2006年03月28日

小泉総理までが「新聞特殊指定」に言及

 小泉純一郎首相は27日の参院予算委員会で、民主党の平野達男議員が「独占禁止法の議論だけで特殊指定の見直しを先行するのは危険だ」との質問に対して、「新聞が各家に戸別に配達されるサービスが望ましい」と答弁しました。(朝日読売共同
 公正取引委員会が「特殊指定」の見直しを検討していることに関しては「公正取引委員会と新聞業界の意見が違うが、再販制度、特殊指定制度それぞれ議論がある。同一紙同一価格でなければ、戸別配達サービスは維持できないのかどうか。よく協議してほしい」、「今の意見も踏まえてよく協議していくべき問題だ」と述べ、先週の安倍普三官房長官発言に続き、今度は内閣のトップまでが「公取委が検討している新聞特殊指定の見直し」に対して「慎重な姿勢」を表明しました。

 これに対し、公正取引委員会の竹島一彦委員長は「各新聞社が価格戦略として、どこでも(価格が)同じだというのは自由だが、それでなければならないと何らかの法的枠組みで決めるのはまずいのではないか」と反論したそうです。

 特殊指定問題は、3月に入って国会議員や地方議会の動きが活発化し、その論調は新聞協会と同じ「戸別宅配網サービスを阻害する」という問題点の提起のみに終始しています。特殊指定は新聞社、販売店双方の「値引き、割引きの禁止」に加えて、新聞社と販売店との取引関係に派生する「押し紙問題」も含んでいます。確かに撤廃されれば「全国同一価格」を維持する戸別宅配サービス(流通部門)に大きく関わる問題です。
 ただし、値引き競争が果たして起こるのかという問題については、新聞社が自ら掲げる自主規制(新聞公正競争規約)の精神を持ってすれば、「そのような乱売合戦はあり得ない」というのが常識的な考え(公取委の考えもそうだと思います)でしょう。

 しかし、現実に行われている販売実態(新聞社の販売政策)は、無購読者の増加、新聞の定期購読数が減っている中で、パイの奪い合いに翻弄し「何でもあり」の局地的な値引きによる販売攻勢(地方紙を潰す)を大手紙が仕掛けてくることは明白です。だから、地方紙や資本力が弱い販売店、その労働者には特殊指定が必要なのです。「特殊指定は必要ない」という方の意見に「戸別宅配は他の業者(ヤマトや郵政)で行える」というのもありますが、これまで新聞配達に従事してきた方の雇用先が新聞販売店から他の業者に移るだけ。それだけならまだしも現状より低い労働条件を強いられるでしょう。
 「金さえ与えればどんな仕事でもやれるはず」なのでしょうか?人は誰でも1日24時間しかありません。現在、明け方の新聞配達に従事している方の他に同じような配達体制を敷く物流業者が現れるかは大きな疑問です。

 要するに、新聞業界はこの問題を転機に多くの国民から非難を浴びている「新聞の売り方」を正し、新聞の役割、使命を再構築する必要がある―。新聞協会がその問題を棚上げし「戸別宅配サービスの危機」と理論をすり替えていることが問題なのです。
 このまま、権力に擦り寄り、圧力をかざすだけの新聞業界に成り下がってよいのでしょうか。業界が襟を正さなければ、本当の意味で「マスゴミ」になってしまうと感じるのです。
posted by 今だけ委員長 at 13:23 | Comment(8) | TrackBack(1) | 特殊指定

2006年03月24日

新聞特殊指定 規制緩和政策に加えて既存制度と現実のギャップも問題なのです

 新聞の特殊指定問題について、県議会や自民党の各派閥単位でも現行制度の維持を国に求める意見書を採択した―との報道が連日紙面をにぎわせています。昨日は新潟県議会で、そして今日にも北海道議会で同様の発議がされ、議会採択となる見通しです。いま入ってきたトピックスでは内閣の安倍普三官房長官も「新聞業界を守るということではなくて、国民の知る権利をきっちり守っていく。東京にいようが過疎地、離島にいようが、どういうことが世の中で行われ、それに対してどういう批判、論評があるか知ることのできる社会を維持するのは当然だ」と表明しています。


 さらに、自民党の各派閥(二階グループ・丹羽、古賀派・河野グループ)も、新聞の特殊指定制度の存続を求める決議書を公正取引委員会に提出するなど、ここに来て政治家連合の動きも活発になってきました。

 新聞業界と政治家の深いつながりを指摘する「声」は少なくありません。「読者の新聞離れ」も新聞が社会的な問題を取材し、紙面で読者に提起することによって世の中の関心を引き、社会的な運動を巻き起こす―という「読者との一体感」が薄れてきた結果だと感じます。さまざまな情報を編集して、正確な情報を発信することと併せて読者と共に住みよい社会を目指していく… 新聞ってそんな役割を担っている―と思っています。「声」を無視してきた新聞の方が、読者から離れていったのでしょう。

 このブログにも「愚行な拡販を繰り返す全国紙」への批判とは反対に、地方紙に対しては好意的なご意見も頂戴しています。新聞社もボランティア団体ではないので、営利を求めないと取材活動も縮小せざるを得ないのですが、発行部数拡張のためにルールを無視した販売行為は改めなければならない。「既存の制度と現実のギャップ」を抱えたままでは、公取委も判断に苦慮するのだと思います。全国紙は「新聞の役割とは何か」を社内で議論したうえで、多様な言論を地方でも提供するというスタンスで拡販をするべきです。
 もう自ら新聞の価値を下げるようなことは止めませんか。

posted by 今だけ委員長 at 11:49 | Comment(3) | TrackBack(0) | 特殊指定

2006年03月22日

合理化に精を出した結果、読者を失った地方紙

マスコミ黒書.JPG
マスコミ黒書
著者:日本ジャーナリスト会議(労働旬報社)480円

 1968年初版発行。サブタイトルが「マスコミの黒い現実を告発する」とあるように戦後から60年安保までの日本のマスコミが伝えてきた真実とは何か?を検証する告発本。国民の知らないところで真実の情報が消されている様を古在由重(哲学者)、城戸又一(大学教授)、塩田庄兵衛(大学教授)の3氏を中心として、新聞、放送、出版などマスコミ全般に渡るマスコミ労働者の苦悩と歴史とそのメカニズムに触れながら、商業化したジャーナリズムの本質を追求している。

 「真実の報道を通じて新聞を全国民のものとする努力は、いま新聞労働者の日常の活動とならなければならない。新聞を通じて戦争の危機を防ぎ、平和と民主主義を守り、国民の生活向上のために現在の新聞労働者が果たすべき責任は重大であり、われわれに対する国民の期待は極めて強い。われわれは新聞を独占資本が国民を収奪する道具としていることに抵抗しなければならない。われわれは日常報道するどんなに小さな記事、写真もそのまま国民生活につながるものであることを自覚しているが、いまやこの自覚を行動に移さなければならない。記者編集者の一人一人から、工場・発送の一人一人まですべての新聞労働者が『真実の報道を通じて新聞を国民のものにする闘い』に意識的また組織的に取り組まねばならない」。新聞労連が1955年に開催した第6回定期大会の運動方針である。また、1957年10月には「新聞を国民のものにするたたかい」をスローガンに第1回新聞研究集会が開かれている。報道の民主化には労働組合が大きく関わってきた。利益追求のために真実を捻じ曲げる経営側と闘ってきたからこそ、読者に支持をされ「紙面の信頼」を得てきたーと続く。

 販売問題にも触れている。1950年新聞販売網の「自由競争」が再開される。日本の独占資本は全国的な規模の大新聞の復活を必要としていた。大全国紙はそれまでの共販制をとっていた販売制度をやめて、専売制の復活を強行して流通過程の支配に乗り出した。この中で、用紙統制と共販制に依存していた新興紙の大部分は大資本に吸収されるか、崩壊させられるかしていった。そのため、新聞の販売拡張競争はすさまじい激しさをみせた。販売地域の“縄張り”をめぐって販売店がヤクザの出入りもどきの争いを各地に展開した。販売拡張員は新規購読者の開拓、他紙購読者の横取りのために、人権を無視した勧誘競争を強いられた。
 販売拡張競争は新聞産業の高度成長の中で、その後さらに醜悪化している。1959年春の大手3社の北海道進出時は気狂いじみた事態が発生し「北海道進出では1部1万円の拡張経費を使った」(読売新聞・務台専務)

 大全国紙の独占強化の中で、地方紙は地域独占資本と結びつきながら市場防御に専心している。そして何よりも中央紙による侵略に戦々恐々としながら、地場資本との橋渡しをする”政界人”に貢いでいる。また記事の多くを通信社の配信記事にあおぎながら合理化を進めている。合理化に精を出しすぎたため、取材能力を失って、その見返りに読者を失っている例も少なくない―と分析している。

 現在、見直しが検討されている特殊指定の問題は、このような過去の実態があって制定されたもの。規制がなければ「大資本に飲み込まれる」ということは歴史が実証している。
 資本主義経済が立ち行かなくなってきている昨今、0.4%の人間が70%の金を掴む構図にさらに拍車をかけるのが米国主導の規制緩和政策であることに間違いは無い。その中で、新聞の規制緩和は単に情報伝達方法のあり方などという視点ではなく、言論機関の縮小という観点で議論しなければならないと思う。
posted by 今だけ委員長 at 23:49 | Comment(4) | TrackBack(0) | 書籍紹介

2006年03月19日

「推進」中日新聞経営側と闘い抜いた東京新聞労働組合の歴史

年々歳々五月の空の如く.JPG
年々歳々五月の空の如く―東京新聞争議の十年―
著者:東京新聞労働組合(民衆社)980円

 第二次世界大戦敗戦後、言論統制を強いられてきた新聞社にも民主化が訪れ、労働組合が旗揚げられた。しかし、その後、レッドパージ、60年安保闘争などにより新聞労働組合の運動も経営側による弱体化工作を受け、しだいに企業内労働組合活動へとその道を辿っていく。
 しかし、その中でも東京新聞労働組合は中日新聞社による弾圧に屈せず、闘い抜いた東京新聞労組の歴史書

 1963年11月20日の東京新聞社は臨時株主総会を開き中日新聞社との業務提携が承認される。そこから中日新聞社の経営陣と東京新聞に勤める組合員との熾烈な闘いが繰り広げられる。中日から来た鈴木充副社長は組合敵視の労務政策を展開し、分派育成工作(第二組合立ち上げに協力)、スト対策で暴力団まで駆り出しロックアウトを強行、機動隊の導入など…組合への弾圧は非常極まりない。

 その後、東京新聞労組を脱退しない従業員に対して、昇給昇格などの差別や配置転換が行われる。そのすべてにおいて粘り強く闘った組合側に労働委員会も裁判所も組合勝利の判決を下したが、中日新聞社に営業譲渡をされた時点で500名いた組合員は無法な組合攻撃によって124名にまで減少せざるをえない想像を絶する闘いであったのだ。

 東京新聞労働組合は、今もなお中日新聞社側と争議を抱えている。今後もその闘いの歴史は、機関紙「推進」に残されていくだろう。

posted by 今だけ委員長 at 23:47 | Comment(2) | TrackBack(0) | 書籍紹介

2006年03月18日

権力を使うという禁じ手

 おとといは公明党、きのうは民主党が、新聞特殊指定問題について協議、および見直しに反対する懇話会をそれぞれ党内に発足させました。
公明党は「新聞問題議員懇話会」(会長・冬柴鉄三幹事長)。民主党は「新聞と『知る権利』議員懇談会」(発起人代表・山岡賢次副代表)。

 社団法人日本新聞協会や社団法人日本新聞販売協会が、特殊指定を堅持するために政治家へ働きかけたことは明白。独禁法上、特殊指定の改廃は、国会審議とはならず公取委の判断で存続、撤廃を決められる(修正の場合は審議が必要)のですが、各政党が動きを見せたことで公取委も予想外(選択肢にはあったのかも知れませんが)の対応を迫られることは必至です。

 確かに一般市民やそれぞれの業界であれば、議員(立法)に頼ることも、物事を進めていく手段の一つだと思いますが、新聞は違うでしょう…。という違和感が拭えません。
 権力に擦り寄る構図は危険だと感じます。新聞経営者は付かず離れずに政治家を利用しているとでも思っているのでしょうが、逆にメディア側が政党の都合のよい報道を確約させられているとしたら…恐ろしいことです。これは特殊指定云々を言う以前に怖いことだと思っています。

 特殊指定を守る―公取委は「業界の都合のよいことでもよいから具体的に外れた場合にこうなるからとはっきり言って欲しい。新聞協会は何も言ってくれない」と述べています。宅配制度の危機?は、やはり論理のすり替えとしか映らないのです。もっと国民や公取委に対して、現状の改善点を具体的に明示して理解を得ることから着手しなければ、特殊指定撤廃を免れた後にもっと大変な仕打ちが来るように感じるのです。民間企業である新聞社。国民から見放された情報産業は成り立つはずはありません。

 業界構造の問題に着手して、新聞社として胸を張れる対応をこの特殊指定問題で打ち出して欲しいと願っているのですが、最後は“権力の力”という禁じ手を使ってしまう温い業界の体質が、さらに読者の信用を失墜させてしまったのでしょう。

posted by 今だけ委員長 at 18:42 | Comment(2) | TrackBack(3) | 特殊指定

2006年03月16日

「特殊指定」の堅持求める 新聞協会が特別決議

 3月15日、社団法人日本新聞協会(会長は毎日新聞社の社長 北村正任氏)は東京都内で会員総会を開き、公正取引委員会に対して「現行の新聞特殊指定の堅持」を求める特別決議を採択しました。
これまでも、同協会では「特殊指定プロジェクトチーム」を設置、特殊指定維持に取り組んでいます。

 決議は「特殊指定の見直しは、特殊指定と一体である再販制度を骨抜きにする。販売店の価格競争は戸別配達網を崩壊に向かわせる」とした上で「その結果、多様な新聞を選択できるという読者・国民の機会均等を失わせることにつながる」と訴えています。
 決議採択後、北村会長は「他の物品と同じように価格競争にさらし、生き残るものだけが残ればいいというものではない」と新聞が果たしている公共的な役割を強調しました。

 また、日本新聞販売協会も同日、「戸別配達制度は新聞社、販売店が一体となって長年にわたって築き上げてきたもので、多くの読者は制度の継続を望んでいる。特殊指定の改廃は、戸別配達制度の崩壊を招く」という中畦光行会長(毎日新聞販売店)の談話も発表されました。

 新聞業界あげての総力戦。悲しいかな“そこに読者はいない”のです。もっと編集と販売が協力をして読者の声を伝えられる体制や、信頼される紙面づくりに取り組めれば、もっ違う展開が出来るのでしょうが…。

【関連記事】
読売新聞  朝日新聞
posted by 今だけ委員長 at 10:50 | Comment(11) | TrackBack(0) | 時事ニュース

2006年03月15日

新聞広告報(3月号)を読んだ!

 社団法人日本新聞協会が発行する新聞広告報(毎月1回1日発行)を読んで、気になったことが二つありました。

      広告報.jpg
 ひとつは表紙にある「気になる新聞広告」と紹介されているヤマト運輸の広告。「クロネコ30年浪漫」と銘打った広告の解説には「先輩のセールスドライバー(配達員)が、後輩のセールスドライバーを指導する場面を挙げて、宅急便が30周年を迎えたという内容がつづられています。荷物の送り主・受け取り主以外のお客様を思うことが、サービスの根底でモチベーションを高める要因になっていると感じられます。日常的な風景から宅急便が生活に浸透していることをあらためて印象付け、ヤマト運輸という企業の、そして宅急便が持つ社会的使命に対する意気込みを感じさせる広告です」とあります。
 流通業は人力という形のないものを売っているわけですから、イメージで伝えることが大切なのだと思います。プロが創るのでしょうけれど上手です。

 二つ目が、特集!今年の新聞広告予測「広告会社アンケート」結果です。@景気の見通しは、7割以上の会社で「良くなる」と回答A広告主企業の業種・出稿見通しは、五輪、サッカーW杯開催で「家電・AV機器」に期待感Bナショナル・ローカル・広告案内の動向は、案内広告は改善、ローカル広告は減少を予測C媒体別の総広告費は、新聞は微減、インターネットは大幅な伸び見込むD広告効果/新聞広告の特性は、高度な広告効果測定を摸索する広告会社―。

 新聞広告の方向性は「信頼性」の維持なのだそうです。「インターネット広告が勢いよく伸び続けているが、信頼性ということでは、まだまだ新聞が圧倒している。今後、インターネット広告と新聞広告の間に必要なのは『融合』ではなく、『連動性』だ」とあり、クロスメディアへの対応を新聞界あげて取り組むべき課題であるとの認識があるようです。
 広告収入の比率が高い新聞社ほど広告の動向が気になるもの。電通をはじめ広告代理店の割り振り(企業の年間総広告費をメディア毎に配分するのは代理店)如何によって新聞社の経営が左右することもあり得るのです。だから新聞社はその指標として部数を下げられないのです。部数が下がる=シェアが低いメディアを使おうと思いませんから…。だから「押し紙」が増えるんです。
「無駄が金を生む日本のシステム」なかなか正せません。
posted by 今だけ委員長 at 17:12 | Comment(3) | TrackBack(0) | 日記

政治的力で推し進めるしかできないのだろうか

 埼玉県の新聞販売店連合に続き、北海道内に本社・支社を置く日本新聞協会加盟の新聞社(9社)が、特殊指定の堅持に関する請願を採択するよう北海道議会の全5会派に要請しました。
 「北海道は過疎地もあり、新聞の宅配制度を維持する要請趣旨は大いに理解できる」と議員の方々も請願採択に前向きのようです。

 特殊指定の存置をめぐって、社団法人日本新聞協会社団法人日本新聞販売協会日本新聞労働組合連合などの団体が、声明発表や公取委との「対話」を行なっていますが、自民党の有志議員で作る新聞販売懇話会や今回のような議会への請願など、政治力で特殊指定の存置を推し進める動きが気になります。

 政治家いわゆる権力側に新聞経営陣は擦り寄ってよいのだろうか…。なりふり構わぬ行動が、国民の目にどう映っているのか考えないのでしょうか。もっと国民の利益につながるような規定をいまの制度に追加事項として盛り込んだ逆提案を求めたいのですが。



posted by 今だけ委員長 at 13:42 | Comment(3) | TrackBack(0) | 時事ニュース

2006年03月11日

緻密なマーケティングがなければ成功はない

 前にエントリーしたフリーマガジン「R25」について、業界紙にこんな記事が載っていたのでアップします。

3月10日付「新聞之新聞」から抜粋―
「R25」の成功体験聞く
 日本ABC協会の「ABC東京フォーラム」が3月2日、東京・内幸町のプレスセンターホールで開かれ、リクルートのフリーマガジン「R25」編集長の藤井大輔氏が「フリーマガジンR25が男性団塊Jr.に支持される理由」と題して講演した。
 同誌は25歳以上のサラリーマンをターゲットに創刊され、首都圏で60万部が発行されている。JRや私鉄の駅構内やコンビニエンスストア、書店に専用ラックを置き、捌け率(持ち帰られる比率)はリクルートの調査で99.7%という。
 同誌の発刊は社内の新規事業コンテストで「YAHOO!」などインターネットのポータルサイトを例にした「ペーパーポータル構想」として持ち上がったという。藤井氏は「インターネットの入口になるポータルサイトは事業としても成功している。新聞、雑誌、書籍など活字メディアの入口になるペーパーのポータルがあってもいいのでは、と提案があった」と説明。活字離れの傾向にあるM1層(20歳〜34歳までの男性)を対象に「新聞のように日常的に読まれるメディアをつくることができないか」ということで、フリーマガジン事業化を計画した。
 創刊にあたっては、M1層200人に新聞への接触態度についてアンケート調査を実施。調査結果を犬に例えて分析しながら、新聞を読みきれず情報の取捨選択が不十分で、社会的情報をあまりとっていないことにコンプレックスを感じている「情報消化不足のやせ犬」に注目し、それまでのフリーペーパーにあまり見られなかった政治、経済、社会の情報を多く扱うことにしたという。
 「読む時間やシーンを設定しない限り読んでくれない」と、M1層の平日の行動パターンも調査し、朝はギリギリに起きて出社、夜8時ごろまで仕事をまじめにこなし、ほとんどはまっすぐ帰宅、パソコンでメールやブログをチェックして深夜1時ごろ就寝―という平均的な生活パターンが浮かび上がった。そこから「彼らは何かと忙しく、余裕のある時間はない。仕事の時は仕事の情報、プライベートの時はプライベートの情報しかいらない。今世の中に何が起こっているかという社会的情報を得る機会が少ない」と分析、時間的に余裕のある帰りの電車の中で読んでもらうような編集を心がけ、「脳もオンからオフに変わる」と、誌面は前半に政治、経済など硬いニュース、後半はコンビニやテレビなどの軟らかい情報に比重を置いた。
 事業化への課題では、藤井氏は@無料でも自分にとって無駄だと思うものは受け取らない傾向にある人に対するアプローチA「読み捨てられる」など、フリーペーパーに対する広告主の既成概念Bラックの設置場所―を挙げ「帰りの電車で読んでもらうことを徹底したことで、これらの課題が解決した。読み捨てられない工夫として『自宅までじっくり呼んでもらえる』ということを訴え、帰りのコンビニに寄る直前に読む雑誌として広告主に理解してもらった」と話した。
 同誌の書評「R25的ブックレビュー」は、専用コーナーを設ける書店もあるほど好評だが、狙いを「M1層は活字離れが激しく、もう一回活字メディアの良さを感じてもらいたかった」と語った。
 締めくくりで藤井氏は「R25を読むようになってからニュースや新聞が面白くなった」という読者の声を紹介し、「M1層が変わっていくのに『R25』が寄与していると思う。ビジネスを超えたところで何か還元できていると思うし、公益性のあるメディアをつくる者としてプレッシャーはあるが、それがうれしいことでもある」と話した。


 あらためて、リクルートのマーケティング力を…流石です。
posted by 今だけ委員長 at 15:21 | Comment(2) | TrackBack(0) | 日記

ヤマトとドイツポスト 合弁でDM企画会社を設立 

 ヤマト運輸の持ち株会社であるヤマトホールディングスは、国際物流事業会社のドイツの郵便会社ドイツポスト・ワールドネット傘下のDHLグローバルメール・ジャパン(東京)と合弁。ダイレクトメールの効果的な送付方法を企画提案、市場調査などを手がける新会社「ヤマトダイアログ&メディア」を4月に設立すると3月10日に発表しました。本社は東京で、資本金1億円。出資割合はヤマトが51%、ドイツポストが49%を出資する。3年後をメドに売り上げ100億円を目指すとのこと。

 ヤマト運輸の小倉社長は「メール便市場はさらなる成長が期待できる」と語っています。ヤマトホールディングスは一千億円のDM事業の売り上げを五年後には1.5倍にまで引き上げたい考えを示唆しています。


 ヤマトは郵政民営化による新会社設立を見据え、競争激化に備えて事業拡大を着々と進めています。今回の新会社設立も「クロネコメール便」の売り上げ増につなげるのが狙い。流通産業の2極化はさらに進み、劇的な事業の統合が展開されようとしています。

 中小の流通会社は、ヤマト、郵政新会社の「下請け、孫受け」の作業受託により、これまで以上の「低コスト(低賃金)」を強いられることは必至です。

posted by 今だけ委員長 at 11:05 | Comment(2) | TrackBack(1) | 時事ニュース

2006年03月10日

ブログは新聞を殺すのか

 書籍というより週刊誌の紹介を!
 勤める会社で取り扱っている「ニューズウイーク(日本版)」を定期購読しているのですが、昨日届いた3・15号の特集は「ブログは新聞を殺すのか」。時事通信の湯川さんが書いた「ネットは新聞を殺すのか」のパクリ?と興味津々ページをめくってみました。
   紙.jpg      裏面.jpg
 ネットの急速な進化が名門ニューヨークタイムズをも存亡の危機に。激動の最前線アメリカからニューメディアの未来について「ブログは新聞を殺すのか」、「紙のニュースが燃え尽きる日」、「市民メディアの夜明けが来る」の3部構成で報告されています。
 新聞の王座を脅かすブログと巨大ポータル。アメリカの日刊紙の発行部数は80年代からその落ち込みに歯止めがかからず廃刊する地方紙も多いーとデータをもとに分析。「EPIC2014」の説明も掲載されています。
「ニュースの価値判断が新聞の未来を左右する」と新聞の可能性について触れている箇所を引用します。

「新聞には関心の異なる多くの読者の欲求に応えなくてはならないというハンディもある。テーマごとに細かく分かれているニュースサイトやブログには、そうした悩みはない。自分の興味ある分野のニュースだけ表示したり、電子メールで送ってもらうようにすることも簡単だ。だたし、すべての読者がそれを求めているかどうかはわからない。自分が知りたいことより、他の人々が何を知っているかを知りたいからではないか。新聞の未来は、紙のままであれ電子化するのであれ、そうしたニュースの価値を判断するメディアとしての存在意義をどれだけ認めてもらえるかにかかっている」

「読み手同士の無限の対話を可能にするブログは、民主主義に欠かせない自由な議論を促すという点で、新聞にとってこれまでで最も手ごわいライバルかもしれない。逆に主観的な意見にこそ価値があるブログの普及は、客観性を武器とする新聞の必要性を読者に再認識してもらうチャンスかもしれない」

 日本とアメリカでは歴史も文化も習慣性も違いますが、ネットの普及と新聞離れをアメリカ事情と同じに扱ってはいけないと思います。宅配網にあぐらをかいて「読者から離れていった」日本の新聞。復活をかけて紙面内容の工夫、販売の正常化に早急に取り組むべきだと思います。
posted by 今だけ委員長 at 01:01 | Comment(7) | TrackBack(0) | 書籍紹介

2006年03月08日

ゼロ円の「R22」を配送料金を払って取り寄せました

 リクルートが発行するR25[アールニジュウゴ]の特別号R22を取り寄せました。新社会人の特集号だったので、仕事(新聞購読)に結びつくヒントがあればなぁという気持ちと「流行っている」と聞くけれどゼロ円の媒体がどの程度の内容なのか興味津々。

R25.jpg

 「R25」は首都圏(東京、千葉、埼玉、神奈川)の駅・コンビニ・書店・小売店・飲食店など4,500箇所で無料配布されているフリーペーパー。仙台市内では手に入らないため、ネットで申し込んで配送してもらいました。ゼロ円の商品を360円の送料を払って手に入れるというなんとも不思議な商品…。流通経費だけは当然ゼロにはならないわけです。

 広告収入で製作コストを補うフリーペーパーの中で、やはりリクルートはターゲットを絞った企画で読み応えも十分。毎週R25をテキストに行動する人が増えてきそうな気もします。
 ターゲット(世代)を絞った情報を別冊子にして発行するR25と、世代ごとにという概念をおかずに生活に必要な情報をまとめて発行する新聞。ゼロ円:購読料、駅置き:宅配、世代ネタ(雑誌社が判断):高重要情報(新聞社が判断)…いろいろなバトルがあります。

 リクルートの戦略には関心します。新聞業界に身をおく私も今後もフリーペーパーの動きは気になるところです。
posted by 今だけ委員長 at 16:14 | Comment(5) | TrackBack(0) | 日記

2006年03月04日

自民党新聞販売懇話会 ネット検索では扱いを操作…

 自民党の有志議員で作る新聞販売懇話会が3日、東京・永田町の自民党本部で開かれました。

 公正取引委員会が昨年11月に見直しを表明した「特殊指定」について、公取委や日本新聞協会、日本新聞販売協会(日販協)との意見交換。出席した議員からは「国民は宅配制度を望んでいる」「活字文化を守るためにも必要だ」との“見直し反対”の意見が相次いだようです。

 ちょっと気になったのが、『自民党新聞販売懇話会』をMSNヤフーなどのポータル検索でのトップビューとグーグル検索によるトップビュー(3月4日11:30現在)。

これもひとつの情報操作?
posted by 今だけ委員長 at 11:54 | Comment(3) | TrackBack(1) | 時事ニュース

2006年03月02日

新聞の特殊指定 存置のためには内部の問題を正すべき

 毎日新聞が「特殊指定見直し 国民の利益につながらない」という社説を3月2日付朝刊に掲載しました。これで全国3紙(朝日・毎日・読売)が、新聞の特殊指定に対する態度を表明したことになります。
 それぞれの社説を見比べてもほとんどが同じ主張で、「特殊指定」と「戸別宅配網」を強引に結び付けています。
 もし、特殊指定が外されても発行本社が再販制度を販売店に守らせれば混乱は起きないのでしょうが、現在行なわれている発行本社によるノルマ的な目標部数の設定や、その目標を達成させるために過剰な経費を使った新聞販売行為の実情を見れば、紙面の競争ではなく“値引き・割引き・過剰な景品”を使った販売競争が繰り広げられる―とは、誰もが感じていることです。そうなれば「戸別宅配網」を維持する販売店が縮小していくのは歴然ですが、新聞社が「戸別宅配網」の危機を訴えるのであれば、その前に新聞社の販売政策を見直す必要性があると思います。

 多くの国民は新聞を特殊指定商品として残すことの可否を問題視しているのではなく、ジャーナリズムという新聞の本質的な役割・機能に対する疑念、記者の倫理の問題、既得権に関連する新たなメディアを排除する記者クラブ問題、多くの反感を買っている販売行為など「新聞が言っていることとやっていること」の格差が不満の根本的問題だと多くのブログなどを拝見して感じるのです。
 新聞社の問題はさておき「戸別宅配網」という二次的な問題でしか、「特殊指定の問題」を主張しない新聞業界。国民からの疑問や反感に対して、明確な改善策を示すことが先決だと思います。

 「公取委は世論に耳を傾け、現行制度を維持すべきだ」との主張に対して、「新聞社も世論に耳を傾け、新聞社の倫理・秩序を乱す販売政策を見直すべきだ」と返答したい。



posted by 今だけ委員長 at 12:36 | Comment(4) | TrackBack(4) | 特殊指定

2006年03月01日

ヤマトと郵政新会社  二極化がすすむ物流業界

 おととい「ヤマト運輸と西濃運輸が新会社設立」のエントリーを立てたばかりですが、郵政の民営化に端を発し、流通業界は物凄いスピードで「新規業務の拡大」が進んでいるようです。

 まずは、郵政公社が「メール便」に参入。ヤマトとのし烈な戦いが拡大!日本郵政公社がポストに投函できて、どこまで運ばれたかも追跡確認できる「簡易小包(愛称・ポスパケット)」を4月1日から始めると発表しました。新聞販売店でも取り組んでいる「メール便」の配達業務は、ヤマト運輸はその8割の物流を抑えていますが、民営化を控えた郵政公社の参入でまた新たな競争が繰り広げられようとしています。
 ネット回線普及の時にあった“ヤフーBBが先手を打ったものの、いずれ巨人NTTが攻勢に立つ”という構図になるのかなぁと感じます。

 一方、ヤマトは高島屋の物流業務全般を受託ヤマト運輸が、百貨店最大手の高島屋と物流業務全般を受託したと発表しました。宅配業務だけでなく、包装や伝票添付、クレーム処理、卸業者の納品確認、売り場への配送なども請け負うということです。
 大量消費の時代、大量に在庫を抱えなければならないスーパーや百貨店は、できるだけ物流費を削減したいーというニーズに“クレーム処理”や“納品確認”のオプションまで付くのなら有難いでしょうね。物流業界は「ヤマトと郵政新会社の二極化」の様相が見えてきました。
posted by 今だけ委員長 at 19:52 | Comment(2) | TrackBack(1) | 時事ニュース
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