸念があるニーズがあるなら残るはず●宅配をなくせ、と言うつもりはない。自分たちも個人としては新聞宅配を利用する立場だから残してほしいと思う。ただし、宅配は読者のニーズがあるなら残ると考えるが。特殊指定がなければ宅配がなくなる、と主張しているが、宅配のニーズがあり、かつ再販を新聞発行本社が守れば残ると私たちは考えている。「いや、再販が守られないのだ」というなら、どうして守れないのかを教えてほしい。
■見直しは規制緩和の流れの一つなのかそうだ。法で縛る必要はない●そうだ。1円でも安くしたら駄目、という話は今は通用しないのでは?1円でも安くしたら駄目だ、と法律で決める必要はないのでは?
●新聞労連も、ゼロか100かではなく、現状に基づきこういう形で、と考えてみたらどうか。
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中部読売の事例のような、略奪的差別対価で市場を奪う方法を恐れているのだろうが、そんなことを販売店レベルでできるものだろうか?
■11月に見直し着手を表明して結論を出すめどが6月というのは、時間が短すぎると思うが新聞協会・日販協は了解の上だ●新聞協会、日販協には事前に見直し実施の話をしてある。前回の再販見直しの時と同程度の期間を取り「今回は3月めどでどうか」と話したら「短い」と言われ、6月にした(一方的に決めたわけではない)。ただし、時間切れで決めたくはない。ちゃんと協議したい。
■労組は見直し協議に加われるか。労組側が逆提案をしたら聞くか協議の主体は新聞協会・日販協●協議の主体は、あくまで新聞協会と日販協だが、意見はありがたい。
■公取委の案ができ上がったら(以前の再販論議の時と同じように)パブリックコメントにかけるのか確実にそうする■特殊指定がなくなると資本力のある大手紙が地方都市をターゲットにして集中攻勢を掛け、地方紙が生き残れず、報道・言論が画一化される事態になると懸念している乱売は一般指定で対応できる●そうした事態を望んでいるわけでは全くない。我々も地方勤務の機会があり、情報を出しても大手紙が取り上げず、地方紙に広報してもらうことがある。これからもそうあってほしい。新聞社間の記事の競争はあってほしいし、大手紙の寡占は望んでいない。
●しかし、体力がある社が売りやすい地域で安く売りまくる、という手法は、特殊指定でなくても一般指定の「差別対価」で十分対処できる。中部読売が緊急停止となったように。
●我々の基本的なスタンスは「正当な理由があれば、差別対価はよしとするべきではないのか?」「販売店に条件付き自由度をつけてもよいのではないか?」だ。しかし、実態が分からないままに検討を進めた結果、新聞の画一化を招いたのでは互いに不幸だ。いったんそういう展開になったら再構築は難しい。だから地に足のついた実態論議をしたい。
●今回の見直しは、あらかじめ答えが決まっていてそこに向けて引っ張っていく、というものではない。自由度100lで良い、とか、ここは良いけれどここは駄目、とか言ってもらいたい。特殊指定の、ここをなくすとこうなる、というのを出してほしい。
■公取委の協議相手は大手紙中心なのではないか?地方紙や消費者の話をぜひ聞いてほしい。判断を急がないでほしい労組の意見や集会報告寄せて●消費者からも聞いているが、消費者は新規読者のみのサービスに不満が大きい。大学生協を通じて購読を申し込めば値引きするサービスで部数を伸ばした例がある。怖い勧誘員が来ず、口座引き落としなので利便性がいいと評判が良いらしい。取りたいのに新聞社側がブレーキを掛けている、それを外す努力もするべきでは?
●ジャーナリストや新聞関係者のブログなども読んでいる。新聞労連の「改廃に反対する決議」は今回初めて知った。こうした決議や声明、集会報告など、何でもよいので送ってほしい。参考にする。メールでも郵送でも何でも受付ける。
「新聞特殊指定など大手紙が中心になって決まっていくものだ」などとくすぶっている地方紙の業界関係者は、このような公取委の主張に対してどう感じるでしょうか。昨年は戦後60年の特集記事(検証)をほとんどの新聞社で取り組みました。であるならば、新聞の検証もきちんとされなければならない。これを機に「新聞の売り方、売られ方」について検証し、その責任を受け止め、行動で示す時なのだと思います。
また、新聞特殊指定を撤廃すべきだと主張している方々も公取委の本質をあまり理解せずに新聞業界が気に入らないがゆえに「特殊指定撤廃ありき」という業界批判の書き込みも結構目立ちます。
ことの本質はやはり規制緩和。価格の値引きはそこで働く労働者の労働条件の切り下げに直結します。ましてや全国2万865の新聞販売店で働く、43万9,107人(2005年10月現在)の新聞販売店労働者の労働条件(賃金・休日)をこれ以上下げる訳にはいきません。そうでなくとも労働基準法を守れていない販売店も少なくないのですから。
新聞労働者はカッコつけすぎ。反対意見に対してすべて論破することなど出来るわけもないのですから、指摘されていることについては反省し「正すところは正す」と約束をして、新聞業界の再構築を図っていくべきだと思っているのですが…。