2009年11月09日

新聞研究700号特集「新聞の明日」を考える

 日本新聞協会が毎月1日に発行する「新聞研究」が、11月1日付発行分でちょうど700号。誌面では「700号特集 新聞の明日」として、7名の方からの寄稿と記者教育担当者による座談会が収録されており、新聞の必要性やジャーナリズム活動への期待など、いつもの紙面よりボリュームのある内容となっています。

 なかでも中馬清福さん(現在は信濃毎日新聞社主筆)の寄稿「『可能性への期待』を捨てるな」と、岡谷義則さん(中国新聞社専務取締役)の「厳しい経営環境にこそ必要な志」は興味深く、新聞人と読者の埋まらない距離感の本質と、新聞社が内包する「問題提起をしても変われない組織」を提起されています。

 中馬さんは記者の目線を下げることと、それでも難解な新聞記事に「わかってもらう」という補助エンジンが必要だとし、信濃毎日新聞社が取り組んでいる「Waの会」で寄せられた「(政治記事で)記事がかゆいところを書いてくれず、どの政党・候補者がベターか、中途半端であいまいな紙面が余計わかりづらくしている」との読者の意見から、「ニセの」客観報道は限界にきていると述べています。
 メディアリテラシィーの問題やシビックジャーナリズム(単語としての表記はありませんが)の必要性を強く感じるものです。2003年に岩波新書から発行された「新聞は生き残れるか」(当時、中馬さんは朝日新聞社勤務)の改訂版として拝読させていただきました。

 岡谷義則さんは、1995年に日本新聞協会が立ち上げた「近未来の新聞像研究会」のメンバーとして、報告書「デジタル情報時代 新聞の挑戦―ジャーナリズムは生き残れるか」をまとめられた方で、同報告書(発行は1998年)に記した新聞経営への5つの提言と、新聞づくりの現場が抱えている課題について提起されています。
 岡谷さんは、デジタル情報時代への新聞の挑戦は、経営面からみると有効なビジネスモデルを描き切れていないとし、新聞社同士で連携できる事業領域に取り組み、コストカットを図ることが“さし当って”苦境に立たされている新聞産業の打開策だと述べています。


 すでに11年前にまとめられた報告書「デジタル情報時代 新聞の挑戦…」を読み返すと、▽新聞ジャーナリズムの再構築▽デジタル情報革命への挑戦▽販売・広告・流通部門の改革▽内部体制の強化▽新聞界における共通利益の拡大―の5つを骨格として、具体的な改善実行案まで踏み込んであるのですが、今日の新聞経営が抱える課題と概ね変わっていません。特に「販売・広告・流通部門の改革」の項では@販売の正常化は、今度こそ絶対に実現させなければならない。これは21世紀の新聞経営の根幹にかかわる課題であるANIE活動など新聞業界全体の取り組みで無購読者層への働きかけを強め、新聞離れの壁を打ち破るべきだB新聞社自身は21世紀の新聞販売店像を具体的に提起し、流通システムの変革に向けて一歩踏み出すべきだC低成長下の多メディア時代に合っては広告主の媒体選別は一段と厳しさを増す。広告主の理解しやすいデータや取引システムなどの整備、新聞ならではの企画広告の開拓を積極的に進め、新聞の信頼と、それぞれの媒体特性を武器に、新聞広告の復権を目指すべきだ―と、今もってなかなか成果が表れない(さまざまな取り組みがされていることは理解しつつ)課題ばかりです。

 ルノーから日産自動車再建のために経営者として迎えられたカルロス・ゴーン氏は「すでに社内には、問題点解決策が検討され、すでに出揃っている。後は、実行するだけだ」と就任時に語ったそうですが、新聞産業は問題点や課題は10年以上前から提起されているのに、実行力が伴っていないと言わざるをえません。
 やはり「人」の問題としか結論はないようです。

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2009年11月04日

ネット社会は従来からある産業基盤を破壊したに過ぎない

ネットビジネスの終わり.jpg
ネットビジネスの終わり
著者 山本一郎(PHP研究所)1,000円

 行き過ぎた市場原理主義的な自由競争はある程度是正されるべきであり、報道の質を担保するだけの健全な情報産業の市場を作り上げないことには、真の意味での情報社会は到来しないだろう
(ココが著者の本質ならイイのだけれど)

 「切り込み隊長BLOG」を運営する著者の近著「情報革命バブル崩壊」からも何となく、「この人は新聞の応援団なのか?」という感じを受けたのですが、「適切な情報の源泉は必要」という立ち位置からネットビジネスにかき回されてきた社会がもたらしたものは何かを鋭く解説した1冊です。結論に至るまでの前置きがかなり理屈っぽいので、かなり飛ばし読みしましたが「なるほど」と思えるものも少なくありません。

 文中でオッと思ったか所を引用します。


 情報革命といわれ、誰もが居ながらにして便利で現代的な社会生活を送る技術革新でバラ色の未来図を楽観的に描いていたネット業界も、結果を見れば社会のフラット化どころか、適切な競争戦略や規制のなかった分、より露骨な資本の理論に揉まれ、従来の業界以上に強者と弱者が熾烈な分裂を遂げるという悲惨な実情だけがあらわになったと言える。誰もが自由に情報にアクセスでき、解放された社会の実現と言えば聞こえはいいのだが、実際には黒字化の経営努力の乏しいベンチャー企業が豊富な市場から資金調達余力で既存ビジネスのダンピングを繰り返し、従来からある産業基盤を緩やかに破壊してきたにすぎない。・・・高いコストをかけて正確な報道を行う通信社や新聞社は、巨大な市場の波に翻弄され、文字どおりの経済的な弱者、敗者として組み敷かれた。本来なら、国民の知る権利を保障するという社会的に価値のある事業であったとしても、実質的には著作権による庇護もなく、再販制度や記者クラブといった、古くからの業界の慣習に依存して収益を確保してきたビジネスモデルが命取りとなりつつある。


 新聞社のような従来型ビジネスを堅持するグループは、ネットで自由競争をしている環境に自ら入り込み、プレイヤーとして頑張ろうと考えてはならない。・・・むしろ、新聞社などの既存の情報産業が新興ネット関連企業と根本的にまったく違う分野での影響力を事業維持のために行使すべきである。経営の合理化はしっかり進めたうえで、官公庁や政府に対して強く働きかけ、国民の知る権利と報道内容の質的向上を目指すための新たな枠組みを構築することである。



 いま、米国の新聞社などはネットに配信するコンテンツの有料化に懸命ですが、ネット社会から紙ベースへ戻ることは考えられないので、ネット新興企業の競争に巻き込まれるべきではないとする著者の主張は理解しつつ、ではネット社会の中で報道内容(取材体制)の質的向上を図りながら原資をどうやって確保していくのかという“もうひと言”がほしかったと思います。欲張りかなぁ…。
 確かにこれからの情報産業、マスメディア産業、新聞産業の方向性を断言する人のほうが怪しいのですが、必ず消化不良になってしまいます。まずいろいろなことを顧客ベースで考えていくしかありません。


 ユーチューブが赤字でもやっていけるのは「グーグルのおもちゃだからやっていける」と断言する著者の言葉をしり目に、産経新聞がユーチューブに公式チャンネル(Sankei News Channelを開設しました。


 ネットバブル再来に投資する産経か?それとも読者と一緒に年老いていくしかないオールドメディアか?じゃんけん後出しよろしく、何もしないでいることのほうがイイのかなぁ…イヤ、ダメだダメだ。
posted by 今だけ委員長 at 23:48 | Comment(0) | TrackBack(0) | 書籍紹介

2009年11月02日

ビジネスアイが展開する週刊誌とのセット販売

 このところ、新聞価格の流動化が目につきます。先月だけでも2件の事例が業界紙で紹介されていました。
 売上が伸び悩む新聞業界のなかでも、スポーツ紙とビジネス紙の落ち込みは相当なものです。以前は販売部数を引き上げるため「人とオマケ」に投資したキャンペーンが展開されてきたのですが、「値上げ」と「値引き」によって増収策を模索しようとする新聞各社の動きが出てきたと感じます。


スポニチ大阪本社 1部売り130円に値上げ(新聞情報 10月7日付)
 スポーツニッポン大阪本社は1日から1部売り定価を120円から10円引き上げ、130円に改定しました(月ぎめ購読料3260円は据え置き)。ただし、名古屋市内で現地印刷する東海版(愛知、三重、岐阜エリアで発行)の1部売り価格は120円のまま据え置くとのこと。即売定価を二重価格にするということです。「即売用と宅配用とでは紙面構成も若干違う」とは言え、新聞特殊指定の「差別定価」との兼ね合いが問題視されてしかるべきでしょう。


週刊誌とセットで1935円引き ビジネスアイとダイヤモンドで(新聞通信 10月29日付)
 フジサンケイビジネスアイ(日本工業新聞新社)は、10月の新創刊1周年を記念して、ダイヤモンド社と連携して、「週刊ダイヤモンド」とのセット定価キャンペーンを23日から開始しました。キャンペーンは来年1月末まで実施されるようです。
 ビジネスアイと週刊ダイヤモンドのセット販売は、1年間の購読契約をクレジットカード決済するとことで、定価7万5400円(ビジネスアイ月ぎめ4200円×12カ月とダイヤモンド年間購読料2万5000円))のところ6万300円で購読できるというもの。年間1万5100円(20%)の割引となります。


 週刊ダイヤモンドはもともと年間定期購読の割引制度(ビジネス系週刊誌はほとんど)を導入しているので、今回の連携でダイヤモンド社側が更なる値引きに応じたとは考えられません。そうするとビジネスアイ側がセット価格の割引分の転嫁を受けたと考えられます。ビジネスアイの購読料は5万400円(4200円×12カ月)から3万5300円へ実質30%割引されることになります。

 カード決済によって購読料が前払いとなり集金の手間が省けること、「オマケ」を付けて契約更新(半年ごと)にかかる経費や圧縮できるとの判断から、購読料を30%割り引くという価格政策に踏み切ったフジサンケイビジネスアイ。価格の弾力化は公正取引委員会も推奨するところでしょうが、デフレ拡大によって起こる流通破壊は、最終的に生活者の利益になるのか考えたいものです。
posted by 今だけ委員長 at 06:15 | Comment(0) | TrackBack(0) | 特殊指定

2009年11月01日

北日本新聞社が夕刊発行を年内で廃止

北日本新聞、夕刊休刊へ
 
12月28日付で富山県の地方紙・北日本新聞社(本社・富山市、河合隆社長)は31日の夕刊紙面で、12月28日付をもって夕刊を休刊するとの社告を掲載した。ライフスタイルが変化しインターネットも普及する中、夕刊の発行部数が伸び悩んでいるのが理由で、代わって朝刊紙面とホームページを充実させるという。
 同社によると、夕刊の発行部数は約3万2千部(今年9月現在)。1940年8月に発行を始め、戦中に一時休刊したが、55年4月に復刊した。ピーク時には約5万6千部を発行していたという(アサヒコム 2009年10月31日 朝日新聞)


北日本新聞社、夕刊を休刊へ

北日本新聞社(富山市)は31日付の夕刊1面に社告を掲載し、夕刊を12月28日付で休刊すると発表した。
 ライフスタイルの変化とインターネットの普及などを理由に挙げ、「今後は朝刊とホームページそれぞれの特質を生かした情報提供を目指す」としている。
 同社経営企画室によると、夕刊は朝刊と同じ1940年に創刊された。戦時中の44年に一時休刊したが、55年に復活。現在は富山県内で約3万2000部を発行している。朝刊は約24万9000部(ヨミウリオンライン 2009年10月31日  読売新聞)

 北日本新聞が夕刊を廃止するとか?という情報が入ったのが今年8月のこと。
 昨年は北海道地区の毎日新聞、秋田魁新報、今年に入り沖縄の琉球新報、沖縄タイムス、南日本新聞などがこれまで夕刊を廃止してきたので、あまり驚くこともないのですが、夕刊廃止の動きはさらに加速しそうです。
 沖縄の2紙は完全セット版から夕刊廃止の決断をしましたが、朝刊と夕刊の部数差が大きい地方紙(河北、信濃毎日、新潟、岐阜、北国、山陽、神戸、中国、徳島、熊本日日)などの動向が気になります。
 夕刊発行を続けることによって多くの新聞社が経費割れをしていると聞いていますが、カタチを変えた夕刊の可能性はないものなのでしょうか。夕刊を廃止すると、間違いなく売上は下がります。販売収入だとそれぞれの規模にもよりますが、北日本新聞社クラスでも販売収入の約15〜20%が落ちるでしょう。広告収入でも「夕刊の広告はなかなか取れない」と言いつつ、年間「億」単位の収入がなくなりわけです。でも赤字なのだから、廃止すれば収益性はあがるはずなのですが、紙代などの制作費はカットできても人件費を急速に削減することは無理な話です。



 「夕刊廃止」はなぜか隠密に進められるケースが多く、廃止の社告も2カ月前からとか「突然」発表されることがほとんどです。
 販売店からすると、「廃刊するってわかっているなら、どうして早く教えてくれないの」という不満がわき起こります。せめて1年前とか…。夕刊の配達員を雇用したのに1カ月もたたないうちに廃刊が決まった―とは沖縄タイムスの方の声…。
 配達コストが抑えられる一方、別な問題も派生します。販売店に勤める配達員はもちろん地域住民であり、読者でもあります。夕刊廃刊によって販売店の手足となって地域とのつながりを支えてくれた方々との雇用契約も切れてしまいます。「配達をしていることで、読者を紹介してくれたり義務的に新聞購読をしてもらっていた配達アルバイトの方々の帰属意識的なものが崩壊し、退社とともに新聞をやめる」という事例も販売店関係者から数多く紹介されています。

 夕刊発行を続けてもらいたいと願っているのは、販売店とて同じです。ですが営業努力だけでは部数を維持することすら難しいこのご時世。拡材(オマケ)にもそっぽをむかれてきている昨今、悩みはつきません…。

posted by 今だけ委員長 at 09:26 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時事ニュース

2009年10月31日

「沈まぬ太陽」を見て思う まともな労働組合の大切さ

 沈まぬ太陽.jpg
 久しぶりに骨っぽい映画を見て興奮しました。「沈まぬ太陽

 山崎豊子原作の「沈まぬ太陽」は、元宮城教育大学長の伊藤博義さんに勧められて、発売後(2001年11月)すぐに購入してほぼ徹夜で読みあさったものです。http://minihanroblog.seesaa.net/article/22254689.html

 航空会社の労働組合委員長として「空の安全」を求めて会社とたたかった主人公の恩地元の生きざまを描いたストーリーですが、労働組合を「アカ」呼ばわりする経営陣の組合分断工作によって労働組合が骨抜きの「御用組合」へと化してしていく様は、日航には複数の組合(確か8つ)が存在する元凶でもあります。
 父親が労働組合の役員であることで差別を受ける家族の苦労と友人の裏切り。そして520人の犠牲者を出した「日航機墜落事故」の犠牲者の無念の思いや遺族の悲しみは涙流さずにはいられません。恩地へのコンプレックスからか、次第に不正と乱脈で権力の座へ上り詰めようとする元同僚の行天のような人間はどこの会社にもいそうです。
 政官財の癒着にも原作以上に深く切り込んでいたように感じます。「何を書いてほしいんだ。あいつを潰すために書いてやるよ」と日航幹部にたかる新聞記者の描き方に「チョットやりすぎ」と感じましたが、これが今の世間の見方なのでしょう。

 まともな労働組合の存在がどんなに大切なものか痛感させられます。


 主演の渡辺謙さん。いい味出してました。渡辺さんが恩地元役をやることで、原作の主人公像により深みがましたと思います。

    
▽国公労新聞第1034号「空の安全を守りたい」
http://www.kokko-net.org/kokkororen/s1034.htm
posted by 今だけ委員長 at 22:13 | Comment(0) | TrackBack(0) | きょうの喜怒哀楽

2009年10月30日

現代では想像がつかない高校生のたたかい  サワダオサムの3部作完成

 夜の群像.jpg
夜の群像
著者 サワダオサム(クマノ出版)


 「紙面にヌード写真集の全面広告を入れるとは…新聞は終わりや!」
 1991年冬、都内の神田パンセを会場に開かれた、全国新聞販売労働組合協議会(略称:全販労)の定期大会(その後、全販労の定期大会は開催されていない)。壇上で宮沢りえのヘアヌード写真集「サンタフェ」の全面広告が掲載された朝日新聞を掲げ、舌鋒鋭く関西弁でまくしたてるオールバックのオッチャン・・・サワダオサム氏との初めての出会いでした。


 その年の4月に新聞販売会社へ入社した私は、わけ分からぬ間に企業内労働組合の執行部へ推薦されました。先輩たちの熱い議論に耳を傾け、新聞販売労働運動の歴史や新聞産業構造のひずみなどに興味を持ち始めたころ、はじめての組合出張(全販労定期大会)でサワダ節を聞き、カルチャーショックを受けたことが、これまでの自分の歩き方に少なからず影響していると勝手に思っています。


 脳梗塞で倒れるまでは、年に1度くらいのペースで仙台に来られ、業界情勢の話をさせていただきました。酒は飲まずともカラオケが大好きで、体力有り余る若手の組合員と深夜まで付き合ってくれました。逆に、滋賀の自宅まで押し掛けたり、昨年11月に開かれたの「わが上林暁出版記念パーティー」にも参加させていただきました。
 2000年には私が所属する労働組合が日本新聞労働組合連合への加盟を決議したとき(私は当時書記長)、「新聞労連では販売問題には切り込めない」と、絶縁宣言を叩きつけられたこともありました。親子ほど年の離れたサワダ氏は、つねに本気で接してくれたのだと感慨を深く…。そして「夜の群像」を読んであらためてそう思い返しました。

 私との交流は18年続いているのですが、それまでのサワダ氏はどのような人生を送ってきたのか。この「夜の群像」を読むと、同氏が文学に詳しく、労働運動家としての基礎が備わったのかが理解できます。定時制高校時代の2年間の動静、サワダ氏こと田川三郎(本文では田中三郎が主人公)を取り巻く組織と女性たち…。現代では考えられない高校生のたたかいは歴史に残しておく必要があると思います。

 
 あとがき(エピローグ)には、これまでの人生の総括として、「新聞幻想論」と「わが上林暁」の3部作を書き終えたとありましたが、サワダ氏はこれで活動をやめるタマではありません。いま脈々と次なるテーマを探していることでしょう。

 「親しい友人へ贈る」とされた限定版であるため、多くの方の目に触れることがないのは残念です。素晴らしい自分史を進呈いただき感謝します。


posted by 今だけ委員長 at 21:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 書籍紹介

2009年10月29日

シビックジャーナリズムの実践によって達成される目的を考えたい プラス【告知】スイッチオン仙台シンポ

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シビックジャーナリズムの挑戦
著者 寺島英弥(日本評論社)1,890円

 ちょうどこの本が出された2004年は、自身にとってウェブ関連の動きに興味を持つようになったり、mixiやグリーに登録したり、このブログを始めるきっかけになった年でした。そうそう「EPIC2014」のショートムービーにカルチャーショックを受けたのもこの年だったような気がします。
 その前年に時事通信社の湯川鶴章さんが「ネットは新聞を殺すのか」を出版し、新聞産業のビジネスモデルに危機感を抱く方々との交流が広がりました。新聞労連が開催した産研集会で出会った「ガ島通信」の藤代さんや「猫手企画@新聞屋」の小石さん、ローカルメディアネットワーク(mixi内)を立ち上げた畠山さんなどとの出会いもちょうどこの頃。新聞特殊指定撤廃問題で揺れていた当時の新聞労連委員長は「ニュース・ワーカー2」を運営する美浦克教さんでした。

 米国の新聞社が展開していた「情報をタダで配信しアクセス数を稼ぐ広告型ビジネスモデル」に舵を切りつつあった新聞産業の方向性を検証し、読者の「紙」離れや紙面広告とのカニバリゼーションなどについて、(私は話について行くのが精一杯でしたが…)夜な夜な議論したものです。マーケティングの本を読みだしたのもこの頃で、商品化された新聞紙面に意見などできる立場にない販売労働者が「生活者の声」を編集側に伝えないと生活必要財として新聞は生き残れなくなるのではないかと強く感じたものでした。これまでは「新聞産業を歪めているのは、押し紙問題に派生する構造的な問題だ!」としか言わなかった輩だったのに…。


 前置きが長くなりましたが、これまでの新聞ビジネスモデルの危機がささやかれた時に、シビックジャーナリズム(パブリックジャーナリズム)の必要性を紹介したのが寺島さんです。寺島さんは河北新報社の現役記者で、2002年8月から7カ月間フルブライト奨学生(ジャーナリストプログラム)として米国で過ごし、米国の地方紙の20%が実践しているシビックジャーナリズムの事例を紹介しています。それぞれのテーマを独自の取材をもとに構成、解説されているので、「これから重要となるジャーナリズムの方向性」が、私のような初心者でもわかりやすく読めます。

 読んでから5年たった今思うことは、「何のために」シビックジャーナリズムを実践する必要があるのかという視点です。新聞を核に地域社会のまとまりを高めようという運動、市民(生活者)の側を向いた紙面づくりによって達成されるものとは何か。こと最近の新聞人の議論は、新聞社の財務状況が潤うことばかりに傾注しすぎているような気がします。
 ジャーナリズム活動は個々人がその精神と能力を持っていれば果たされるのかもしれませんが、マスメディアのような組織的ジャーナリズム活動はその企業の経営が成り立たなければ、人員削減はもとより取材体制の縮小など活動の維持は難しくなってくるものです。個人が発信できるメディアツールは増えてきたものの、既存のマスメディアの「チカラ」をあえて手放す必要はない。そのマスメディアに働く方々がジャーナリストたる精神を取り戻し、能力を研磨することが必要なのではないかと思っています。
 そういうメディアを一生懸命に売りたいし、生活者もそんなジャーナリストの集合体を支えてくれると思うのです。


【告知】
 その寺島さんも参加する「スイッチオン」プロジェクトが仙台でシンポジウムを行います。



誰でも発信できる時代の「伝える」を考える〜「11・28仙台シンポジウム」

テーマ:「磨こう!思いを『伝える』スキル 〜誰でもジャーナリストになれる時代に〜」
時間:11月28日(土)13時半受付開始、 14時開場、16時30分終了予定。
会場:せんだいメディアテーク 7Fスタジオシアター(アクセスはこちらから)
参加費:無料
対象:どなたでもご参加いただけます
人数:先着180名(申込フォーム
パネリスト : 寺島 英弥、高成田 享、関本 英太郎、紅邑 晶子
コーディネーター : 藤代裕之

 マスメディア、研究者、NPO関係者がパネルディスカッションを行い、誰もが情報発信できる時代の課題や可能性、情報発信や表現のスキル、そしてメディアとしての役割を考えていく。参加者を巻き込んだミニワークショップ、街に出て取材している大学生とネットで中継して取材状況を聞くインタラクティブな企画も予定しています。
スイッチオン.jpg

「スイッチオン」プロジェクトは、各種マスメディアで活躍するプロが組織の枠を超えて協力。大学生記者と共に取材を行い、記事を制作する、実践的かつ実験的な大学生向けのジャーナリスト育成プログラムです。

posted by 今だけ委員長 at 19:42 | Comment(0) | TrackBack(1) | 書籍紹介

2009年10月18日

新聞を読みやすくするアイディア

 仙台市内にある「サンプルスクエア」(仙台放送エンタープライズが運営)は新商品や試作中のさまざまなアイテムが入手できるので、月2回程度は通っています。
 これまでのサンプル配布は、街頭で無差別に配ったり、ビールなどを試飲させたりといったメーカー側の一方的なPR手法だったのですが、最近はそのアイテムを使用した感想などを利用者からフィードバックしてもらい、商品開発や販売手法に役立てています。ネットの活用によって利用者の意見を集約しやすくなりましたからね。


 先日もそのサンプルスクエアを物色していると、おやっ?懐かしい東京新聞(東京在住のときに購読していたので)が陳列棚にあるではありませんか。
  クリップ.jpg 「SHINBUN CLIP(シンブンクリップ)」

 以前、「新聞をサンプルスクエアにおいてみては?」と社内提案して却下されたことがあるので「やられた」と思ったら、サンプルとして展示されていたのは新聞を読みやすくするアイテムでした。


 この商品は、生活者からアイディアを募集し商品開発をするリアライズ社の新商品で、読売新聞社の会員サイト「ヨリモ」のプレゼントとして紹介もされました。


 自宅に帰って試してみると、なかなかいい感じ。バラバラにならないので通勤時の車中で新聞を読むときなどは便利ですね。
 新聞を読みやすくするアイディアなどもいろいろ発信していかなければなりません。

posted by 今だけ委員長 at 11:01 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2009年10月16日

新聞大会で販売正常化宣言が採択

 きのうから、第62回新聞大会が静岡市内で開催されています(16日まで)。
 けさの紙面(全国紙はチェックしましたが)には掲載されていませんが、販売正常化宣言(今回で4回目)が採択されたようです。

《第62回新聞大会販売正常化宣言》

 われわれ日本新聞協会加盟の新聞各社は、読者の信頼と期待に応えるため、戸別配達制度を維持、強化し、新聞の公正販売を確固たる決意で推進する。
 このため、景品類提供のルールなどを定めた新聞公正競争規約を厳守するとともに、さらなる販売マナーの向上に努める。
 公正販売の実現は、発行本社と新聞販売所が一丸となって、全国的に推し進めることを誓う。特に関西地区の販売正常化は喫緊の課題であり、その実現に邁(まい)進することとする。


 すでに日本新聞協会理事会などで「正常化宣言採択」のシナリオは描かれていたとはいえ、1994年の販売正常化特別宣言以来15年ぶりとなります。
 文化通信(10月12日付)によると、7日に開かれた新聞協会理事会で、内山斉協会長(読売新聞グループ社長)が、正常化宣言についてこう言及したそうです。「99年に栃木県宇都宮市で開かれた新聞大会で、読売は騎馬民族から農耕民族に変わる方針を宣言した。過去、読売も全国各地で“大暴れ”してきたが、各社に大変迷惑をかけたことを率直に謝罪したい。協会長の立場であるこのときに、販売正常化の道筋をつけたい」と加盟社へ謝罪し、正常販売の協力を仰いだと言います。


 不正常な販売行為が横行してしまう根源は、発行本社と販売店の取引関係にもあります。これまでこのブログでも指摘してきた「2つの正常化」が実現することを願いたいと思います。



【追記】
京阪神・近畿地区の販売正常化(9月16日の関西7社販売局長共同声明)に続いて、九州地区(福岡・山口)でも取り組むよう新聞協会販売正常化委員会(委員長:秋山朝日新聞社長)から指示が出されたようです。

 
posted by 今だけ委員長 at 12:38 | Comment(0) | TrackBack(0) | 新聞販売問題

2009年10月14日

今度は朝日と中日が相互委託印刷を提携

 またもや大手新聞社同士の印刷部門の業務提携(相互委託印刷)のニュースが飛び込んできました。

朝日、中日が新聞印刷で業務提携 2011年春から相互委託/47NEWS
朝日新聞と中日新聞が相互委託印刷で提携/朝日新聞
朝日、中日が新聞印刷で業務提携 2011年春から相互委託/中日新聞
※中日は自社ネタなのに共同配信の記事を掲載しています。

 朝日新聞社と中日新聞社が、2011年春をめどに新聞を相互に印刷委託をする業務提携を合意したと発表。

 朝日新聞が、京都市と愛知県北名古屋市の印刷センターで刷っている石川、福井、富山県向けの朝刊計約3万4千部を中日新聞印刷センター(金沢市)へ委託。中日新聞は、神奈川県や静岡県などで発行する東京新聞の朝夕刊計約15万部を朝日新聞印刷センター(川崎市)で印刷するようです。


 相互のメリットはコストカット。印刷部門の大掛かりなリストラによって取材体制を守るという経営者の言い分は聞こえがよいのですが、印刷部門の労働者の雇用はどうなるのか心配です。確か東京新聞労働組合(中日新聞には中日新聞労組と東京新聞労組の2つの組合がある)の組合員の大半は印刷職場だったはず…。

 元毎日新聞常務の河内孝さんは、「正常販売のための抑止力として、もうひとつの『核』を作って対抗するしかない」と、毎日、産経、中日の三社連携について著書「新聞社−失われたビジネスモデル−」のなかで指摘しましたが、先に印刷部門の提携を発表した読売と新潟日報の動きをみる限り、「納まるところ」という予見はないということでしょう。
 全国紙の戦略は地理的な問題よりも、まだ体力がある地方(ブロック)紙と手を組むという感じがしますし、地方紙もオリンピック開催地の誘致合戦のように全国紙に対して受託印刷をトップセールスしているのかもしれません。


 今月1日に発行された「新聞研究No699」(日本新聞協会)に、新潟日報の高橋道映社長が「新たな協調モデルへ」という論文を寄稿しています。「当社の販売史上、全国紙との戦いにおいて最も激しく敵対した相手が読売であった。販売戦線において最も激しく渡り合った手ごわい相手だからこそ、協調の意義がある。またそれだけに過当販売競争と決別への誓いも強い。委託、受託の関係はお互い『信頼』なくして成立しない」と新聞経営も過去の遺恨を引きずらず、新聞業界の環境変化へ対応していくべきだと述べています。

posted by 今だけ委員長 at 21:02 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時事ニュース

2009年10月11日

タブーをこれからの人に背負わせるな!

  「押し紙」という新聞のタブー.jpg
「押し紙」という新聞のタブー
著者 黒藪哲哉(宝島社新書)680円


 「押し紙」問題を追及するジャーナリスト、黒藪氏の新刊です。
 これまで黒藪氏がブログ「新聞販売黒書」などを通じて取材された「押し紙」の実態や、新聞社の部数至上主義による弊害などをまとめた内容になっています。
 すでに知っている話ばかりなので反すうしつつ、全く変わることのない(変えられない自身の反省を込めて)新聞産業構造にイラッとしながら読み終えました。

 
 書籍帯には「ナベツネの天敵が書いた」の文字が表記されていますが、「押し紙」問題は読売新聞だけの話ではなく、新聞産業全体の問題なのです。
 「押し紙」問題は業界のブラックボックスとして扱われてきました。経営をチェックする労働組合ですら踏み込むことに躊躇する問題なのです。現に「押し紙」問題を告発した黒藪氏は、読売新聞社から3件(うち一つは週刊新潮社と一緒に)の訴訟を起こされています。そのくらい、この「押し紙」問題に触れることは、すべての新聞社や、ともすると新聞労働者をも敵に回す構図になってしまうものです。
 今だけ委員長も(このブログで押し紙問題を指摘していることに対して)ある方から「どこから給料もらっているんだ!」と圧力をかけられることもありました。サラリーマンは直接的には会社から給料が出ているのですが、給料の源泉は読者や折込広告主からいただいているからで、そこを履き違えてはいけないと思っています。先日開かれた全国の折込会社が集う会合で、折込チラシが減っている理由を「一部週刊誌で虚偽部数などと報じられたことも影響している」という発言が業界紙に書かれてありました。もともと何が問題なのかという本質から目をそらし、自身のことしか考えない…。すべて他人事なのでしょう。

 内側にいると「何とかしたいけれど、問題が一気に噴出するとすべての人が不幸になる」という意識が働いて、この問題から目をそらしてしまう。しかし、真実をねじ曲げてきた代償をこれからの人に背負わせるほうがもっと罪なことではないでしょうか。確信犯なのですから…。

 黒藪氏がなぜ「押し紙」問題にこだわるのか。あとがきに記されている一説を引用します。
 「ジャーナリズムを放棄してまで、新聞産業が生き残っても意味がない。このあたりの大原則を忘れてしまったところに、現在の新聞社の悲劇があるのではないか」
 まだ問題の打開策はあるはずです。

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2009年10月10日

経済評論家のメディア批判

マスコミ崩壊.jpg
マスゴミ崩壊
著者 三橋貴明(扶桑社)1,470円


 この手のマスコミ(新聞)批判の類は“もう買わない”と思っても、つい手が出てしまいます。考えるに、自分の気持ちの中に、(現状の)マスコミ批判から「新聞再生の妙薬」が秘められているのではないかという淡い期待があるからなのかもしれません。
 いずれにしても批判されることは痛いことですが、だからと言ってその(批判される)指摘すら無視するようになってしまっては、余計に孤立していくだけだと思っています。

 著者は経済評論家(中小企業診断士)として活躍するかたわら、ネット界では人気ブログ「新世紀のビッグブラザー」を運営している、俗にいうアルファブロガー。
 本編は特に新聞産業の問題を中心にさまざまな問題点を指摘していますが、よくこれほどまでに新聞産業界に内在する問題を調べ上げたものだと感心します。おそらくネット上で発信されている情報を手繰り寄せて論拠を整理されているのでしょうが、その知識は業界人以上?かもしれません。

 内容は残念ながら目新たしいものは見受けられませんでしたが、気になった一説を引用します。

・・・新聞社はオンライン系メディアや風呂が(ブログ管理者)の批判を自社にとって有益な「フィードバック」として受け止め、新聞記事の品質向上に努めるべきなのだ。しかし、散々解説してきた通り、新聞産業はエンドユーザーからのフィードバックを活用し、自社製品の品質向上に努力するという、一般企業が必ず持っている機能を保有していない。それどころか、エンドユーザーの声を直接聞ける販売店を「専売店」として管理下に取り込み、長年にわたり市場の声を聞くことを拒否し続けたのだ。


 この視点はうなずきつつも、「読者の声を聞け!」とはあまりにも抽象的で結論の見えない意見のように感じます。確かに「購読をやめた読者から理由を聞け」と販売現場では口酸っぱく言われていますが、経済的理由以外は「何となく、読まなくても…」といった声が大半で、「こうだからやめる」と明快な意見を言ってくれる読者は少ないものです。
 逆に「こうしたら購読してもよい」(オマケ以外で)という意見を集めるほうが生産的なのかなぁ。いずれにしても、マーケティングをすることよりも精神論で登りつめてきた(新聞社の)エライ人たちの「感覚的な解釈」によって、販売政策などが決められてきたのは確かです。


  「新聞社の決算を診断する」の章では、全国紙の08年決算内容の分析がされています。そのなかで売り上げの落ち込みが最も大きい産経新聞は利益の悪化がそれほどでもないことに触れて、「産経新聞は08年時点から社内の人件費に手を付け、リストラクチャリングを進めてきたためだ。なぜ産経が、他紙に先駆け、人件費にメスを入れることができたのかといえば、規模が小さい分小回りが利きやすいというのもあるが、それ以上に同社が新聞労連に加盟していない点が大きい」と述べ、各社の従業員が新聞労連(日本新聞労働組合連合)へ加盟しているから、人件費の削減は容易ではないとしています。
 この理論展開を読む限りでは、新聞再生の道はなくリストラ(人件費削減)して赤字をしのげ―ということのようです。


 マスメディア(新聞)への処方箋についても書かれています。▽再販制度及び新聞特殊指定の取り消し▽専売制の宅配モデルの解体と、合配制化(総合店化)▽全記者クラブの解散・・・・・・。
 新聞産業の分析はしっかりされているのですが、批判の域からでない破壊論者という印象を受けました。


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