公正取引委員会が「特殊指定」の見直しを検討していることに関しては「公正取引委員会と新聞業界の意見が違うが、再販制度、特殊指定制度それぞれ議論がある。同一紙同一価格でなければ、戸別配達サービスは維持できないのかどうか。よく協議してほしい」、「今の意見も踏まえてよく協議していくべき問題だ」と述べ、先週の安倍普三官房長官発言に続き、今度は内閣のトップまでが「公取委が検討している新聞特殊指定の見直し」に対して「慎重な姿勢」を表明しました。
これに対し、公正取引委員会の竹島一彦委員長は「各新聞社が価格戦略として、どこでも(価格が)同じだというのは自由だが、それでなければならないと何らかの法的枠組みで決めるのはまずいのではないか」と反論したそうです。
特殊指定問題は、3月に入って国会議員や地方議会の動きが活発化し、その論調は新聞協会と同じ「戸別宅配網サービスを阻害する」という問題点の提起のみに終始しています。特殊指定は新聞社、販売店双方の「値引き、割引きの禁止」に加えて、新聞社と販売店との取引関係に派生する「押し紙問題」も含んでいます。確かに撤廃されれば「全国同一価格」を維持する戸別宅配サービス(流通部門)に大きく関わる問題です。
ただし、値引き競争が果たして起こるのかという問題については、新聞社が自ら掲げる自主規制(新聞公正競争規約)の精神を持ってすれば、「そのような乱売合戦はあり得ない」というのが常識的な考え(公取委の考えもそうだと思います)でしょう。
しかし、現実に行われている販売実態(新聞社の販売政策)は、無購読者の増加、新聞の定期購読数が減っている中で、パイの奪い合いに翻弄し「何でもあり」の局地的な値引きによる販売攻勢(地方紙を潰す)を大手紙が仕掛けてくることは明白です。だから、地方紙や資本力が弱い販売店、その労働者には特殊指定が必要なのです。「特殊指定は必要ない」という方の意見に「戸別宅配は他の業者(ヤマトや郵政)で行える」というのもありますが、これまで新聞配達に従事してきた方の雇用先が新聞販売店から他の業者に移るだけ。それだけならまだしも現状より低い労働条件を強いられるでしょう。
「金さえ与えればどんな仕事でもやれるはず」なのでしょうか?人は誰でも1日24時間しかありません。現在、明け方の新聞配達に従事している方の他に同じような配達体制を敷く物流業者が現れるかは大きな疑問です。
要するに、新聞業界はこの問題を転機に多くの国民から非難を浴びている「新聞の売り方」を正し、新聞の役割、使命を再構築する必要がある―。新聞協会がその問題を棚上げし「戸別宅配サービスの危機」と理論をすり替えていることが問題なのです。
このまま、権力に擦り寄り、圧力をかざすだけの新聞業界に成り下がってよいのでしょうか。業界が襟を正さなければ、本当の意味で「マスゴミ」になってしまうと感じるのです。